Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

自民党の復活を支えた情報戦略

2016-09-01 00:27:52 | Weblog
民主党政権が発足した2009年、本書の著者、小口氏は下野した自民党のために、TVメディアに現れる論調を分析し、自民党の情報戦略を支えるプロジェクトを発足させる。当時、メディアに流れる情報のほとんどは民主党政権に関するもので、自民党は忘れ去られたも同然であった。

その後ソーシャルメディアに現れる世論のデータも分析対象に加わる。毎週のように小口氏と自民党の議員たちの間でミーティングが持たれ、世論を踏まえた情報戦略が検討される。全てがその結果ではないにしろ、最終的に自民党は政権を奪回し、その後の選挙に勝ち続けていく。

情報参謀 (講談社現代新書)
小口 日出彦
講談社


野党時代の自民党は、いかに民主党政権を攻撃するかに腐心した。メディアの論調や世論の動向をモニターし、相手方の弱点を探す。ただし、攻撃が効果的かどうかには様々な要因が絡む。タイミングも重要だ。敵方に失敗があっても、叩くのが早すぎると効果が小さくなる場合もある。

世間を騒がせる問題には一過性のものもあれば、残存するものもある。後者の例として普天間問題が挙げられていた。私はこれが民主党政権の躓きの石だと感じていたが、それが裏づけられた格好だ。こうしたことは世論のモニターを続けないとわからない。予断で行動することはリスキーだ。

このような情報への姿勢が、結果的に自民党の復活に貢献した。対する民主党は、同じような情報分析を行っていたのだろうか。分析はしていたが間違った結果を得ていたのか、正しい分析結果を得ていたがそれが行動に活かされなかったのか・・・。いずれにしろ、大きな差がついた。