緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

右手の運指と脳の知覚

2018-05-04 22:55:13 | マンドリン合奏
9連休も残すところあと2日となった。
9連休の殆どをマンドリン合奏の練習に充てているが、今日は気分転換に東京に出て楽器店でも覗いてみようと考えていた。
しかしやはり練習が優先だと思い直した。
演奏会は人生でそんなに体験できるものではない。
大学卒業以来、独奏だけやってきた自分が得ることのできた貴重な機会。
ここは本番まで最大限の練習をしようと気持ちを切り替えた。

まず曲の難所の練習から始める。
技巧的に最も難しい曲の中の難所のフレーズを抜き出して、練習する。
このフレーズは成功率が自宅での練習時には7割くらい、合同練習では緊張のせいかもっと下がる。
指が動かないというわけではないのだが、弾くべき弦に指が当たらなかったり、途中で止まってしまうことがある。
漫然と練習しても意味がないと思い、何故上手くいかないのか自分なりに分析してみることにした。

難所のフレーズの譜例は下記でAとBとがある。



速度はアレグロ。
左手と右手の運指は自分で考えて付けたもの(マンドリン合奏の譜面には全く運指が付いていないか、付いていてもごくわずかなのが普通)。

右手の運指は出来るだけ逆指にならないようにしている。
右指の動きは、低音弦から高音弦に渡る際(上昇)に、i→mの順、高音弦から低音弦に渡る際に(下降)、m→iの順になるのが自然だ。
この右指の動きが逆になると、これを逆指というが、慣れない指の動きを感じ、ミスタッチの確率が増える。
この原因はiとmの指の長さの違いによると考えられる。

また右手は同じ指を続けて使わないというルールがある。
そういえば、イエペスが未だ若かった頃、キジ侯爵の主催する講習会でセゴビアのレッスンを受けたとき、イエペスが音質の統一性の要求から同じ指を使った運指を取り入れていたのをセゴビアから注意され、大喧嘩となり、嫌気がさしたイエペスが講習会の終了を待たずに途中で去ってしまったとの逸話を聞いたことがあった。

譜例Aの2小節目を、私は一つの塊と認識し、連続して一気に弾くことを考えて練習していた。
ミスするのはだいたいが2拍目裏のファ#で、ここは④弦で弾くのであるが、③弦に爪が当たってしまうことがあった。
成功しても何か右指がふあふあと宙に浮いたような感覚、すなわちたまたままぐれで上手くいったような不確実性を感じていた。
何故上手くいかないのか、ちょっと考えてみた。
分析の結果、このフレーズを一気に弾こうとしているからではないかと思うようになった。
つまり脳がここは一気に弾かなければならないんだよと認識してしまっているのである。
指の動きが脳の認識についていってないのである。

そこで、このフレーズの2小節目を写真の赤枠の①~③に分割して、指の動きを見ることにした。
まず、①のミ音は単独で弾く場合は全く問題ない。
ただ音を1音弾くだけである。
次に②であるがこれも④弦上で、2指から4指へ動かすだけで難しいことは全く無い。
次に③も、③弦から②弦に渡るものの、i→mの順番であり逆指になっていないので全く支障はない。
このようにフレーズを3つに分解してパーツ化してみると、それぞれパーツの指の動きは全くミスをするような要因は考えられなかった。
次に2拍目の②と3拍目の③を連続して、すなわち②+③で弾くことを試みてみた。
これは最初から速い速度で弾こうと脳が認識すると、パターンA全体を弾くほどでないにしても、1割くらいの頻度でミスが出た。
そこで少し速度を落とし、i指に意識を集中し、②と③のパーツが順に連続して弾かれるように意識してみた。
つまり単体練習で行った②の動きと、同じく単体練習で行った③の動きを意識し、②と③のパーツを間を置かず順番に弾くことを脳に教えてみたのである。
すると速度を速めてもミスする確率はゼロとなった。

次に、①と②+③の連続である。
これをアレグロの速さでまずやってみた。
するとまた元のように2拍目裏のファ#の音を③弦でタッチするというパターンが何度か生じた。
原因は1拍目のミ音を弾いたときに、脳が以前のミスタッチしやすいパターンの回路にスイッチを入れ、それが無意識に実行されているのではないかと思われた。
そこで、1拍目のミ音を弾いたとき、直ぐに②+③のパーツに移るのではなく、少し間を置いて、②+③の単体練習を行った時に作られた脳の回路にスイッチが入るのを待ってから弾いてみたら、ミスタッチが無くなった。
キーポイントは1拍目のミ音を弾いた直後の脳の指令である。
脳の回路を②+③の単体練習の時のものにスイッチが入るよう、あとはガムシャラに練習して、ミ音を弾いてからあとは間を置かずにできるよう新しい回路を作るのみである。
自動車の運転にしても何にしても新しい運動を行う際は、いちいち意識が脳に指令を与えなければならないが、反復練習で回路が出来上がると意識せずとも潜在意識がそれを実行することは良く知られたことである。

次に譜例Bあるが、これも譜例Aの応用だ。
つまり1小節目を①と②のパーツに分けるのである。
①は特段問題ない。
②はi→mよりも、m→iのほうが単体としては弾きやすいが、前後を考え合わせるとi→mとならざるを得ない。
このパターンBのキーポイントは②の動きである。
①と②を一気に塊のようにやろうとするから、②で止まってしまっていたのである。
②はちょっと慣れない指の動きだ。
そこでパターンAと同じように①と②を単体で別個で練習し、①のパーツの動きが終った後に間を置かずに②のパーツの動きが実行されるように脳に指令を与え、これが無意識でも確実に実行されるよう新しい回路が出来上がるように練習することにした。

これらの訓練を毎日実行し、1週間後の合同練習での成果を確認したいと思っている。

今日の午後は、昨日の合同練習での練習音源を聴き、午前の指揮者が特に強く注意していた箇所のおさらいをした。
自分はもちろんのこと、かなりの方が技巧が未だ完全に出来上がっていないから弾くだけで精一杯であり、だから走ってしまったり、逆に遅くなってしまったりと、音楽的要求になかなか応えられていないのかもしれないと思った。
指揮者からするととてももどかしいのかもしれないが、とにかく技巧面を完全にマスターし、指揮者の要求する音楽的表現を余裕を持って受け入れるように頑張りたい。
本番まであと2週間。
納得のいく結果になれるよう持っていきたい。
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