ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/10/12 浅草でミニオフ会④平成中村座で残念だったこと

2008-10-13 23:59:59 | 観劇

平成中村座の観劇も今回が初体験の私。「仮名手本忠臣蔵」Bプログラム(当初Cと書いていたが訂正m(_ _)m)は大変に面白く観ることができて満足して打ち出されてきた。
写真は観劇後の浅草寺五重塔のライトアップが綺麗だったので携帯で撮影したもの。浅草寺は本堂落慶50周年ということもあり、本堂も何色もの布の飾り付けがされていていつもより賑やかだった。それも夜が更けると静まり返り、観劇帰りの人達がシャッターの閉まった仲見世通りを帰路を急いでいた。

ただし、気になったことがあった。浅草名物の遊園地「花やしき」に隣接して建てられていた仮設劇場だったために、芝居が盛り上がっている場面で絶叫マシーン(散策の時にフリーフォールの遊具が近くにあって私は怖いので目をそむけていた)に乗った人々のキャァ~という喚声が聞こえてきたのだった。それも何度かあってその度に仮設小屋だったっけと現実に引き戻されてしまった。

演目が「仮名手本忠臣蔵」だけにこの喚声が入ってしまうことはかなり残念なことだった。
今回ご一緒した方に「義経千本桜」の時は別の場所に建てられていてそういうことはなかったということをお聞きした。そこでネット検索で調べたところ、隅田公園に建てられていたということがわかった。
ウィキペディアの「平成中村座」の項はこちら
どうやら何かの祭典などに連動した企画の時は浅草寺境内に建てられるような感じがしたが、演目による配慮なども必要ではないかなぁと思えた。
どうしても浅草寺境内でせざるをえないのであれば、防音効果の高い壁材を加えるとか、何か対策が必要だと思う。

10/12浅草でミニオフ会① ②「浅草奥山風景」 ③芋ソフトと緒形拳さんの手形
それと以下、お詫びを申し上げたいm(_ _)m
当初「浅草でミニオフ会③」の記事の最後に「次はいよいよ観劇の感想へ続く」と書きましたが、本格感想は先にさせていただきます。
3連休最後の体育の日の今日は布団を干したり写真の整理をしたり、夕方から妹2の家に妹1夫婦が来ているところに合流したりして疲れきってしまい、気力体力の限界にきてしまったためです。
いただいているコメントのお返事も遅れていますが、なるべく早くさせていただくということでご容赦くださいませm(_ _)m

08/10/12 浅草でミニオフ会③芋ソフトクリームと緒形拳さんの手形

2008-10-12 23:59:27 | おでかけ、旅行

ミニオフ会も午後4時に散会し、平成中村座の「仮名手本忠臣蔵」Cプログラムが午後4:45開演なのでしばし自由行動。
私は浅草公会堂の脇を通って平成中村座までぶらぶらしながら、何か甘いものを食べようとキョロキョロと・・・・・・。行列ができている店で新春浅草歌舞伎でお土産を買ったお店の隣のマークしていたところだと思い出す。
満願堂の芋きんを買う人たちの行列だった。私はそこの「いもソフトクリーム」に決めた!ソフトクリームは行列しないでいいと確認し、GETして店の幟の前で撮影。
写真ではうまく写っていないがバニラと焼き芋味のクリームがミックスになっている。焼き芋味の焼き菓子がささっているのもまた美味!向かいの舟和の抹茶ソフトには誰も並んでいなかったのでこちらの方が人気があると思われる(^^ゞ

浅草公会堂前の名物、有名人の手形コーナーに白い花が備えてあった。緒形拳さんの手形のところだ。今年の3月に加わった何人かのおひとりだった。浅草名物の観光人力車が何台も通りかかって、白いお花のあるところが緒形拳さんの手形だと解説していた。
手形に私の手を入れてみたが、やはり大きな手だった。中指のところで1.5㎝くらいは長かったと思う。ちなみに梅沢富美男さんの手形にも私の手を入れてみたら、なんと同じくらいの大きさだった。
緒形拳さんの芸名はご自分でも恥ずかしがっている大きな手が特徴なので「拳(こぶし)」とつけたが、みんな「けん」と読むのでそちらの読みになったという。本当に大きい手だった。きっとあったかい手でもあったんだろうな。

