Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2016年の抱負

2016-01-03 02:51:00 | Weblog
昨年買ったピケティはまだ1ページも読んでいない。自分の研究にとって、それより最先端のジャーナル論文を読むべきかもしれない。だが、たとえばピケティを読みたいと思うのは、少年時代に抱いた、社会に対する漠然たる関心が自分に残っている証拠だろう。

社会について、あるいは人間について「大きな話」をすることがいかに難しく、少数の天才や碩学にしかできないことは承知している。読書に徹するほうが賢明である。しかし、自分の研究にも、そうしたフレーバーを加えたいという欲望を抑えることは難しい。

自分の土俵がマーケティング・消費者行動の研究であることには変わりないが、社会科学的に意味のある研究にしたいと思う。そこで足がかりにしたいのが、にわか勉強で心もとないが「文化資本」「社会関係資本」など社会学の概念を計量的研究に導入することだ。

昨年末のブログに、2015年の成果について記したが、実は大事なことを書き忘れていた。昨年の年頭に掲げた Aesthetics, Blindness, Complexity, Diffusion, Enthusiasm というキーワードである。いま挙げた研究は、そのうちの Aesthetics にあたる部分である。

身のほど知らずにも心理学的な分野にも興味がある。意思決定における意識と無意識の相克、つまり Blindness が、自分の研究テーマでいえばトレードオフ回避、そしてイデオロギーの研究と関連する。1月に選択実験を行うが、その後も実験や調査を継続したい。

人間心理を理解するという点では Enthusiasm、つまり熱狂の研究もある。今春のプロ野球研究本の出版が契機になって、研究の幅が広がり、ファンのデータだけでなく、選手のデータまで分析できるようになればと願う。そうなったら自分の「熱狂」も高まるだろう。

私は自然科学に対する知識も興味も乏しいが、その手法のマーケティングへの応用には関心がある。 そこで Complexity というキーワードが登場する。これまでの研究をさらに継続するほか、消費者行動への応用に関する書籍を、今年こそ書き上げなくてはならない。

では、本丸のマーケティングでは何をするのかというと Diffusion である。論文化急務の Twitter の伝播効果研究の次として「新製品の導入~普及の研究」という、古くて新しい研究テーマに取り組む。ありふれたテーマのようだが、実は未解決の問題の宝庫である。

たとえば、日本で短命な「新ブランド」の導入が繰り返されるのはなぜか。米国のケースと比較することで、一般性のある知見を獲得できるかもしれない。消費者に新製品の成功-失敗を予見させるという、ずっと以前に行った実験を新しい視点で見直したいとも思う。

ということで、いろいろな思いを胸に秘めつつ、今年も仕事を進めていきたい。