ブラームス関連のものを探してゐる時に、「吉田秀和作曲家論集5/ブラームス」(音楽之友社)といふ本に出会ひました。
雑誌に掲載したものをまとめたものですが、本の半分を占めるブラームスについての小論(これも、30年ほど前に雑誌に掲載したものですが)が秀逸でした。
吉田氏も、まう、かなりの高齢になったはずで、以前新聞で、最近奥様を亡くした時には、すっかりやる気がなくなった、と話されてゐましたが、時折聴くFMの番組では再び声にも元気が出てきたやうでした。
音楽評論家では、ずゐぶんと以前に亡くなった大木正興さんがとても好きでしたが、吉田氏の独特の口調で紹介されたものは、聴いてみやうかといふ気にもなります。
小論は、ブラームスの生涯をたどってはゐないけれど、やはり!クララ・シューマンとの関係を織り込まれた糸にしながら、ブラームスの音楽が次第に緻密に、豊饒になってゆく過程を描いてゐます。
四曲の(たった!)交響曲を四姉妹と名づけ、クララを「光の女性」と云ってゐるあたりは、日本人的な心情ながら、感心してしまひました。
それにしても、赤貧時代の少年ブラームスの描写には胸がつまるところがあります。