著者の小林至氏は、東京大学からドラフトでロッテに入団した元プロ野球選手であり、またソフトバンクホークスの球団幹部として活躍されたこともあり、プロ野球ファンの間では有名である。現在は江戸川大学で教鞭をとる小林氏が、スポーツビジネスに関して概説したのがこの本だ。
小林氏は、プロ野球選手を引退した後米国にわたり、コロンビア大学でMBAを取得している。しばらく米国で働いていたこともあって、米国のプロスポーツやメディアの事情に詳しい。もちろん、本書ではオリンピックや欧州のサッカービジネスなど、広範な領域をカバーしている。
しかし、何といっても、ホークスの幹部であった彼が、日本のプロ野球の成長戦略をどう描いているかが興味深い点である。なぜ米国のメジャーリーグは、日本と比べて人口比以上に成長しているのか。テレビメディア市場の違い、自治体と球団の関係など、教えられることが多かった。
小林氏は1リーグ制論者で、ホークスに招かれたのも、そのことで巨人のオーナーであった渡辺恒雄氏の知己を得たことがきっかけになっているという。小林氏は日本のプロ野球をサッカーのような縦型のリーグ組織にして、アジアでの決勝大会を上位に置く仕組みを構想している。
そのことへの賛否はおいて、プロ野球ビジネスの現場に長く身を置き、ホークスの経営的な成功に関わった著者の発言には説得力がある。もちろん、カープファンの自分としては、別のかたちの成長戦略を模索したい。そのためのヒントになる情報も、本書で見出すことができる。
最後に私事になるが、気鋭の研究者たちと私が分担執筆した「プロ野球研究書」が数ヶ月後に刊行される予定だ。そこではファンの心理と行動、また選手の人事管理や球団の財務会計が扱われる。小林氏の著書が経営者目線だとしたら、その本はファン目線の本といえるかもしれない。
小林氏は、プロ野球選手を引退した後米国にわたり、コロンビア大学でMBAを取得している。しばらく米国で働いていたこともあって、米国のプロスポーツやメディアの事情に詳しい。もちろん、本書ではオリンピックや欧州のサッカービジネスなど、広範な領域をカバーしている。
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小林至 | |
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しかし、何といっても、ホークスの幹部であった彼が、日本のプロ野球の成長戦略をどう描いているかが興味深い点である。なぜ米国のメジャーリーグは、日本と比べて人口比以上に成長しているのか。テレビメディア市場の違い、自治体と球団の関係など、教えられることが多かった。
小林氏は1リーグ制論者で、ホークスに招かれたのも、そのことで巨人のオーナーであった渡辺恒雄氏の知己を得たことがきっかけになっているという。小林氏は日本のプロ野球をサッカーのような縦型のリーグ組織にして、アジアでの決勝大会を上位に置く仕組みを構想している。
そのことへの賛否はおいて、プロ野球ビジネスの現場に長く身を置き、ホークスの経営的な成功に関わった著者の発言には説得力がある。もちろん、カープファンの自分としては、別のかたちの成長戦略を模索したい。そのためのヒントになる情報も、本書で見出すことができる。
最後に私事になるが、気鋭の研究者たちと私が分担執筆した「プロ野球研究書」が数ヶ月後に刊行される予定だ。そこではファンの心理と行動、また選手の人事管理や球団の財務会計が扱われる。小林氏の著書が経営者目線だとしたら、その本はファン目線の本といえるかもしれない。