④へ続く。

08/10/12 浅草でミニオフ会②「浅草奥山風景」

2008-10-12 23:48:43 | おでかけ、旅行

平成中村座近くに特設の「浅草奥山風景」の散策もしようと早い時間に集まったのだが、銀座線の浅草駅に降りてからポスター(写真)でようやくわけがわかった(^^ゞ
浅草寺本堂落慶50周年・浅草観光連盟創立60周年ということで「浅草大観光祭」が10~11月に開催され、平成中村座の2ヶ月の公演も「浅草奥山風景」も江戸東京博物館の「浅草今昔展」もすべてこの企画の一環だった。

食後に「浅草奥山風景」もブラブラする。上記サイトよりご紹介。
「浅草寺西側一帯は通称奥山と親しまれ、江戸時代から大道芸や見せ物小屋が並び盛り場浅草発祥の地でありました。その場所に江戸時代さながらの町並みを再現し江戸小物、版画、玩具、提灯、指物、手拭い等の見世が六十店余並び赤毛氈の茶屋が現れます」
ネット検索すると、今年だけの取り組みではなく、折りにふれて開催される取り組みのようで、そういう積み上げを感じさせた。
5年前の「第5回浅草奥山風景」紹介のサイトはこちら
「中村屋グッズのお店」もあって、勘太郎主演の映画「禅」のチラシも置いてあったのでしっかり貰ってきた。来年1月松竹系で封切りとのことで、勘太郎が道元の役で主演している。これはしっかり観ようと思う。
③へ続く。

08/10/12 浅草でミニオフ会①電気ブランは飲めず!

2008-10-12 23:37:08 | おでかけ、旅行

浅草でランチのミニオフ会。かつらぎさん、玲小姐さんと私の3人で銀座線浅草駅近くの神谷バーで待ち合わせ。ところが1階のビアホールも2階のレストランも満席で、しばらく空きそうにないので電気ブランはあきらめた。浅草寺本堂落慶50周年の浅草大観光祭の最中ということでいつもの週末より混んでいるらしい。
浅草だと天麩羅か蕎麦というのが定番らしいが、ぶらぶらしながらお店を探し、2階にある焼肉屋さんに入ったら、正解だった。
「江戸前焼肉 岡本」
1200円の焼肉御膳(写真)を焼きながらいただく。付け合せのおかずも美味しくて満足。帰宅後にネット検索したら、こだわりのお店だったらしい。運がいい!

最近観た歌舞伎やストレートプレイなどの話題に花を咲かせた。楽しい時間を過ごせたことに感謝m(_ _)m
その後、「浅草奥山風景」の散策までで帰る玲小姐さんを送り、「平成中村座」の「仮名手本忠臣蔵」Bプログラム観劇の予定。
②へ続く。

08/10/11 緒形拳さんの追悼番組、ドラマを観た

2008-10-11 16:05:36 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

緒形拳さんが10/5に亡くなっていたことが10/7に公になりTVやネットニュースにしばらく目が離せない状態になっていた。
最後の出演ドラマ「風のガーデン」も10/9の初回にしっかり観た。
そして昨晩のNHKの「帽子」再放送と追悼番組。2つの番組の間に急いでお風呂に入ったが追悼番組の冒頭が少し欠けた。それでも両方をしっかり観た。
■広島発特集ドラマ「帽子」
実は「帽子」の今年の夏の放送の際の予告編で田中裕子さんとのバランスが悪いなぁと思ったので、それほど強く観たいと思えず何かにとりまぎれて観なかった。今回観てみてそのバランスの悪さはやっぱりなぁという感じがしたが、緒形さんをしっかり見せていただいた。
大河ドラマ「風林火山」で謙信の軍師になった宇佐美役を緒形さん健在という感じで観ていたので、「風のガーデン」「帽子」もともにかなりおやつれなっている姿だった。今になって観ているせいか、抗がん剤も使われずに最後まで自然なお姿で俳優ができる生き方を選ばれたことがわかるお姿と拝見。痛々しさよりもその毅然とした精神がみてとれる雄姿として見る事ができた。
老いてもなお飄々と自分の仕事に誇りを持って生きていく男が見せる優しさの魅力があふれていた。いい仕事を最後までできて幸せな役者人生を送られたんだなぁと思えた。

