緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ガブリエル・フォーレのピアノ曲について ②

2011-12-23 23:13:29 | ピアノ
こんばんは。
明日はクリスマスですね。今日はすごく寒い日でしたが、幼い甥や姪に渡すプレゼント
を買いにビックカメラに行ってきました。おもちゃ売り場はすごい混みようでしたね。
さて久しぶりにピアノ曲の話をしたいと思います。
以前のブログで、私が好きなピアノの作曲家としてフランスのガブリエル・フォーレ
の曲に出会ったいきさつや、ピアノ曲の代表作である「夜想曲」のうち第1番がピアノ
曲で最も好きな曲であることを述べました。
今日はこの夜想曲のうち、第1番に次いで好きな曲である第6番のことを紹介したいと
思います。



この第6番変ニ長調はフォーレが作曲活動で最も充実していた時期に書かれたものと
思われ、非常に格調高く深い音楽性を感じさせる内容となっています。
全音楽譜出版社の「フォーレ ノクターン集」の解説を引用させてもらいますが、解説者
は「この曲は第7番と共に天才ガブリエル・フォーレの最高の作品である。感情を非常に
上品に抑制した音楽的発想の華麗さ、構造と書式の最高の完成度である。文学も解説も注釈も全く不要である。幻想的な面と音楽の実質的な根拠によって最高の作品に位置する。
」と述べています。
まさにそのとおりの音楽である。冒頭部は静かな夜に、美しい音が天から降りそそいで
くるような感じがします。低音部の格調高くかつ静かな響きがその美しさをいっそう
浮かび上がらせています。このフレーズを聴くと心が次第に安らかになっていくことに気付きます。
この冒頭部はゆったりとした速度で弾かなければならない。ここの部分のテンポを速く
している奏者がいますが、速いと静かな夜の精神が研ぎ澄まされた時に、さまざまな
ことを想像する際の心のリズムに同調させることができません。
この静かで心の動揺を鎮める安らかな旋律の後、11小節目から徐々に精神の高揚を
感じさせるフレーズが現れます。



14小節目から18小節目のこの部分は冒頭部の静かな安らぎから前向きな、将来に
向けての強い希望、又は幸福の絶頂感のようなものに転換していくような感じがする。
19小節目から転調しテンポが速くなり、やや哀愁を帯びた旋律に変化していきます。



そして30小節目から再び精神の強い高揚を感じさせるフレーズが現れます。この部分
を聴くと脳からモルヒネが出ているのではないかという感じます。非常に強い情熱、
あるいは生命力のようなものを感じます。そしてその情熱は徐々に夜の静けさに戻され
ていく(61~62小節目)。
63小節目から一転して泉が湧き出るような非常に美しいアルペジオの続くフレーズに
変わります。





いくつかの速い下降音階を繰り返し、やや不安定な気持ちを感じさせるフレーズから
最初のアルペジオに戻り(TempoⅠ)、上昇音階を挟みながら徐々にクレッシェンド
し、6連付の高音と低音の掛け合いでクライマックスとなり、静かに消え入るように
音の階段を昇っていき、最後の和音を長いフェルマータで余韻を残します。
そして再び冒頭の静かで安らかな旋律が再現されます。

この夜想曲第6番の録音でお勧めは、フランスのピアニストで、マルグリット・ロン
に指導を受け、ロンの後任にとしてパリ音楽院の教授となった、ジャン・ドワイアン
の演奏に他なりません。
第1番は同じくフランスのピアニストであるジャン・フィリップ・コラールが超名演
ですが、第6番はジャン・ドワイアンが最も聴き応えがあります。



60歳代前半の録音ですが、正統的とも言える演奏で、格調高く、非常に重厚かつ
美しく情熱的な演奏です。抑制された情熱を最高に表現し得たとも言える優れた超名演
だと思います。
この録音を静かな夜に、出来れば眠くない目が冴えわたった時に聴いて欲しいです。
ドワイアンの演奏によりフォーレのピアノ曲がいかに深い音楽性を持っているかを
感じ取ることができるに違いありません。
ドワイアンの演奏は師であるマルグリット・ロンの影響を受けています。下はロン
が1936年に録音した演奏のCDですが、現代のピアニストとは全く違うものを
感じます。その演奏はすごいです。特に100~114小節目の表現は神業的な感じ
がする。





フォーレの夜想曲はこの第6番までは美しく聴きやすいが、第7番以降(第8番除く)
は徐々に暗い影を落としていきます。

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