晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『日暮らし』

2010-11-12 | 日本人作家 ま
宮部みゆきは、ミステリーから短編からエンターテインメント
からファンタジーから、どっぷりとした恋愛モノはまだ書いて
ないのかな?とにかく、さまざまなジャンルの作品を提供して
楽しませてくれます。

その中でも、特に面白いと思うのが、時代小説。
歴史モノはちょっと・・・と思う方は、ぜひ一度読んでほしい。
とにかく「読みやすい」のです。

そして、時代小説がニガテな方は、おそらく歴史の授業を思い
起こさせるから・・・ということもあるでしょうが、宮部みゆき
の作品には、戦国時代のごちゃごちゃした相関だの、教科書で
お目にかかるようなスターは出てきません。
基本、舞台は江戸時代の下町辺り。そして登場人物は、現代で
いうところの大家さん(差配人)、岡っ引き、同心、さまざまな
職種の、市井の人々の暮らしの中に起こる、それこそ教科書には
載らない「些細な事件」を描きます。

携帯どころか電話がない、テレビもない、バスも電車もない、
そして、庶民は庶民というだけあって、みんな貧乏。
よって、現代とは比べようもないほど、人々が協力し合って
いかなければならず、繋がりも重要なのです。

『日暮らし』は、「ぼんくら」という作品の続編というか、同心の
平四郎、甥の弓之助、岡っ引きの政五郎、手下の“おでこ”といった
キャラクターが登場し、植木職人、煮売屋の女将も「出演」。

短編または中編の物語が描かれ、表題の「日暮らし」があって、最後に
締めくくりの短編、という構成になっていて、それぞれの話はうっすら
と繋がっているくらいで、途中までは脈絡もない、と思っていたのが、
最後にガシッとまとまって、「おお、スゴイ」と感嘆。

浅草で人気を博していた似顔絵売りが突然殺され、その手口から、素人
の仕業ではないと平四郎は読みます。
別な話。植木職人の佐吉は、死んだと聞かされていたはずの母親の存在
を・・・
そして、これまた別な話。気持ち悪い男に言い寄られて、逃げた奉公先
の女主人と隠居に助けられ・・・
ここで多少のつながりがようやく出てきます。なんと佐吉が人殺しで
捕まったというのです。殺した相手は、母親の葵?・・・

名誉や地位のための隠蔽、それによって振り回される弱い立場。基本構図
は江戸時代だろうが平成だろうがいっしょなのです。
ただ、せめて物語の中でだけは、スカッと解決してもらいたい、そんな
胸のすくような読了感。
コメント
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