■「名優・緒形拳さん逝く」
以下、NHKのサイトより内容を紹介。
「緒形拳さんが出演した大河ドラマや、津川雅彦さんと共演した「破獄」など、NHKのドラマを中心に振り返ります。スタジオには、緒形拳さんにゆかりの方々を招いて思い出を語っていただきます。
【出演】池端俊策 津川雅彦 緒形幹太 緒形直人 ほか
【司会】加賀美幸子
メインに飾られた大きな笑顔の写真は、多分みずほ銀行のポスターになっていたものだと思う。銀行で見かけた時にいい笑顔だなぁと見とれたことを思い出した。
大河ドラマ「峠の群像」のナレーションでご一緒されたという加賀美アナウンサーが的確な司会をされながらも思いがあふれる様子にも胸が熱くなる。
共演された方へのインタビューでは、「風林火山」で共演のGacktが「初めてこの人に誉められたいと思った」「この人には甘えていいんだなと思えた」と語りながらあの美形のお顔に涙を流していたのが一番印象的だった。きっとプライド高くつっぱって生きてきたであろうGacktの心も融かす「あったかい」お人柄だったのだろうと思えた。
スタジオ出演の親友だったという津川雅彦のエピソードからは共演したことで親友になったという緒形拳という役者・人間の魅力がよくわかった。
「(役者という)チャラチャラしたことをやっているんだからこそ本気でやらなくちゃいけない」というその本気モードの魅力!父と同じように役者になった息子たちから語られる父・役者の緒形拳の姿にも胸を打たれた。
本気で役者人生を送るというその強い精神を固持した生き様が浮かび上がった追悼番組だった。写真は番組でも飾られていた出世作の大河ドラマ「太閤記」の秀吉での写真が載っているDVDの画像。
緒形さんの公式HPはこちら
何回も目頭が熱くなってしばらく頭がさえて眠れずに3時半頃ようやく寝る気になった。だから起きたら12時半・・・・・・。

これから実家に顔を出しに行こう。そして明日は平成中村座「仮名手本忠臣蔵」Cプログラムへ。私もマイペースで日々を送っていこう。

08/10/10 植物の世話?(笑)

2008-10-10 23:58:36 | つれづれなるままに

私の職場(資料室)の同僚が書架の床の補強のための段差を降りる時に捻挫をして9月下旬からずっと休んでいる。相当腫れて内出血もひどくギプスをするくらいだったようなので渋谷にいるマネージャーから労災の手続きの声かけをしてもらった。うちの職場は身体を動かす現場の少ないところなので労災といってもピンとこない管理者も少なくなく、健康管理者に確認してようやく手続きの必要性がわかったらしい。とにかくそれでゆっくり休んでもらっている。4月から定年後再雇用で嘱託になった方が増員になっていて助かった。2人体制のままだったら私一人で昼食の交替もできずに困っただろう。
さて、お休みされているのが一週間を過ぎた頃からハッと気づいたことがある。彼女は植物が好きで執務コーナーのあちこちに鉢植えを自分で置いているのだ。植木業者との契約の大きな鉢も含めて週末にいつも水やり作業をしていたのを思い出した。一番弱い葉物の鉢の緑の葉が黄色くなったのが目に入って気がついたのだ。

あわてて水やり作業を始めたが、桶でやったら回りに水がこぼれて困ったので頭をひねったら閃いた!2リットルのペットボトルで水をやろう。マジックで「捨てるな!水やり用」と書いたものを一つ用意して毎週の週末に水やり作業をがんばっている。私自身はサボテン女だが、復帰した彼女が悲しむのも可哀相なのでまぁ週一回くらいのことだし、やれるだけのことはやっていこう。

次は天敵との戦い話。職場の近くのJRの線路脇の金網のところに私の花粉喘息のアレルゲンのカナムグラが蔓を伸ばしてはびこっている。昼休みに食事に出る時にいつか鋏で蔓を切ってやろうと思いついたが夏の暑い盛りはやる気も出ず。しかしホップの実と似た形の実がいっぱいついているのを見て、種が熟す前にやっつけてやろうと決意。
先日、昼休みに鋏を持って出てギタギタにしてやった。残骸は家から持っていった大きなごみ袋に入れて職場のビルの外のごみ置きへ。
もっと育つ前にやればよかった。そうしたらもっと少なくてすんだのにと来年の征伐作業は7月くらいでやろうと決意。

