先週でしたか、新聞で志水辰夫がとりあげられてゐて、久しぶりに、シミタツの小説を読む。
『生きいそぎ』(志水辰夫著/角川書店)
短篇集です。
主人公は、ほとんどが60歳前後の、ひと区切りを終へた男たち。
荒削りな文章で描かれる、荒削りな心情が、いい。
ちょっと勝手すぎる、みたいなところもありますが、
悲しいかな、残念かな、所詮、男はこんなものでせう。
封印してゐた過去や気持ちや事件が、突如として現はれ、
あるひは蜃気楼のやうにさまよひ、さしたる解決をみないまま、
それぞれの主人公が残された時間へと向かってゆく、そのザラザラとした心情がいい。