いつからだろうか。
会社が大奥に似ていると感じるようになったのは。
私のいる会社は女子が多い。
その事実は、大奥の必要条件を充分に満たしていると思う。
店舗はよくわからないが、本社に限っては部署ごとにカラーがある。
・比較的、表に出て目立っている
・ひたすら縁の下の力持ち
・ちゃきちゃき系
・内気な子揃い
・ちょっとヤンキー
・海外出張に行っちゃう人々
上記のような分類が可能である(あくまでも私の個人的な見解)。
あと、各部に少数だけど存在しているパートさん。
彼女たちは、独身時代、超一流企業にいたもんだから、
「この会社は福利厚生がねぇ…」
「私のOL時代、仕事始めの日は晴れ着を着て出勤した」
とか言って、プロパーの我々「寝た子」を起こすようなことをする。
悪気はない。
きっと。
たぶん。
大奥には総取締役がいるが、当社にも存在している。
某女性部長である。
彼女は、社内の風紀に目を光らせている。
東にノースリーブの社員がいれば、「お袖は?」と訊ね、
西にどんくさい社員(私)がいれば「あなた、そろそろ社長のお茶を注文しておいて頂戴」と言い、
南に困っている社員があれば「ど~したのぉ?かわいそうにねぇ~」と電話をし、
北にネイルアートを施す社員がいれば、「つまらないからやめろ」と言い、
日照りの時は涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
…
ある日、彼女は私の吸う煙草を見つめ、
「それ、どんな味がするの?」
と訊いてきた。
その表情は、咎める風でもなく、純粋な興味に満ちていた。
以来、私は彼女に対して好意的だ。
当社の大奥にはいろんな人がいる。
でも、喧嘩が皆無で、他人のプライベートを侵さない良識のある社員に囲まれ、私は幸せなのだと思う。
あ、大奥での私のポジションは
…そこそこ日が当たり、
そこそこ日陰の居心地がよいところである。
8年前、店舗から大奥入りをした私も、それそろ局の域かもしれぬ。