晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『吉原裏同心(五)初花』

2017-08-27 | 日本人作家 さ
さて、今作のテーマの「初花」ですが(花)とは、
俳句では(桜)の意味で、季語は春。
江戸では、寛保年間の頃(1740年代)に、夜桜
見物が始まったそうです。といっても現代のように
電気の照明でライトアップがあるわけではなく、
雪洞(ぼんぼり)という小型の提灯を使っていた
とのこと。

吉原では、春になると、まだ蕾の桜の木を仲ノ町の
メインストリートに植えて、客も遊女もそわそわと
咲くのを待つという、一年のうちで一番晴れやかで
華やかな時期。

のっけから、嫌な事件が。松葉屋という見世の逢染
という遊女が首を吊っているところを発見されます。
なんでも、客と寝ているときに寝小便をしてしまった
というので、客の武士はカンカンに怒りますが、逢染
は粗相をしてないと言い張ります。ですが、見栄と粋
で生きる吉原遊女にとってこんな恥はないと自ら命を
絶つことに。
客は笹目なにがしという武士で、調べが進むと、他の
見世でも最近、自殺した遊女がいたのですが、手口は
大体同じで、こちらの客も武士で、どうやら笹目と
つるんでいるようで・・・

こんな事件を解決したと思ったら、また別件。

神守幹次郎と汀女が墓参りに行くと、汀女が音葉と
いう吉原の元遊女が墓参りをしているのを見かけます。
音葉は落籍されて、現在は川崎の植木職人に嫁いで
います。
音葉は、吉原時代に仲の良かった自殺した青葉という
遊女の墓参りに来ていたとのことで、青葉は落籍を
約束していた客が別の女と結婚し、さらにその客に
今まで稼いだお金を預けていたのです。
幹次郎と汀女が音葉を見た翌日、青葉の客だった男、
忠三郎の死体が発見されます。
もしや犯人は音葉か。そういえば音葉が墓参りして
いるとき、着物の胸元に紙が差し込まれていたのを
汀女は思い出しますが・・・

さて、この事件も解決したと思いきや、幹次郎が
吉原会所に(出勤)すると、なんと雛菊という遊女
が殺人の容疑で面番所にしょっ引かれたというのです。
容疑は、雛菊の出した文、今でいうホステスの営業
メールのようなものですが、これに雛菊は手紙に口紅
を付けていて、手紙をもらった客が「雛菊の紅だ」と
喜んで舐めたところ客は苦しんで死亡。死因は毒。
手紙の口紅に毒が塗ってあったというのです。

幹次郎と会所が調べていくと、雛菊の見世で最上位
の鞆世太夫が怪しいとつかみます。人気に陰りが見え
てきた鞆世太夫がなじみ客と結託してナンバーツーの
雛菊を殺したのか。でも証拠がありません。
そして、遊女の文を出す専門の(文使い)という仕事が
あるのですが、例の毒付きの文を出した正五郎という
文使いが殺されて・・・

そして、また別の事件が。今度は郭内で、遊女と客の
男が揃って死んでいるのが発見され・・・

今回は、巨悪ではなく、子悪党がそれぞれの事件に
関係しています。
「文使い」という職業もそうですが、「身代わり」と
いうユニークな職業も出てきます。

コメント
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