しばらく前に『ヒトラー~最後の12日間~』(岩波書店)といふ本を読み、
偶然に、同名の映画をGyaoで見てから、(映画の公式ホームページ(英語版))
今さらながら、しばらく、アドルフ・ヒトラーに関するものを見たり、読んだりしてゐました。
特に本は、見事な翻訳の細密な文章とテンポのよい構成で一気に読み上げ、
映画もまた、ヒトラー役の役者が見事な演技で、後戻りしない演出とともに、秀逸でした。
あまりにも好々爺の一面をみせる役者の演技に、ドイツでも他の国からも非難を浴びたやうですが、勿論、絶対の非は承知しながらも、ヒトラー自身にさういふものがあったのは間違ひのないことだったのでせう。
『アドルフの画集』といふDVDも見ました。参考HP
貧しく暗い青春時代のヒトラーの姿ですが、
彼は、決して画家になりたかったのではなく、建築家になりたく、その手段としての画才が(結局、建築家としての才能も含めて二重に…)認められなかっただらう姿が加はると、よりリアリティがあったやうに思ふ。
そして、やがて、
ゲッペルスといふ狂気な文人と(彼も、また、小説家になりたかった人間であり、浪漫風な小説も書いてゐます)、
シュペーアといふ冴えない若手建築家を従へて、未曾有の世界を創ってゆく。
ファシズムと建築、といふテーマで、井上章一さんが面白い本を書いてゐました。
(彼の視点は常に素晴しく、モーテルであったり、霊柩車であったり、…)
この本を読むと、ヒトラーの、夢と絶望が(勿論、建築的な視点から)よくわかります。
彼は、きっと、増幅アジテーターではあっても、政治家では決してなかった。
前述の映画でもそのシーンがありますが、ベルリンがソ連軍に包囲された絶望的な状況でも、夢に描いたベルリン市街のの再生プランの模型を大事にし、日々眺めてゐたやうです。
井上章一さんの本の中に、『太平洋を渡った日本建築』の紹介があり、読みました。面白い本でした。
建築的にも面白い事実が沢山あるのですが、戦争へと突入してゆくアメリカの中で、ドイツ系やイタリア系の方は、さうでもないのに、日系人がことごとく収容所へ送られたらしい事実は、色々な意味を残してゐます。