「じゃあね」
と言いながら、I江姐さんは私たちのいるフロアから去った。
背中が前よりも小さく見えた。痩せたんだと思った。
彼女が精神的に追い詰められたとき、私は秘書検定の勉強にかまけていてあまり話を聞いてあげられなかった。
終業時間30分前。
I江姐さんはあいさつ回りに来た。
「お世話になりましたー」
今日私は昼休みに各部を回り、I江姐さんに渡す色紙を書いてもらった(女子のみ)。
皆快く応じてくれた。
カラフルなペンは家の中を捜して見つけた学生時代のもの。
なるべく華やかにして差し上げたかった。
中央にはクマの絵をあしらった。
「I江係長へ」
色紙を渡すと、I江姐さんは一瞬泣きそうだったが、いつものアンニュイな笑みを顔に宿した。
「あらー、ありがとう」
最後は笑顔で送ってあげられた。
そんな彼女からはスワロフスキーの限定テディベアをいただいた。
かわいい~!

私はミキモトの置時計を差し上げた。
「離れていても同じ時を刻みましょう」
という意味を込めて。
送りだされるI江姐さんは、花道を歩く女優みたかった。
そんなI江姐さんを見届け、心療内科へGO!
今日は3時間待ち。
秘書検定の本と台湾の旅行本をぺらぺらと捲っていたらあっという間に名前を呼ばれた。
クマ医師。今日はビビットなブルーのシャツだぜ。
「最近どうですか?」
と。
「制服配布の件も落ち着き、自分のペースを取り戻しつつあります」
と返答。
ここでクマ医師、
「あれ…?うん…?」
と私と電子カルテを交互に見る。
「あれ、もう…試験の発表は…?」
と。
来た来た…!
ニヤニヤ笑いながら
「お陰さまで…筆記試験受かりました!」
と報告。
クマ医師は、
「なんだ~!私、訊いてはいけないこと訊いちゃったかと思っちゃいましたよ。あ~、びっくりした」
と爆笑し、手を差し伸べてきた。
「おめでとう」
キター!
後楽園ゆうえんちで僕と握手!ならぬ、心療内科で僕と握手!
実はこれがやりたくて、秘書検定の勉強をしてきたと言っても過言ではない。
クマ医師は思いの外強く手を握ってきた。
モフモフした感触がやけにクマっぽかった。
肉厚で柔らかくてあたたかいクマ医師の手。
爆笑し合い、なんか話の流れでパキシルをまた減量された。
ノリで減薬って…。
大丈夫なんかな~。まあダメだったらまたクマ医師に言えばいいか。
最後、
「でも本当に良かったですね!私も嬉しいです。でもビックリしたー。今日一番驚いたことです。ふふふ」
とまた笑顔。
「自分から言うのもアレかなと思いまして。すいません」
と私も笑顔。
処方変更なし
パロキセチン(減量)、ゾルピデム酒石酸塩、防風通聖散、ラベプラゾール
I江姐さんは「ここにいると自分が壊れてしまう」と潔く会社を去った。
私は心療内科に通いつつ、騙し騙し自身の精神の安定を図りながら、これからも会社に居続けるのだろう。
何が幸せで何が不幸せなのか、分からぬ。
ただ自分が信じた道を行くのみ。
また笑顔で再会できるよう、私は私の信じた道を歩こう。
と言いながら、I江姐さんは私たちのいるフロアから去った。
背中が前よりも小さく見えた。痩せたんだと思った。
彼女が精神的に追い詰められたとき、私は秘書検定の勉強にかまけていてあまり話を聞いてあげられなかった。
終業時間30分前。
I江姐さんはあいさつ回りに来た。
「お世話になりましたー」
今日私は昼休みに各部を回り、I江姐さんに渡す色紙を書いてもらった(女子のみ)。
皆快く応じてくれた。
カラフルなペンは家の中を捜して見つけた学生時代のもの。
なるべく華やかにして差し上げたかった。
中央にはクマの絵をあしらった。
「I江係長へ」
色紙を渡すと、I江姐さんは一瞬泣きそうだったが、いつものアンニュイな笑みを顔に宿した。
「あらー、ありがとう」
最後は笑顔で送ってあげられた。
そんな彼女からはスワロフスキーの限定テディベアをいただいた。
かわいい~!

私はミキモトの置時計を差し上げた。
「離れていても同じ時を刻みましょう」
という意味を込めて。
送りだされるI江姐さんは、花道を歩く女優みたかった。
そんなI江姐さんを見届け、心療内科へGO!
今日は3時間待ち。
秘書検定の本と台湾の旅行本をぺらぺらと捲っていたらあっという間に名前を呼ばれた。
クマ医師。今日はビビットなブルーのシャツだぜ。
「最近どうですか?」
と。
「制服配布の件も落ち着き、自分のペースを取り戻しつつあります」
と返答。
ここでクマ医師、
「あれ…?うん…?」
と私と電子カルテを交互に見る。
「あれ、もう…試験の発表は…?」
と。
来た来た…!
ニヤニヤ笑いながら
「お陰さまで…筆記試験受かりました!」
と報告。
クマ医師は、
「なんだ~!私、訊いてはいけないこと訊いちゃったかと思っちゃいましたよ。あ~、びっくりした」
と爆笑し、手を差し伸べてきた。
「おめでとう」
キター!
後楽園ゆうえんちで僕と握手!ならぬ、心療内科で僕と握手!
実はこれがやりたくて、秘書検定の勉強をしてきたと言っても過言ではない。
クマ医師は思いの外強く手を握ってきた。
モフモフした感触がやけにクマっぽかった。
肉厚で柔らかくてあたたかいクマ医師の手。
爆笑し合い、なんか話の流れでパキシルをまた減量された。
ノリで減薬って…。
大丈夫なんかな~。まあダメだったらまたクマ医師に言えばいいか。
最後、
「でも本当に良かったですね!私も嬉しいです。でもビックリしたー。今日一番驚いたことです。ふふふ」
とまた笑顔。
「自分から言うのもアレかなと思いまして。すいません」
と私も笑顔。
処方変更なし
パロキセチン(減量)、ゾルピデム酒石酸塩、防風通聖散、ラベプラゾール
I江姐さんは「ここにいると自分が壊れてしまう」と潔く会社を去った。
私は心療内科に通いつつ、騙し騙し自身の精神の安定を図りながら、これからも会社に居続けるのだろう。
何が幸せで何が不幸せなのか、分からぬ。
ただ自分が信じた道を行くのみ。
また笑顔で再会できるよう、私は私の信じた道を歩こう。