3つめは我が家の鉢植えの救済話。4年前にマンションを買った時には観葉植物やらベランダの鉢植えやらを揃えてみた。一時期はせっかくのパキラの大きな鉢を根腐れさせるくらい張り切って水をやっていた。
ところが喘息発症後は水やりを忘れることも多くて、ポトスなどはしおれたり復活したりを繰り返すうちに葉が半分くらい歯抜け状態で惨めな姿になっている。ベランダにあった多肉植物を部屋に入れてせっせと水をやっていたら夏場のエアコンの冷風も影響したのか融けてしまってだめにした。残ったベランダのアイビーも小さい鉢に植えた1本がどうしても水やり忘れのせいで大きくならない。

そこでカナムグラとの戦いの最中にちょうど何やら空いているスペースがあったことを思い出し、家からシャベルとともにそのアイビー1本を植え替えさせてもらった。写真が移植後のそのアイビー。江戸城の外濠の石垣には元々アイビーがいっぱい這って茂っているのでそのお仲間に加えてもらった次第。元からのは大きな葉で小さな葉で三方に伸びている小さなヤツが我が家からの新参者である。もし枯れてしまっても我が家にいて寂しく枯れるよりはお仲間に負けて枯れる方がいいに違いない。

08/09/27 「人形の家」一生懸命の女ノラ!

2008-10-09 21:33:05 | 観劇

新潮文庫の「人形の家」で予習中、面白くて帰宅途中で電車を乗り過ごした。
そして観劇当日、しっかり泣いた。反芻して感想を書いていこう。
【人形の家】
作:作:ヘンリック・イプセン 演出:デヴィッド・ルヴォー
英訳台本:フランク・マックギネス 翻訳:徐 賀世子
今回の主な配役は以下の通り。
宮沢りえ=ノラ・ヘルメル 堤真 一=トルヴァル・ヘルメル
神野三鈴=クリスティーネ・リンデ夫人
山崎 一=ニルス・クロクスタ 千葉哲也=ドクター・ランク
松浦佐知子=アンネ・マリーエ(乳母)
明星真由美=へレーネ(メイド)

コクーンではお馴染みになっている四方を客席が囲む舞台。私はいつもの舞台の奥側席での観劇。白い幕が半ば透ける中にヘルメル家の居間があり、開幕前から3人の子どもたちが声を上げてボール遊びをしている。
幕がサッと除かれると部屋の中央に黒い帽子と外套をつけたモデルのような女が立っている。宮沢りえのノラの最高に印象的な登場。舞台も廻り出すし、オルゴール人形のイメージでの開幕?!
動き出したノラは本当にイキイキしていた。夫に隠れてお菓子のマコロンは頬張るは、クリスマスを最高のものにしようと飾り付けやらプレゼントやらに張り切るやら。夫ヘルメルはノラに呼びかける、「ヒバリさん」「リスさん」「小鳥さん」。ノラは精一杯に夫の気に入るように振舞う。自分を愛してくれる夫に対して理想の妻として理想の母親としてありたいと一生懸命だ。

10年くらいぶりに幼馴染のクリスチーネが尋ねてきて、会わなかった間のお互いのことを話すうち、ノラが夫の転地療養のために夫に隠れて借金をしてやりくりをしながら返済をしてきたことが明らかになる。父親の死と夫の病気と長男の出産が同時期に重なり、お気楽な奥さんのように見えたノラだが、実は窮地を一生懸命乗り切ってきたことがわかったのだ。

弁護士である夫が銀行の頭取に就任したことで一気にその苦労も無くなるはずだったのだが、その銀行に夫の学友クロクスタがいたことからドラマが動き出す。
クロクスタは数年前の不正行為をもみ消したため、夫は銀行から追い出そうとしていた。クロクスタはノラに免職にならないように口利きを頼んで拒否されると、ノラの不正行為=偽署を指摘して圧力をかける。クロクスタはヘルメルが小心者だということを知っているのでこのネタの力を確信し、ノラは夫が妻を守るために名誉を捨てるだろうと信じている。この二人が抱くヘルメルの人物像のギャップ!どちらが本当なのか?

