rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

一億総中流の再現はグローバリズムに反するか

2012-12-23 22:40:47 | 社会

2012年12月23日の報道2001では、先週の衆議院選挙で圧勝した自民党の安倍総裁を招いて日本の経済をいかに活性化させるか、金融緩和と公共投資の財政出動でインフレターゲットを達成して日本のGDPが伸びるかという議論がなされていました。その番組中で、「企業の内部留保が過去に例を見ないほど増大し、新たな設備投資先がない上に、勤労者の賃金が低下している事が日本国内の経済停滞の原因ではないか」という至極正しい指摘がなされ、純益を製品の価格低下と従業員の賃金増に反映させている小売業社長が紹介されていました。「国民と勤労者が豊かにならなければ経済は活性化しないからそれを実践しているのだ。」とまっとうな意見を社長は述べていました。

 

これ、先の選挙期間中には共産党の志位委員長がしきりに訴えていた主張で、自民党らが国防軍だの改憲だの選挙の争点とは関係ない事を話していた時に共産党だけが正論を吐いていたように感じた内容でした。私も以前のブログ「GDPが横ばいなのに年収が低下するのは何故か」で、企業の内部留保の使い道が、外国に設備投資をして生産工場がアジアに出てゆく事やアメリカの国債を買う事に使われて、勤労者たる国民の収入増加につながっていないことが問題だと指摘しました。

 

今回、自民党は財政出動と金融緩和によって国内に円をあふれさせてインフレにし、GDP上昇を達成しようとしていますが、果たしてその結果国民の所得が上がって消費をするようになるでしょうか。経団連の米倉会長は「来年の春闘では1%の賃上げなどとんでもない、むしろ賃下げをして同じ総人件費でより多くの人が雇えるようになったほうが日本の企業のためには良いのだ。」と述べたという事です。維新の会では選挙前にアルバイトなどの最低賃金制の廃止を公約にかかげ、やはり「同じ総人件費でより多くの人が雇える方が良い」という方針を出しました。

 

「可能な者から先に豊かになれ」という先富論は中国が開放政策という名の原始的な資本主義を取り入れた時の言い訳にしか過ぎませんでした。その模範となったアメリカでもグローバリズムが徹底された結果1%の富裕層と99%の貧困層に二極分化が進み、豊かなアメリカの象徴であった豊かな中間層という階層が消滅してしまいました。「富裕層がより儲けて金を使えば、経済が回って、そのおこぼれで周りの人達も豊かになるのだ」というのが今では現実にはありえない事がはっきりした「トリクルダウン理論」ですが、金は使わなくても同じ価値を保ち続けるから、より沢山貯める方に関心が向いて、上限なく貯め続けるのが人間の心理であって、一部富裕層の所有となった国籍のない巨額のマネーが行き場を求めて猛獣のように国民国家に襲いかかっているのが現状といえます。つまり内田樹氏が言うように「トリクルダウンはグローバル資本主義と国民国家のあいだの本質的な矛盾を糊塗するための詐欺的理論」でしかなかったという事です。

 

国民が選挙で選んだ政府が、グローバル資本主義に反する方策を取る事も正義と言えるかは、以前のブログ「民意と経済はどちらが正しいか」で考察しましたが、日本においてもグローバル企業を代弁する人達の意見に反する決定は自民党政権においてもできそうにない、と先に述べたような状態からは言えそうです。これも先のブログ「グローバリズムと植民地経済」で述べましたが、グローバリズムの行き着く所は国民国家の中にも豊かで消費にいそしむ宗主国階級と低所得で働くだけの植民地階級の階層分離ができてしまう結果になるのではないかという事です。その状態で民主主義による国民国家を維持するには、植民地階級の貧しい人達が徹底的にバカで富裕層の思い通りの選挙をしてくれないと体制の維持ができません。そしてもう一つの国民国家維持の方法は中国のような独裁政権による体制維持です(そのためには大胆な改憲が必要ですが)。

 

米中欧の経済を見ていると、そろそろ完全に自由なグローバル経済というものも、見直しがされる時期に来ているのではないかと感じます。欧州の共通通貨であるユーロがこれからどうなるのか、今後アジアでもドルに対抗しえる共通通貨が作られてゆくのかは最近ファンになった揚羽蝶の浜矩子先生の近著「通貨はこれからどうなるのか」PHPビジネス新書に示唆に富む内容が書かれていたのでいずれ紹介しますが、通貨を人類の叡智によってもっと飼いならす事で現在の「通貨に国家が振り回されている」現状を打開することができるのではないかと思います。以前日経ビジネスでも紹介されていた通貨にマイナス金利を付ける(通貨の価値に期限を付ける)とか、地域通貨と国や地域の基本通貨を共存させて地域毎の経済活性化に役立てるといった工夫はもっとなされても良いと思います。

 

一億総中流に戻る事は日本の国内経済の活性化には最も有効な手だてですが、現状ではグローバリズムの経済原則には反すると思われます。国内で工夫をこらした種々の経済政策を実施するためにも、社会の仕組みをグローバリズムに組み込むTPPには入ってはいけないと強く思います。


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