緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

今年の抱負2018(2)

2018-01-13 21:11:13 | 音楽一般
(前回からの続き)

1.合唱曲

合唱と言っても高校生の演奏しか聴かない。
今から8年くらい前に、あるきかっけでそれまで全くというほど関心がなかった合唱曲にのめりこむようになった。
ピアノとギターに合唱というジャンルが加わったことは私にとって大きなことだった。

成熟した大人の合唱演奏にも良いものがあるが、やはり高校生の歌声が好きだ。
中学生では幼過ぎる。
自分の人生を振り返ってみても、高校生の頃はまだ純真さというものがあった。
まだ、野心というものが無かった。
小遣いも極端に少なく、欲しい物もなかなか買えなかったし、嫌な高校しか入れなかったので、反動で勉強ばかりしていたが、この時期は集中力がずば抜けていたし、気持ちも澄んでいたと思う。

高校生の演奏に何を求めるかと言ったら、やはり歌い手の純粋な気持ちだ。
技術的な上手さは二の次。
歌っている高校生たちがどんな人間で、普段どんな気持ちでいるのか。
自分の高校時代とラップさせて、彼らの気持ちを感じ取りたい。

合唱コンクールに勝負を持ち込むのはおかしいが、歌う前にもう勝負がついている。
ときに演奏者の歌声の裏から、とても優しい気持ちが溢れているのを感じて、驚きとともに静かな感動を覚えることがある。
もちろん歌っている本人は意識すらしていないだろうが。
大人の演奏にはある程度意識された打算的なものがあるので、このようなことを感じることは稀だ。
高校生には未だ、子供特有の裏表の無い感情が残っているから可能なのだろうし、私が高校生の合唱演奏を聴きたいと思う理由がそこにある。

高校生のコンクールの演奏の中には、技術的な上手さを追求するあまり、歌い手が本来持っている自然な気持ちを抑制させ、指導者の理想の音楽に合わせるようコントロールされた演奏に出会うことがある。
そしてそのような演奏がコンクールで上位を取ることがある。
しかし歌っている生徒たちの表情を見ると、喜びとか幸福感を感じ取れない。
歌声の裏から伝わってくるものが無い。
当然である。コントロールされているのだから。
このような演奏は結構ある。
歌っていて辛くないのだろうか。
音楽を演奏するということは、その音楽を表現することに自らの感情で、喜びを感じられるものでなくてはならないと思う。
別に幸福な顔を見せなくても、聴き手は十分に感じ取れる。
セゴビアがギター演奏しているときの顔は無表情だが、その音、音楽から強い感情エネルギーが放出されている。

技術力はあくまでも手段。聴き手が聴きたい、感じたいのは曲芸でも上手さでもなく、音楽を通して表出される人間の様々な生の感情。
その非日常的とも言える感情に動かされることを無意識に求めている。
上手さを披露することはそう難しくないが、作品に秘められている感情や、演奏者自身の感情を意識せず自然に、かつ強いインパクトを持って表現することは至難の業。
審査もここに重点を置かないから、上手いだけで後で何回も何年でも繰り返し聴きこともなく忘れ去られるような演奏に高い評価を付けているような気がしてならない。

昨年の合唱曲の鑑賞で1つの成果だったのは、この8年間で聴いた数多くの高校生の合唱コンクールの演奏のうち,Nコン全国大会の演奏でベスト10を選んで記事にしたことだった。
改めて選んだ10の演奏を下記に紹介する。
                                                            

1.あの空へ ~青のジャンプ 作詞:石田衣良 作曲:大島ミチル (平成21年度大会)
  演奏:愛媛県立西条高等学校

2.混声合唱のための「ラプソディ・イン・チカマツ[近松門左衛門狂想]」から壱の段
 作詞:近松門左衛門 作曲:千原英喜  (平成21年度大会)
 演奏:愛媛県立西条高等学校

3.混声合唱のための「地球へのバラード」から 沈黙の名 
 作詞:谷川俊太郎 作曲:三善晃 (平成12年度大会)
 演奏:北海道立札幌北高等学校

4.あしたはどこから 作詞:平峯千晶 作曲:三枝成彰 (平成15年度大会)
 演奏:福島県立橘高等学校

5.風になりたい 作詞:川崎洋 作曲:寺嶋陸也 (平成17年度大会)
 演奏:東京都大妻中野高等学校

6.混声合唱のための「やさしさは愛じゃない」から さびしいと思ってしまう 
 作詞:谷川俊太郎 作曲:三善晃 (平成13年度大会)
 演奏:北海道立札幌北高等学校

7.この世の中にある 作詞:石垣 りん 作曲:大熊 崇子(平成11年度大会)
 演奏:福島県立安積女子高等学校

8.海はなかった 作詞:岩間 芳樹 作曲:広瀬 量平(昭和50年度大会)
 演奏:東京都立八潮高校

9.風になりたい 作詞:川崎洋 作曲:寺嶋陸也 (平成17年度大会)
 演奏:福島県立橘高等学校

10.また、あした 作詞:島田雅彦 作曲:三枝成彰 (平成10年度大会)
 演奏:福島県立安積女子高等学校




これらの演奏は何百回も繰り返し聴いて、自分に大きな影響を与えてくれた演奏だ。
これらの演奏は技術力をとっても高校生としては超一流であるが、それよりも演奏者たちの感受性から生まれる感情エネルギーや繊細な気持ちがすごく次元の高いレベルで表現されている。
何か価値ある文学作品を読んだり映画を見たりして、深い感動を感じるときの心境に似ている。
何か、自分の心の深い底に眠っていた、普段日常で感じることの無い強い感情が、演奏をきっかけに呼び起される。

この10演奏は一生の宝だ。

昨年のもう一つの収穫は、Nコン全国大会で聴いた、課題曲「君が君に歌う歌」(作詞:Elvis Woodstock(リリー・フランキー)、作曲: 大島 ミチル)、東京都大妻中野高等学校の演奏であった。
生演奏でも録音でも聴いたが、他の学校には無い演奏をする学校。
演奏の感想は昨年末の記事で書いたのでここではあまり触れないが、この学校の演奏が最も心に深く残った。
Nコンの舞台の上で、「音楽はどれだけ聴き手の心を動かすか」ということを示してくれた演奏であった。
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