世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

まな板の傷

2012年03月22日 23時27分13秒 | Weblog
心療内科デー。

待合室の様子から2時間待ちぐらいだと思っていたが、小一時間ほど診察室から出てこない患者が3人いて結局4時間待ちだった。長かった。疲れた。ヤニ切れがひどかった。苛々。
ドアで隔てられた診察室から患者の嗚咽が聞こえる度に、「あー、また長引くのか…」とがっかりしてしまった。

気を逸らす為に本を捲る。
今日は伊集院静の「三年坂」を読みながらの待機。京都に行きたくなった。
主人公は鮨職人・宮本甚。

………
 翌朝、和枝は実家に帰った。十日ほどして実家の母に説得されて帰った和枝から、
「あなたは、義母さんのようなひとを女房にすればよかったのよ」
と突慳貪に言われた。宮本は母のことをそう言われると、腹が立った。
「ああ、探してみるよ」
 冷たい空気が流れだすと、後はもう成り行きのところもあった。まな板に夕方付いた傷はその夜の内にたわしでつぶしておかないと、二、三日するとそこにはもう消えない傷が残る。人間の関係なんて、あやふやなものだ。
………

というところが印象に残った。
まな板って使ったことがないのだが、なんとなく分かるような気がした。


さて診察。
「前回はご迷惑をおかけしました」
とクマ医師。
そう、彼は前回の診察の日にインフルエンザに感染し、薬の処方だけを行ったのである。
まあ、人間だから仕方ない。それよりも彼が元気になったことの方が嬉しい。



来月、また社内の人事が動き出す。
産休明けで苦手な人が復帰するのである。
気が重いとは周囲の同僚の一致した意見である。
気にしなければいいのだが、動揺はしてしまう。

吉熊上司に使われるのは一向に構わない。
育ててもらったわけだし。むしろ、彼に物事を頼まれると嬉々としてやってしまう。
11年の間で培われた信頼の為せる技だ。

しかし、彼女と社長がグルになって、私に変な仕事を押し付けてくるシチュエーションは耐えられそうもない。
「それはわがままだ」と理性的な自分が囁く一方で、もう一人の自分が激しい嫌悪感で悲鳴を上げている。
そのことを妄想すると動悸がして眠れない。

クマ医師にそう言ったら、丁寧にうちの会社の人間関係及びその仕事内容を解析してくださった。
絡まった糸を解くように。
そしたら少し、安心できた。

クマ医師はいつもこうして、私の手を取り、果てしなく深い森を一緒に歩いてくれる。
もじゃもじゃのクマ医師の手をしかと握り、私は前に進むことができる。
木々は途切れ、やがてそこには煌めく朝日が待ち受けていると私は信じている。


あと、「三年坂」のまな板のように、心に傷が付いたら、その都度、たわしで洗ってあげられたらいい。
しかも自分で。



処方変更なし
パキシル、マイスリー、防風通聖散、ラベプラゾール



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