緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

初めての手工ギター

2011-07-02 23:31:49 | ギター
こんばんは。
今日は楽器の話をしたいと思います。
中学1年生で2万4千円のYAMAHAのクラシック・ギターを初めて
買ったことを2回目のブログで話しましたが、中学・高校と6年間使い
ました。この楽器は合板のいわゆる機械製ギター(実質は機械製では
なく手工なんですけど)というギターでしたが、右手のタッチを鍛える
には最適のギターでした。弱いタッチですといい音がしないんです。
だから一生懸命いい音が出るようにタッチを勉強した。
でも上達するにつれて物足りなくなりました。
大学生になりもっといいギターが欲しいと思うようになりました。
でも金がない。なんでアルバイトをするようになりました。
そしてとうとう大学1年の冬に初めて手工ギターなるものを買いました。
アルバイトで稼いだ金を元手に確か数回払いのローンで買いました。
定価20万円のギターで割り引いてもらい17万円で買いました。これが
当時の私としては限界でした。
当時私は北海道に住んでおり近くにクラシックギターの専門店が無かった
んですね。クラシックギターの専門誌である現代ギターの広告を頼りに、
ギター専門店やギター製作家に葉書を出し、カタログや写真を送って
もらいました。
そして選んだのが鹿児島で製作されている田中俊彦さんの20号のギタ
ーです。田中さんのギターは現代ギターの広告には継続して出ていますが
現在、楽器店で見ることは皆無であり、ヤフオクや中古市場でも見かける
ことは無い非常に希少性の高いギターです。
それでも1980年前後はギタルラ社やIGPなどの有名店で取り扱って
いたようです。
田中俊彦さんは今井勇一さんと同じく、中出輝明さんに師事した製作家で
特徴としては、ものすごく完成度の高い仕上げと精度を持っていること
です。またデザインも名工のもののコピーなどせず、独自のものを持って
います。





洗練された独特な形状のヘッドと、ロゼッタのデザイン。ロゼッタのデザイ
ンは素晴らしいです。一切妥協のない木工技術と優れた美的感覚を持って
いると思います。





20万円のギターなのに象牙のナットとサドルが装着しており、ギター内部
にも彫刻しているなど、最大限いいものを作り出そうとする職人魂を感じさ
えします。
このギター、購入してから3ヶ月ほど経ったある日、ケースから出してみ
ると指板と表面板の接着部の左右が割れていて大ショックを受けました。
北海道の冬の厳しい乾燥にやられました。当時は加湿器などなかったし、
私も乾燥に対する知識も無く、無頓着だったことが悔やまれます。
この板の割れは店を通じて田中さん本人に修理してもらいました。
そして4年くらいたって指板も割ってしまいました。でもその後も5年間
くらい弾き続けました。フレットが相当磨耗しています。
田中さんのギターは仕上げやデザインだけでなく、音のバランスがいいのと
音程が正確なところに特徴があります。
調弦などはどのギターよりも正確にできました。
現代ギターの1983年7月号の特集で「ギターの音を分析する」という
のがあり、ギタリストの江間常夫さんが、国内外のギター30本くらい
を同じ曲、音階などで弾き、カーテンで仕切って誰の作品であるかわから
ないようにしてモニターの聴感データと測定器による客観データを集め
各製作家のギターを評価したものであったのですが、この特集で田中俊彦
ギターが選ばれており、何と評価も高いものでした。江間さんのコメント
としては、単音階は全体的に鳴っており、①弦ハイポジションも鳴っている、
和音のバランスは非常に良い、ただもう少し全体的に音量が出せればさら
に良いのでは、というものでした。
私もまさにそう思います。バランスが非常に良く、音程も正確だが、音量
や響きがいまひとつ足りなかったですね。響きが足りなかった原因の1つ
として、塗装が厚すぎたのかもしれません。ギター内部にも塗装がしてあり
ますが、かなり厚いです。塗膜をもっと抑えるか、セラック塗装にすれば
もっといいものになったかもしれません。
いずれにしても当時現代ギターのこの記事を読んで、私はこのギターに
自信を持ちました。このギターを愛用しました。
27歳のときに別のギターを購入したので、このギターを弾く機会が殆ど
無くなりましたが、今でも所有しており、昨日、割れていた糸巻きのパイプ
を新しいものに交換し、弦を張り、久しぶりに弾きました。
意外にも6弦の低音は深みのあるものになっていました。高音は当時の
音のままでしたが、懐かしい思いでした。

コメント    この記事についてブログを書く
« 邦人作曲家のギター曲(2) | トップ | 手製のアームカバー »

コメントを投稿

ギター」カテゴリの最新記事