脊椎結核にかかっているランクは杖つきでいつも大儀そうだが、ヘルメル家に親しく出入りしている。ノラの明るさに救われているのだろう。クリスチーネに疑われると夫には嫌がられる話をしないようにするが、ランクには遠慮せずにいろいろ話せるのだと説明。夫との関係の微妙さも明らかになる。

クロクスタに次第に追い詰められていくノラ。クロクスタがしたことも偽署であり、それが犯罪行為になるとわかってうろたえるノラ。ノラは世の中のことを知らなさすぎた。夫の犠牲的行為から夫を救うために自殺という選択肢をとれるかどうかという話までするふたり。

ランクは病気の進行と結核菌が脊椎にカリエスを起こしたら入院し、ひとりで死んでいく覚悟をノラに告げる。さらに死ぬ前にノラに愛を告白する。ノラは口に出したことを責めるが夫とは違った一緒にいたい人だったと話す。ランクはその言葉をすぐには理解できないが......。
クロクスタが全てを記した手紙を持ってきて死の覚悟を固めたノラ。手紙は鍵付の郵便受けに入れられた。死へのカウントダウンが始まる。
一方、クロクスタとクリスチーネが不幸な別れとその後の辛い年月の末の再会だったこともわかる。家族のために自分を犠牲にしたクリスチーネが生き甲斐となる家族がいなくなった時、再び愛する男を支え支えられたいと申し出る。現実の荒波にもまれた男女の再生のドラマがここにある。

クリスマスパーティでカプリ娘に扮してタランテッラを踊ったノラ。夫はその姿に情欲の焔を燃やして迫るが、ランクの訪問が邪魔をする。
ランクにくるべき時がきたのだ。最後の楽しい夜を過ごした後で懐かしいヘルメル家に別れを告げるランク。その死出の覚悟を悟ったノラが想いをこめて「ゆっくりお休みなさい」と言い、同じ言葉をかけてもらう。“私が先に逝って待っているわ”という想いをこめた眼差しを感じて目頭が熱くなってしまった。この世でランクの想いに応えられなくても死後の世界では一緒にいようという意思表示。ランクはその想いに気づいたかどうかはわからないが。

そして待った奇蹟!その奇蹟は起きなかった!!手紙を読んだ夫は取り乱し妻を犯罪者呼ばわりしクロクスタのいいなりになるという。自分が死をかけてまで守ろうとした男の中の男はそこにいなかった。クロクスタの言う通りの小心者という実像がノラにも見えてしまった。幸福を得たクロクスタが借用書を返してくれた時、夫は妻を許すという......。

ノラは夫に初めて真剣に話し合うことを求める。自分が思い込んだ姿で夫を愛していたことに気づき、本当の姿を知った今は他人だと言い放ち、恥じる。きちんと自分と社会のことを知るためにこの家から出ていくことを夫に告げる。今のままでは子どもを育てる資格がなく、自分より優れた乳母に任せることを選ぶ。こうしてノラは翔んだ。
その力となったのは死を覚悟したことであり、ランクの死を前にした本当の愛情の言葉であり、苦労したクリスチーネの友情からの支えだったのだと思う。そしてその飛翔のための資質は元々ノラにあったと私は思う。ノラはいつでも一生懸命だ。自分が愛した父親や夫の期待に沿う様に一生懸命だったし、家庭もやりくりしながらも気持ちのいいものにするように一生懸命だった。そのテンションの高さが魅力であり、夫もランクも引きつけたのだろう。
しかしながら本当のことに気づいた時、ノラは一生懸命きちんと向かい合い、決断したのだ。生きるエネルギーの高い人間はこういう変化を遂げることもできるという励まされるドラマ!

