やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

森 敦、を読む

2007-05-24 | 雑記
           
          


森 敦の、庄内三部作ともいふべき小説を読みました。

『月山』(月山、天沼)
『鳥海山』(初真桑、鴎、光陰、かての花、天上の眺め)
『浄土』(浄土、吹きの夜への想い、杢右エ門の木小屋、門脇守之助の生涯、アド・バルーン)

『月山』は、過日の再読。

まったくに面白い世界を描き出してゐます。

特に、鶴岡市の大山(酒どころです、小さく美しい街です)に、”ふらっと、ころがり込んで”の生活を描いた小説が、一寸スマシタ感じの『月山』に較べると、抜群に面白い。

森敦さんの庄内を舞台にした小説は、時代も、日付も、時間も、人物の名前さへ定かには設定してはおらず、けれど登場してくる主人公も、じじやばばも、とてもウサン臭く、貧乏で陽気で開けっぴろげで、それらが混沌とした、曼荼羅のやうな世界が延々と続く。
それに加へて会話が庄内弁ですから、まるで読経を聞いてゐる雰囲気のうちに小説は最後を迎へる。

かうして、その曼荼羅のやうな世界に浸ってゐると、
過日訪ねた大網の山郷が、まるで、”天上の里””天空の里”のやうにおもはれて、秋にでも再度訪ねやうと思ってゐます。

森敦さんの小説は、このあとの長大な一作が遺されてゐますが、いつになれば完読できるやら心もとないですが…。