rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

書評 異次元の刻印(上・下)グラハム・ハンコック

2008-11-18 23:52:36 | 書評
書評 異次元の刻印(上・下)グラハム・ハンコック 川瀬勝(訳)
バジリコ2008年刊

「先史時代に高度な文明があったのではないか」というのが著者が「神々の指紋」でピラミッドやマヤ文明の検証から証明した問い掛けであり、出版当時人類史上最高の文明を享受していると考えている現代人にはショッキングな内容でした。今回の問い掛けは人類がただ生きている状態から「文明」を持つに至ったきっかけは何だったのか、抽象的非現実的な啓示である宗教の元になったものは何だったのか、という問い掛けから、特定の薬物による幻覚が古今東西誰にとっても類似した内容を示すのは薬物によって脳内から本書のタイトルである異次元を覗く事ができるからではないかという考案を呈示しています。

「薬物でトリップして見ている内容が異次元の世界である」などという主張は何をアホな事をで片づけられてしまいそうですが、著者は大まじめである種「霊感」の強い人が見る幻覚や、古代から薬草の力を借りてシャーマン達が見てきた神の啓示といったものが現在の文明につながる動物から人への進化のきっかけだったと考えています。またアメリカで多発する知らないうちにUFOや異星人に拉致された記憶(催眠状態で思い出す)は古代の壁画や遺跡に残された異星人を思わせる形態と同類のものであり、ある種のトランス状態で見ているものは古代人も現代人も同じなのではないかと主張します。

私が思うには、脳科学的に見るとある種の薬物で古今東西で同じような幻覚を見る理由は、原初の昔から人類に遺伝的に伝えられている記憶をある種の薬剤が特異的に覚醒させるからだろうと推測します。本能が生きてゆく上で必要な生まれながらに持っている記憶であるとすれば、生きてゆく上で必須ではないために特別なことがない限り呼び起こされない遺伝的記憶も当然あるはずで、それらが特種な薬剤や状態で幻覚の状態で出てくるという説明もできると思います。

しかし著者はもう少し夢を膨らませて、ある種の薬剤によって脳内から確固として存在する異次元への扉が開かれるのではないか、と表現します。それは原初からの記憶と考えたとして、何故異星人のような容貌をした者や宗教的啓示のような幻覚を原初からの記憶として我々人類が持っていなければいけないのかの説明がつかないからです。

遺伝子の二重らせん構造を発見したワトソンは実は薬剤のトランス状態にあるときにこの構造を思いついたと紹介されています(ベンゼン環の発見も夢で見たとかだったが)。ある種の薬剤を使った時の幻覚はこの二重らせんを思わせる絡まった二匹の長い蛇であることが多いと言います。どうも生物化学の秘密の解明につながるような記憶を我々は元々持っているようなのです。著者はこれらの記憶は、生物を地球上に送り出した「何者か」が地球上の生物が進化して自ら文明や科学を創出するようになった時(現在のことか)に解明するよう我々に托した何らかのメッセージなのではないかと主張します。

これは面白い仮定だと思います。人類は動物も植物も含めてバクテリアのような原始的な生物から進化して出現したというのが現代科学の考え方ですが、アミノ酸や核酸を一緒にしたら自己複製や進化の能力を持った生物ができるということは証明されたわけではありませんし、確率論からゆくと自然発生的に生物が生まれることはほぼ永久にないとも考えられます。誰かが原始的生物を地球上に創造し、メッセージを残したとすれば「進化」は証明されているので人類にたどりつくことも納得できます。しかし生物を創造した「その誰か」はどのようにして生まれたのかという堂々めぐりの問が始まってしまうことにもなります。そこで「異次元」という考え(逃げかな)が出てくるのかと思います。

ウイルスやプラスミドのように必要最小限の核酸情報しか持たない物はどうなの、という疑問は残るにしても、信じている宗教の違いで戦争をしたり、地球が滅びても自分たちだけは助かると信じている人達がいたりして、結局は現世利益というか自分たちに都合が良いようにしか宗教を解釈していないのが現代人の現実と思われます。各宗教の教祖達や古代のシャーマン達が何を見て何を伝えようとして宗教が生まれたのかを、現在でも同様の「異次元」を見る方法で再度科学して、その内容をより人類が幸福になる方向に活用してはどうかと著者が提言しているのならば私は同意したいと思います。
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