一方のヘルメルは妻の愛を失ったことに呆然とする。その理由を聞き出すが、兄と妹のようにでも一緒に暮らしたいと言う。全て拒絶されても復縁の可能性を聞き出そうとする。「ふたりがすっかり変わったら」という奇蹟が起きたらとノラは言う。
観ている私が、果たしてその奇蹟は起きるのだろうか、難しいだろうなぁと思う中、ノラは私の側の通路を通って扉の向こうの眩しい光の中に消えていった。

全キャストが素晴らしく、ルヴォーが描き出したかった「人形の家」の人物像そのものになっていたと思える。特に宮沢りえのノラは華奢な身体の全身からエネルギーをほとばしらせている。人間的に未熟な時から一生懸命に生きる女の魅力がキラキラとあふれ出し、その力こそが大きな飛翔の原動力になっていることに説得力をもっていた。宮沢りえは映画でも舞台でもその大きな目だけの魅力ではなく、まさに細身の全身から振り絞るようなひたむきさで生きていると感じさせる、そういう女優だと思う。
映画「天守物語」で玉三郎に抜擢されるのもむべなるかな。映画「父と暮せば」の美津江もけなげでよかった。舞台の「NODA・MAPロープ」のタマシイも「ドラクル」のリリスも素晴らしかった。
今回のノラも宮沢りえを得て、19世紀末にイプセンの創り出したノラが21世紀のノラとして普遍的な人物像を結んだような気がする。ノラは実に眩しく魅力的な人間だった。

写真は今回公演のチラシ画像。

08/10/08 職場の近くの変化を2つ

2008-10-08 23:41:22 | つれづれなるままに

私の家の職場はJR四ツ谷駅近くの千代田区側にある。JRの線路を陸橋で超えていくと新宿区。左手には駅ビルの「アトレ」があり右手には「新宿区設四谷見附小売市場(四谷グリーンマーケット)」があり、道の左右の施設があまりにも違うなぁと思っていた。写真はその看板。
新宿区設の小売市場というだけに、各地に公設市場が出来た昭和40年前後?の頃の遺物かなぁと推測していた。人事異動してきてすぐの頃にも閉店しているスペースの方が多かったが、1階にはお茶屋さんや電器屋さん、瀬戸物屋さんが、地下にはお弁当屋さんや洋食屋さんがあった。洋食屋さんで一回だけスパゲティナポリタンを食べたが、あまりにも施設が古く暗いので二回目はなかった。瀬戸物屋さんの閉店処分セールを覗いたこともあったっけ。
地下のお弁当屋さんもいつの間にか閉店したようだと思ったら、今日の昼休みに陸橋を渡った時、工事の人がベニヤ板で入り口を塞いでいたのを目撃。そして「解体工事」の掲示板が貼られていたついに撤去されるんだなぁと時代の変化を痛感。
後にはアトレ第二ビルでも建つのかしら?
(追記)解体工事のところに「アスベスト撤去作業中」の掲示もあり、そういう必要性もあったようだ。

もう一つの変化を感じたのは10/1より営業再開した「スクワール麹町」。2階のレストランと7階のラウンジはランチタイムは完全に禁煙になった!2階のランチはおいしくないので行かないのだが、7階のラウンジは丼物限定のランチで海鮮丼や月替わりの丼(今月はホタテとしらす丼が美味し!)を月に一回くらいは食べに行く。早番のお昼の時に喫煙者が多い日には辛かったのでとても有難い。

よく食べに行く1階の喫茶室は該当しないのだが、やはりコーヒーと煙草はセットという感覚なのか。ランチタイムをはずすと煙草濃度が高くなくなるので遅番のお昼の時に行くようにして自衛している。

08/10/07 十月の観劇予定、ほかいろいろ

2008-10-07 23:59:08 | 観劇

6/27の記事に書いた職場のお隣のビル「スクワール麹町」が外壁工事のため休業して3ヶ月、ようやく10/1から営業を再開。昨日さっそく1階の喫茶で定番の「皿うどん(デミタスコーヒー付)」を食べてきた。そして今日はその代わりに開拓した(笑)日高屋の「野菜たっぷりタンメン」(サービス券で味付け玉子半額つけた!)を食す。コンセプトは「外食で野菜を多く摂ること」!でも麺類が続いたので明日は御飯ものにしようっと。

さて、今月の観劇などの予定は以下の通り。
12(日)平成中村座「仮名手本忠臣蔵」Bプロと「浅草奥山風景」散策(ミニオフ会付)
17(金)東京グローブ座:「サド侯爵夫人」篠井×加納の現代女方の激突~?(当初PARCO劇場と書いていたのは間違いm(_ _)m原作もセブンイレブン取り寄せでGETしたのでちゃんと読んでから観る予定!)
19(日)さいたま芸術劇場:蜷川シェイクスピア「から騒ぎ」
20(月)職場の厚生企画で高尾山散策というより美味しいもの食べに行く~(笑)
26(日)歌舞伎座千穐楽で昼の部と夜の部の通し!

