Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

映画に見る危機の中の身体/世界

2012-01-14 23:03:34 | Weblog
本日明治大学リバティホールで「映画に見る危機の中の身体/世界」と題する映画祭+シンポジウムが開かれた。メインは世界中のショートムービーの上映会であり,シンポジウムのようだが,ぼくは夜の部のみ参加した。そこで東日本大震災に関する映像が上映されるというからだ。

満席だったら困ると思って直前のセッションから顔を出した。それは「琴姫 & MAHARI GIRL'S」 のチャリティーコラボ。琴姫さんは年齢不詳(?)の女性シンガーだが,MAHARI GIRL'S は小中学生の少女ユニット。彼らが狭い教壇で歌って踊るのを見るのは,少し不思議な体験だった。
このコラボの出番が終わると,観客のかなりの部分が入れ替わった。ビデオを回していた大人たちは少女たちのファンだったのか,それとも家族だったのか・・・。
海外の研究者のビデオメッセージのあと,木之村美穂氏が震災の被災者を取材して撮った「Three Eleven 記憶の中で」というドキュメンタリーが上映された。木之村さんは CM ディレクターとして活躍されてきた方だが,東日本震災の直後に居住されている LA から帰国された。

木之村さんは被災地のボランティアに参加,一人でカメラを回して取材を続けた。映画では5人(4組)の被災者の方々の証言を,時折印象的な映像を挿入しつつも,淡々と紹介していく。悲しみを秘めつつ前向きに生きようとする人々の姿に,人間の強さを感じて感銘を受ける。

最後の証言者は福島・亘理町の男性。幼い子どもを2人失うという悲しみのなか,地元で遺体の捜索にあたってきた。気丈に語る男性だが,いま一つだけ叶うとしたら何を望むかという最後の問いに,子どもの声をもう一度聞きたいと答える。目頭が熱くなるのを抑えられない。

そのあと上映された,東京大学が開発した全方位カメラによる震災の記録は,技術の可能性を知るという点で興味深かった。Google のストリートビューと同様,このカメラは前後左右と上方の映像をすべて記録する。これを載せた車で東日本大震災の被災地を縦断したのである。

今日上映されたのはその一部だが本邦初公開だという。映像の流れがカクカクしており,見ていると疲れる。なぜそうなるかというと,膨大な情報量なので,現状では間歇的に情報を保存させるしかないためようだ。ただし,CG 技術を適用すればもう少し見やすくなるという。

この技術を用いれば,ある環境の出来事をすべて映像として保存しておき,あとで必要な部分を切り出したり,その環境に擬似的に没入したりできる。街並みの記録といったこと以外に,たとえばスポーツをこうしたカメラで記録しておくと,従来にはない映像が作れるのではないか。

なお,この映画祭+シンポジウムは,明治大学政経学部のシドウイッツゼミナールが主催したとのこと。世界中から映像を集め,有識者を集め,ポスターやホームページを制作して集客し,当日の運営を仕切るという全プロセスを1つのゼミで行ったというのは凄いことだ。