新型コロナ感染症は、ほぼ拙ブログで予想した通りに「欧米の様な爆発的感染者拡大は起こらず」「感染者総数は1-2万の間でほぼ横ばいに推移し」「5月の連休後には収束に向かう」方向になりました。それは公になっているデータと論文を読んで、メディアの明らかなデマは無視し、予断を入れずに分析していれば私の様な専門家でない医者でも解る範囲の事です。当然政府の専門家会議や感染症学会の人達は公の席では言いませんがほぼ同じ見解だったと思いますし、そのような判断で対策を提言(デマに基づく素人の批判も多く、政治的な判断もいろいろ入ったとは思いますが)してきたと思います。
I 新型コロナ最初の患者報告≠最初の患者
2019年12月末にSARSに似た新型肺炎のクラスター4名が中国武漢で発生したという報告が第一報として出されました。メディアなどはそれを新型コロナ初患者(Day 0)と勘違いして(或は意図的に)報道し続けているようです。各国の感染者第一号もPCR検査で初めて確認できた人をその国における初感染者の如く報道し、そこから感染者数の累積が始まっています。当初は米国CDCもインフルエンザ様の感染症が前年秋から増加していたため、コロナウイルスが以前から流行していた可能性を示唆する報道がありましたが、報道管制が敷かれたか最近は一切言わなくなりました。
CDCがまとめたインフルエンザ様の疾患受診率 例年よりも2019年末からかなり多い
私はブログ「前から流行ってましたと言えない・・」で新型コロナの発生を2019年11月と設定してそこがDay0だと言う前提で、非常に感染力が強く、不顕性感染者が多い新型コロナ感染症は、武漢から日本を含む世界にすぐ拡散して12月末には日本でも初期型で症状がL型よりも比較的マイルドとされるS型が流行していただろう、と予測しました。昨年12月にはインフルエンザ陰性のコロナ感染症にそっくりの症状(1週間つづく高熱と気管支炎症状)の感冒にかなり多くの日本人(私の家族を含む)が罹ったので、1月以降は日本では新たな感染拡大は起こらないと考えました。そこで新型コロナ発生を11月とする論文などの根拠を以下にまとめてみます。
II 2020年3月の一流誌論文で提示された推定Day 0
NEJMに掲載された2019年12月以降の感染者数分布
2020年3月26日の米国New England Journal of MedicineのLiらの論文「新しいコロナウイルス感染による肺炎の武漢に置ける伝搬動態1)」という論文では、上図の様に2019年12月7日に遡って感染者が確認され、初期の患者は海鮮市場とは関係がない事も明示されています。また2020年3月の米国内科学会誌Annals of Internal MedicineのLauerらの論文「Covid-19報告例から類推する新型コロナの潜伏期間2)」では報告例の最初の感染源への接触は12月1日頃と推定され、12月以前からウイルスは存在したであろう、とゲノム分析の結果からも考察されています3)。
III 新型コロナ肺炎を「全く新しい疾患」と中国武漢の医師達は何故疑ったか
80代の高齢者や合併症のある患者さんが肺炎、気管支炎をこじらせて亡くなるのは日常的な事であるのは前回のブログでも説明しました。日本でも年間13万人が肺炎で亡くなっていて、中規模以上の病院では週1-2人は肺炎で亡くなっているはずです。私の病院でもコロナ騒ぎのこの一月にコロナ以外の肺炎で数名の方が亡くなっています(PCRやCT、喀痰培養などでコロナでない事は確認してます)。これら多くの患者さんに混ざって、武漢の病院で何故新型コロナ肺炎が見つかったかはNature2月のZhouらの論文「コウモリ由来と思われる新型コロナウイルスによる肺炎の拡大4)」にも説明されています。つまり「pneumonia of unknown etiology surveillance mechanism原因不明の肺炎を見つける調査基準」に従って38度以上の発熱、レントゲン所見で肺炎がある、白血球は正常か低下でリンパ球減少(細菌感染でない)、3-5日抗生剤投与で症状改善がない、の4条件を満たした時に未知の病原体を検索するというものです。ただこのような調査基準があったとして、「未知のウイルスによる肺炎だろう」と日常診療において一般の医師が推定するのは難しい事だと思います。「良く解らないうちに亡くなった肺炎患者さんが身近に集中して沢山出現」しないと「おかしいぞ?」という疑問は湧かないのが普通ですからある程度「インフルではない肺炎患者」が急激に増えて、しかも2003年SARSが出た中国でSARS研究のメッカであるウイルス研究所がある武漢であったという土地柄が「新型肺炎発見」につながったのではないかと推定します。まあだからといって「2019年の秋頃に元々のウイルスが武漢の研究所から漏れた疑惑」は拭いきれませんが。
IV Day0は2019年後半という報告が増加している。
