ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/07/27 歌舞伎座千穐楽夜の部①若手パワー炸裂の「夏祭浪花鑑」

2009-08-14 23:59:57 | 観劇

コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」は見ていないが、ニューヨーク公演をNHKの録画で観ている。
それで予習して観たのが2006年5月に新橋演舞場で吉右衛門主演の「夏祭浪花鑑」
歌舞伎座で観るのは初めてだが、そんなに期待せずに観始めたところ、「碇床」の暖簾の碇の絵に「海神別荘」で美女が括られた碇との連鎖に気づき、一気にテンションアップ!

【夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)】三幕
序幕・住吉鳥居前の場より大詰・長町裏の場まで
あらすじは演舞場の記事を参照いただく。
今回の配役は以下の通り。
団七九郎兵衛=海老蔵 お梶=笑三郎
一寸徳兵衛=獅童 お辰=勘太郎
玉島磯之丞=笑也 琴浦=春猿
釣舟三婦=猿弥 おつぎ=右之助
三河屋義平次=市蔵 下剃三吉=巳之助           

澤潟屋一門の若手がこういう芝居をやっているのがまず嬉しい。笑也の玉島磯之丞が予想以上によかった。まずちゃんと武家の若様然としていて、さらにあちこちで女の方が放っておかないで色恋沙汰になってしまう男という感じがちゃんとした。そのため琴浦がやきもちを焼いてじゃらじゃらするという場面に説得力あり。春猿の琴浦とのバランスもよい。主筋だからというだけでなく、この可愛い二人をなんとか添い遂げさせようと団七たちが奔走するのも心情的に納得してしまう(^^ゞ
猿弥の恰幅のよい釣舟三婦もまたよかった。「碇床」の下剃の三吉の巳之助が痩身なのでデブヤセコンビで三婦のつけている褌をはずして渡す場面のチャリ場が面白かった。

牢から出された団七の髪が伸びているのはわかるが、眉毛までボウボウなのはヘンだと思うがそこはメリハリを利かせるための誇張らしい。浴衣に着替えて男を磨いての再登場でいい男だねぇと心底思わせる憎い芝居である。海老蔵はまさに溜息の出るいい男っぷり。
琴浦を横恋慕する大鳥佐賀右衛門に雇われて獅童の一寸徳兵衛が琴浦奪還に登場。喧嘩の場面も若いパワーがぶつかりあって観ていて気持ちがいい。住吉大社の制札を振り回す二人。そこを茶店の看板で取り押さえるお梶の笑三郎がきりっと締めるのがまたいい。
海老蔵の団七の子どもと父と子の情愛を見せる場面。「すし屋」の権太でも子どもに優しくする役がいいと褒めたが、今回もいいなぁと思った。

三婦の家に訪ねてくる徳兵衛の女房お辰。福助のお辰はあまりいいと思えなかったので勘太郎はどうかと内心ハラハラしながら観たのだが、「三婦さん」と呼びかける台詞もくずれることなくホッとした。あまり色気たっぷりという感じはしないのだが、気風のいい女を気持ちよく見せてくれて嬉しかった。

三婦の女房のおつぎの右之助は、三婦が男気を売っているのに惚れて一緒になった気持ちを年老いた今も持ち続けているようで、夫がもう喧嘩をしないと誓った数珠を切って若い者どもを相手に立ち回るのを血をたぎらせていて、可愛いいったらなかった。私自身は相撲を除く格闘技には全く関心がないし、男が闘争本能をむき出しにして喧嘩したりする姿にも心が動く方ではないので侠客の妻たちの気持ちは全くわからない。それにしてもそういうのに心が動く女もいることはわかる。まぁ、婆になってもそういうところは変わらないというのが人間なのかもと思ったりもする。

団七の舅三河屋義平次の市蔵がまた予想以上に嫌らしくてよい。思いっきり下卑た男で金への執着がすごい。その娘といつのまにか深い仲になってしまって夫婦になっているという弱みもあるし、何をされても下手にでる団七の気弱い声もまぁこれなら許容内。それがはずみで舅を斬ってしまってからの殺し場が見ごたえあり。こういう大きな目をむき出しにして狂気を爆発させ、見得を極めていく様式美を歌舞伎座いっぱいに圧倒するパワーは海老蔵ならではだと思う。さらに、正気に戻ってから「悪い人でも舅は親」と悔やみ悩む姿にも威力あり。

最後の祭りの場面。コクーン歌舞伎ではだんじりのお囃子だったし、吉右衛門は自分の肌に合う江戸のお祭りのお囃子を使っていた。今回は「チョーヤサー」という掛け声の上方のお囃子。今回のお囃子が正統派なのだろうか?

殺し場から祭りの雑踏に紛れての逃走。観ている方で団七への思い入れが強くなったところでの幕切れ。なかなかうまくできた芝居だとまたまた感心して幕間へ。

写真は千穐楽の垂れ幕のかかった歌舞伎座正面を携帯で撮影したもの。次はいよいよ「天守物語」で七月大歌舞伎の感想アップを締める事にしたい。
7/25昼の部①勘太郎と獅童の「五重塔」
7/25昼の部②今回の「海神別荘」で見えたもの
7/27鏡花を軸に七月大歌舞伎のイメージの連鎖