月に二、三度通る山形市内の場所に、良い椿があります。
コンクリートの打放しのテナントビルのピロティに唯一植ゑられてゐる樹が椿でした。春先、そこを通るのは小さな楽しみでしたが、この春、一階に入居してゐた不動産屋さんが辞めたのか移転したのか、その椿だけが残され、うち棄てされながら、それでもこの季節、藪系の良い花を咲かせてゐました。
スリットから、生きながらへたい、とばかりに花を見せてゐました。
何故か、来年はその椿がなくなってしまふやうな気がして、通行人の怪訝な顔も無視して携帯のカメラに収めました。