緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

セゴビアのライブ録音を聴く

2013-08-03 22:51:26 | ギター
こんにちは。
この1週間は雨降りや曇り空ですっきりしない天気が続きましたが、今日は久しぶりに真夏の日差しが照りつける暑い一日でした。
このところピアノの鑑賞に力を入れていますが、ピアノのCDには結構たくさんライブ録音があります。
ライブ録音にはスタジオ録音にはない良さがあります。
それはその場ではたった1回しか演奏できないことにより、演奏者の力量が試されることや、また聴き手を目の前にするため、より真剣な緊迫感が伝わる演奏になるためだと思います。
私はライブ録音が好きなのですが、クラシックギターには思ったほどライブ録音がありません。
ギターのライブを聴きたいと思って今まで買ったCDを探して出てきたのがセゴビアとブリームのライブ録音ですが、今日はセゴビアの録音を紹介したい。
2枚ありますが、1枚目は10年ほどに買った1955年8月のイギリスのエジンバラ音楽祭でのライブで、BBCから発売されたもの。



1955年ですとセゴビアが最盛期だったころですね。殆どミスなしの素晴らしい演奏です。
彼が1950年代にヘルマン・ハウザーⅠ世のギターで数多くの録音した演奏と変わらず、ギター音楽の魅力を存分に聴かせてくれます。
特に良かった曲はヴィラ・ロボスの前奏曲第1番とカステルヌオーヴォ・テデスコのタランテラ。
スタジオ録音ではいい演奏を聴かせてくれてもライブではだめだ、いう演奏家もいますが、セゴビアはライブでも殆ど完璧な演奏、最高に音楽的な演奏を聴かせてくれます。
次に2枚目ですが、今から20年くらい前に買ったCD。
1968年10月のイタリアでのライブ録音でセゴビアが75歳の時演奏です。



この録音は先のBBCと違って音源の保存状態が良かったのか、かなりいい音、しかもホールで実際に聴いているかのような音で録れています。
正直言ってこの75歳の時のセゴビアの音の方が素晴らしいです。
聴き進むにつれてそのギターの音に惹き込まれます。アルバート・ハリスの「ヘンデルの主題による変奏とフーガ」を聴くときは決して大げさでなく鳥肌がたってきます。
使用楽器はまず間違いなくホセ・ラミレスⅢ世だと思います。
セゴビアは60歳代よりも70歳代の音の方が深みがあり、より進化していると思います。
セゴビアのスタジオ録音は80歳(1973年)が最後でしたが、この80歳の時の録音を聴いたときも、テクニックは衰えても音の鋭さはより増していると感じたことがあります。
このイタリアでのライブ録音で良かった演奏は、先のアルバート・ハリスの他、タンスマンのカヴァティーナ組曲、バッハのブーレ、トローバの松のロマンス。
タンスマンのカヴァティーナ組曲は1955年のBBCの録音でも聴けますが、このイタリアの録音のほうがテクニックの破綻があるもののもっと聴き応えがあります。
セゴビアの最大の功績は、クラシックギターの最大の魅力、それは他の楽器にはないギターしか出せない音の魅力を伝えたことだと思います。
彼の音を聴いていると音にものすごい感情エネルギーが凝縮されていることがわかります。
こんな音を出せる人は今後まず現れないと思います。
チェロの巨匠ピエール・フルニエがセゴビアの音に感動し、セゴビアの音から多くのものを学んだと言われていることがまさに実感として分かるライブ録音だと思います。
このライブ録音は高齢ゆえにテクニックの破綻が多いが、不思議なことにその破綻が全く気にならない。
これは演奏者の音楽の力がその破綻を凌駕しているからだと思う。
セゴビアの音楽は大木のごとく地にしっかりと根を生やしており、その流れは自然で泉のように溢れ出てくるような感じを受けます。
セゴビアは多くのコンサートを開いたと思いますが、そのライブ録音が少ないのは意外です。
ライブでも完全に近い演奏が録音たくさん残っているでしょうが、CD化されないのは売れないためなのか。
youtubeが現れる前までの2000年前後に数多くのクラシック音楽のライブがCD化された時期があったが、これはCD化しても売れる見込みがあったからだと思います。
先日はなしたように、クラシックギターという愛好者が極めて少ない中で、ライブ録音をCD化してもすぐにyoutubeなどにアップロードされてしまうと、商売にならないと思って断念しているのだろうか。
セゴビアやイエペス、ブリームのライブ録音をもっと聴いてみたいのだが、こんなことだと期待できそうもない。

(追記2013084)
セゴビアの奏でる音や音楽の素晴らしさは彼の使用する楽器に支えられているともいえます。
彼の最盛期に使用された楽器であるヘルマン・ハウザーⅠ世を評価する人が多いですが、私は1960年から使用されたホセ・ラミレスⅢ世の方が素晴らしいと思っています。
1964年ごろから表面板に杉材を初めて採用したのもラミレスですが、先の1968年のイタリアのライブ録音に使われたラミレスの低音は杉材にしては重厚な力強い音を出しています。そして音の密度が高いです。今まで私がセゴビアの録音で聴いたラミレスの音の中でもっとも素晴らしい音です。
この時代のラミレスは弦長が664mmで大型で音量もありましたが、これは音量よりもギターの音の伸びを長くするためのものであったと思います。
1980年代に入ってジョン・ウィリアムスの音を駄目にしたオーストラリアの某楽器は音量はあっても音の伸びが短く、高音もそうですが特に低音は無機的な貧弱な音がします。この楽器で人を感動させる演奏が可能とは到底思えない。
ラミレスの楽器はセゴビアとの共同作業により生まれたと思います。
ラミレスもセゴビアのような超一流の音楽家の要求に応えようと努力したり、もともと音楽を深く理解できる能力があったからこのような楽器を作れるに至ったのだと思う。
作曲者や演奏者の感情を最大限に再現できる楽器こそが今求められていると思うし、製作家にはこのような楽器を作ってもらいたいです。


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