世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

石橋物語

2005年08月19日 22時45分23秒 | Weblog
夏休みも終ってしまった。
お盆が過ぎた途端、まだ強い日差しの中に秋らしさを感じてしまう私は
少々せっかちだろうか。

尾道から帰ってきて、昨日まで実家にいた。
実家というものは不思議なもので、離れてしまうと他人の家という感覚が
離れた時間に比例するかのように累積する。
パソコンもないアナログな家庭なので、することがない。
引っ越しの際、部屋に私物を残さなかったので手持ち無沙汰になる。
唯一、居間のビデオ棚に「東京ラブストーリー」の再放送を録画したビデオがあるが、台詞も殆んど覚えてしまうぐらい何回も観たので、観る気になるのは希だ。

仕方がないので、思い付きで母校に行ってみた。

私が卒業したのは「栃木県立石橋高校」。
たしか私が高校二年の時に、高校生クイズで先輩が優勝した為、
「クイズの」という怪しい枕詞がついた。


石橋駅を降りて、商店街を歩く。
まず驚いたのは商店街に電線が見あたらないことだ。
言ってはなんだが、下妻級の田舎である。
商店街と言っても、干瓢屋さんか薬局か床屋さんしかない。
…電線を無くすぐらいしか都会さを出せないんであろうか。
(しかもこの町の裏ネームは「グリムの里」。)

国道4号線付近で、前方から課外授業を終えたらしき女子高校生2人を発見。
何かを食べながら歩行している。もしやと思ったらやはり石高生。
制服のブラウスに変な襞がついている…それで分かった。

無邪気な笑顔が眩しい。
夏の光にも負けていない。

20分程歩き母校に到着。


馬鹿でかい2本の杉に挟まれた正門。
文化財指定されるんじゃないかというようなオンボロ体育館。
埃臭い昇降口。
戦時中は武器倉庫だったというブラバンの部室。

それらが、蝉の鳴き声と夏の光の中で静かに佇んでいた。



私が会社でコピー取ったり、お弁当を食べている間も、
この場所はあの頃と変わらずチャイムが流れ、卒業生を送り出しているのだ。


当たり前。
当たり前なんだが、私の中で勝手にこの場所をセピア色に染めてしまっていた。

自分が見えている世界だけが鮮明。
通過してしまった場所を無意識のうちに次々とセピア色にしてしまうか、
忘却の彼方に追いやってしまう…いつの間にかそういう術を得た自分。

それが自然のことなんだろうけど、私は諦められない。
「思い出」にしてしまうことに抵抗を覚える。

セピア色になりつつある場所でも、
できるだけフルカラーのままで自分の中に持っていたい。
だから母校訪問なんて思い付いたのだろう。

来る前にすれ違った女子高校生の笑顔が胸に響く。
昔は私もあんなに無邪気に笑っていたのだろうか。

セピア色の「私」は、なかなかフルカラーでは蘇らない…。
コメント (3)