晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『髪結い伊三次捕物余話(十二)名もなき日々を』

2022-07-03 | 日本人作家 あ

今年も半分が過ぎてしまったのでありますね。そういえば先日、ネットニュースで男性の「幸福度」は40代後半くらいがもっとも低いというアメリカの大学の研究結果がありまして、自分はまさに今がそれなんですが、まあ家族のこと仕事のこと健康のこといろいろありますよね。そこをいくと手前なんざ気楽な独身三昧で仕事は楽しいし趣味の読書や自転車や料理お菓子作りも楽しいし大学の勉強も楽しいし、ものすごく人生が充実していて、ひょっとしたら今まで生きてきて今が一番幸福なんじゃないかと思ってます。

一言で言えば「欲張らなくなった」ということでしょうか。向上心が無くなったわけではありません。分相応がいちばん居心地がいいのです。自分は自分、人様は人様。世界の幸福度ランキングで日本が低いのは謙遜の文化があるからだという指摘もなるほどなとは思いますが、あくまで「おごらない」姿勢で。度が過ぎると「どうせ〜」と卑屈になってしまいますからね。

以上、幸せって何だっけ。

さて、宇江佐真理さん。早いもので、いや長かったですか、このシリーズも十二巻目。全部で十五巻と番外編が一巻あるので残りあとちょっと。

二月の終わり、奉行所では同心の不破龍之進は賭博の捕物の準備をしています。龍之進の妻の弟、つまり甥っ子である小平太はまだ見習い中ですが捕吏に加わります。小平太は龍之進に「深川相生町に空き家なんてありましたっけ」と訪ねますが「うるさい」と怒られる始末。現場につきますが、聞いていた空き家らしき家は見当たりません。じつは深川ではなく(神田相生町)だったのです。急いで神田へ向かいますが時すでに遅し、という話を聞いた伊三次はたまたま目にした喧嘩の仲裁に入ったときに商売道具の髪結い道具を入れる台箱をなくしてしまい・・・という「俯かず」。

伊三次は顔見知りの自身番に立ち寄ると松助はちょうど人別改め(住民票のようなもの)をまとめています。そこで、ちょっと聞いて欲しい話があると言われ、ある長屋の大家の話を聞くことに。十年以上も前の話、大工の夫と離縁して(平吉)という子を連れて実家に戻った女のもとに元夫の実家から平吉を跡継ぎにすると要求してきて手放すことに。ところが平吉は元夫の祖母の家に預けられてその祖母が死んだときに平吉と住んでいなく・・・という「あの子、捜して」。

伊三次の娘のお吉はただ今女髪結いの修行中で、手習い所に通っていた友人たちと浅草で人気の鶴之助という手妻(手品)師の舞台を観に行きます。ところが後日、浅草の興行主が殺されるという事件があって、それがお吉が観た舞台の興行主で、なんと鶴之助が逮捕され・・・という「手妻師」。

龍之進の妹、茜は、蝦夷松前藩に奉公に上がっています。花嫁修業よりも武術の修行をしていた茜は藩主の子女の身辺警護をする(別式女)をしていて、現在は長男の良昌の話し相手。そんなある日、茜は同僚から妙な噂を耳にします。病弱な良昌は隠居して次男があとを継ぎ、良昌は正室を迎えて茜を側室にしようというのです。すると茜に身の回りの世話をするという若い女中が付けられます。部屋に戻った茜は母親からの手紙を盗み見ていた若い女中を目撃してカッとなり・・・という表題作「名もなき日々を」。

蝦夷松前藩の先々代藩主の側室だった鶴子は剃髪して下屋敷に住んでいます。その鶴子のもとに上屋敷の女中を預かって欲しいという話が。その女中は良昌の別式女で、他の女中に暴力を振るったとのこと。その件の女中つまり茜が下屋敷にやって来ます。茜は当面の間、鶴子の警護をすることに。そんな話とは別に、伊三次の息子で絵描きの修行中の伊与太は師匠に連れられて葛飾北斎の自宅へ・・・という「三省院様御手留」。

龍之進の妻は臨月で、家に帰ろうとしたら同僚の緑川鉈五郎にばったり会います。なんでも鉈五郎、江戸城だの大名屋敷で変な鳥がいるとかで調べています。なんでもその鳥は(以津真天)という妖怪の類で・・・という「以津真天」。

宇江佐真理さんの作品はほとんど読んだと思っていましたがまだ未読の作品がけっこうあります。なんとなくこの方の作品は寒い時期に読みたいような気がします。読み終わって心がホッコリするといいますか、あたたかな気持ちになるからですかね。

 


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