緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

五木の子守唄を聴く(2)

2016-07-21 21:07:37 | その他の音楽
勤め先の夏休みで5日間ほど帰省していた。
帰省先の図書館で五木の子守唄ばかり収められたCDを借りた。
古来からの2拍子の正調から始まり、現在一般的に広まった3拍子の旋律まで、独唱から楽器への編曲などの25曲を聴くことができた。
この25曲の中で、ひときわ強い感動を覚える演奏があったので紹介したい。

歌:パリ木の十字架少年合唱団/東京少年合唱隊/ボニージャックス
編曲:丹波 昭

私は5年ほど前に、あることをきっかけに合唱曲が好きになったのであるが、聴くのはもっぱら高校生の演奏であり、中学生、小学生の演奏は殆ど聴いてこなかった。

何故、中学生、小学生の演奏を聴かなかったのか。
それは、声が子供っぽいという先入観があったからだ。

今回、私の好きな子守唄である「五木の子守唄」のCDで、この少年合唱団とボニージャックスとのジョイントを聴いて、少年たちの声の純粋な美しさにとても感動したのである。
冒頭の少年のソロの声を初めて聴いて、その声が耳から離れなかった。
そしてこのCDの演奏を何度も繰り返し聴いた。

冒頭のソロは10代前半から半ばまでの女子の柔らかい歌声に聴こえた。
この歌声が、気負いや力みの無い、極めて純粋で自然なのである。
それだけでなく、素朴な歌声の裏から何とも哀しい気持ちが伝わってくるのだ。

歌は4番まであり、ソロ-全体合唱-ソプラノとテノールの輪唱-全体合唱という構成。
2番目のソロはパリ木の十字架少年合唱団のメンバーであることは間違いないが、最初のソロはパリ木の十字架少年合唱団か東京少年合唱隊かどちらのメンバーかは判別できない(多分パリ木の十字架少年合唱団だとは思うが)。
編曲者は現代音楽作曲家の丹波明氏であるが、この無伴奏の編曲は成功している。
キーは嬰ヘ短調であり、少年たちの歌声を最も強く引き出す調性を選んでいる。

Nコンなどで、中学生が、中学生離れした成人が歌うような演奏をしているのを聴くことがあるが、そのような演奏は好きではない。
自然に逆らい上手く歌おうとして、時に表面的に成功するかもしれないが、自分の自然を意識的に犠牲にして上手く歌うことで、失うものは大きい。
名誉とか名声とか、そんなものを動機に演奏していると、聴き手は意識せずともそれを感じるものだ。
表面的に上手いというだけに過ぎない。

勿論この少年合唱団のメンバーたちは、天性の美しい声を持っているのであろう。
しかし基礎的なこと以外は、上手く歌うことを強要されていないように感じる。

パリ木の十字架少年合唱団のメンバーたちは、この日本情緒漂う「五木の子守唄」の旋律の美しさに心底感動したのではないか。
でなければ、声の美しさだけでこんなに聴き手を感動させられるわけがない。

このジョイントの演奏は、1971年11月にキングスタジオで録音された。
ライブではなく、聴衆もいないが、このジョイントのメンバーたちみんなが、この子守唄の持つ素晴らしさに意識せずとも感動し、気持ちを一つにして、歌っているのが伝わってくる。
この演奏者たちは歌いながら間違いなくこの子守唄に感動している。

今まで五木の子守唄はたくさん聴いてきたが、この演奏がこれまでのうちの最高の出会いだ。



おどま盆ぎり 盆ぎり
盆から先ゃ おらんど
盆が早(は)よ来(く)りゃ 早よもどる

おどま かんじん かんじん
あん人達ゃ よか衆(し)
よかしゃ よか帯 よか着物(きもん)

おどんが うっ死(ち)んだちゅて
誰(だい)が泣(に)ゃてくりゅきゃ
裏の松山ゃ 蝉が鳴く

花はなんの花
つんつん椿
水は天から 貰い水
コメント (2)