抗体検査の普及や世界中のウイルスRNAの変異解析が蓄積されるにつれて、新型コロナウイルスの発生は中国の始めての報告より前であろう、という報道が散見されるようになってきました。米国ニュージャージー州ベルビル市長のマイケル・メルハム氏 は、自分はコロナ抗体が陽性だが、肺炎になったのは2019年11月だったと暴露して話題になっています。フランスでも2019年12月にコロナ感染になった例が確認されたと報道がありました。以前紹介した日本のゲノム解析の論文や京都大学からの報告の他にも、ロンドン大学のFrancios Balloux教授は7500例の世界中のコロナ感染者のウイルス解析から中国で発見される以前の2019年後半には世界中でこの感染症が広がっていたと科学的に考えられると述べています。トランプ大統領は新型コロナ肺炎が武漢発祥であるから、世界の感染拡大の責任は中国にあると金銭的な補償を含めた責任論を展開しています。世界中でロックダウンを行って経済を破滅的に停滞させた国々も「2019年後半に既に流行していた」感染症に対して2020年に都市封鎖をしても何の意味もない(実際科学的統計では何ら効果はなかった)事が明らかになると為政者の政治責任が問われるので非常にまずい事になりそうです。
V 日本は当初はまっとうな対応をしていたと思う
日本は以前から指摘していたように新型コロナ感染症に対して適切なPCR検査やクラスター対応など「まっとうな対応」をしてきたと思います。しかし「馬を馬」として正しく対応していたのに「馬を鹿」だと言い張る世界の多くの国々や日本のアジテーター達から「異常だ」と言われ続けて、3月下旬以降は無理矢理「鹿かも知れません」と言わされたような格好になりました。悪性の感冒程度の新型コロナ感染症を「怖いぞ、怖いぞ、死ぬぞ!」とメディアを使って脅し続けて世界経済を意図的に破壊する「コロナショックドクトリン」は大成功を収めました。豚インフルエンザのように集団免疫を作るしかない物を「第二波が来るぞ」「次はもっと酷くなるぞ」「自粛解除は拙速だぞ」と科学的根拠を示さず脅し続けているのは「コロナショックドクトリン進行中」であるとメディアを見ていれば良く解ります。
VI 未知のワクチンに不安を示さない人達
新しい感染症に対して効果的なワクチンが開発されることを期待するのは当然の心理と思います。しかし中国が開発中と言われる不活化ワクチンはまだ解りますが、人間で成功例がないmRNAワクチンやDNAワクチンといった得体の知れない物を製薬会社が「ここぞ」とばかりに開発して売り出そうとしている情勢はいかがなものでしょうか。ウイルスが人間の細胞に感染して勝手に蛋白を作って増殖するのが気持ち悪いのに遺伝子を注入されて蛋白を作らせてそれに対する抗体を作って免疫を得る事は成功例がないだけでなく「長期的な影響は大丈夫か?」と思います。現在新型コロナウイルスに対する有効な中和抗体が何かは不明ですから、不活化ワクチンかウイルスの蛋白を注射してそれに対するポリクローナルな抗体を作るのは理にかなっているように思いますが、どこの部位(抗原)を入れれば正しい中和抗体ができるか不明な状態で「ウイルスの遺伝子の一部を体内に入れます」というのは、私は不安です。PCR検査が少ないからいつウイルスに感染するか不安だと言い続けている人達はウイルスの遺伝子を使ったワクチンに対しては全く不安をいだかないのでしょうか。ワクチン製造には世界中の政府が補助金を出して、完成の暁には世界中の人間が受ける(強制的?)から大もうけ間違い無しです。コンピューターからワクチンに宗旨替えしたビル・ゲイツも笑いが止まらない事でしょう。
参考文献
1) Li Q et al. Early transmission dynamics in Wuhan, China, of novel coronavirus-infected pneumonia. NEJM 2020,382,1199-207
2) Lauer SA et al. The incubation period of coronavirus disease 2019 (Covid-19) from publicly reported confirmed cases: Estimation and application. Ann Intern Med. doi:10.7326/M20-0504
3) Genomic epidemiology of novel coronavirus (HCoV-19). 2020.Accessed at https://nextstrain.org/ncov on 29 January 2020.
4) Zhou P et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature 579, 12 March, 2020, 270. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2012-7