今月は前進座歌舞伎「解脱衣楓累(げだつのきぬもみじがさね)」もある。浅草公会堂での公演は2500円の席もあるし、なんとか日程を調整して行きたいと思っているのだが・・・・・・。

秋の花粉喘息シーズンに入ってしまった。花粉アレルギーの減感作療法もすすんでいるので昨年よりもまだラクなような気がする。スギ花粉を薄めたものを注射しているのだが、秋の花粉の時期でも効果があるのかを尋ねたところ「不思議と効くんだよなぁ」と先生が言っていた。そう言われればそういう感じがする今日この頃(^^ゞただし、通常の濃度の百分の一からスタートしなければならなかった私(T-T)今でもまだ通常の十分の一とのこと。道は遠い。

今日のいろいろ。
①緒形拳さんの訃報に嘆息。本当にいい役者だったのに残念。長年の俳優仲間の津川雅彦に「本当にカッコイイ最後だった」と言わしめた。コクーンでの「白野弁十郎」を見送ってしまったのを後悔。最後のTVドラマはもちろん、映画作品などをちゃんと観てみたい。ご冥福を祈るばかり。
②王監督の最後の試合
監督を辞めてユニフォームを脱ぐ。WBCで王JAPANが世界一になった時に嬉しくて思わず記事アップしてしまっていたが、それから2年半。ガンの手術から復帰された時も嬉しかったっけ。私には長嶋さんより王さんでした。50年間お疲れ様でした。ずいぶんと痩せられたのが心配ではあるけれど。
③ノーベル物理学賞に日本人3人が同時受賞
ずいぶんと前の研究で今年の授賞となったようだ。二人の共同研究に授賞するならその師匠格の方もという感じで3人になったんじゃないかと勝手に推測。
日本の子どもたちの科学離れ、学力低下が憂慮されている昨今に刺激になるかもしれない。しかしながら小手先の対策ではなく、大人の社会にこれだけ余裕がないと子どもたちも希望がもちにくいということへの抜本対策こそ必要だと強く思う。

08/5/26 実盛つながりで遅まきながら「わが魂は輝く水なり」アップ!

2008-10-06 23:58:03 | 観劇

9月演舞場歌舞伎で海老蔵の実盛を観て、5月に観て感想未アップの「わが魂は輝く水なり」についてもいろいろと考えた。7月に途中まで書きかけて放置いていた草稿に手を加えてアップしておこう。

清水邦夫作品×蜷川幸雄演出の上演が続いている。「幻に心もそぞろ狂おしの我ら将門」「タンゴ・冬の終わりに」を観た。特に「~将門」はすごく気に入った。歴史劇的な世界として描いているのが私の好みに合うのかもしれない。ということは源平の物語の世界として描いた今回の作品もきっといいに違いない。清水邦夫が80年に発表、劇団民芸で初演、宇野重吉が主演したという。
歌舞伎の「実盛物語」で御馴染みの斎藤実盛(史実では1111年~1183年)が主人公というわけだ。その実盛を野村萬斎。尾上菊之助との共演はもうないだろうと蜷川幸雄もいうくらいの贅沢な配役。といいつつ倹約モードのため、コクーンシートをGET(その苦労はこちらで)。音羽屋贔屓のさちぎくさんを初めてシアターコクーンにお迎えして(笑)、玲小姐さんと3人並んでの観劇。

【わが魂は輝く水なり-源平北越流誌-】
蜷川幸雄以外の主なスタッフは以下の通り。
美術:中越司 照明:大島祐夫
衣裳:小峰リリー 音響:友部秋一
出演者は以下の通り。
野村萬斎、尾上菊之助、秋山菜津子、大石継太、長谷川博己、坂東亀三郎、廣田高志、邑野みあ、二反田雅澄、大富士、川岡大次郎、神保共子、津嘉山正種

物語の概略は以下の通り。
「実盛物語」で助けた木曽義仲が成人して後の源平合戦の最中が舞台。斎藤実盛(野村萬斎)は白髪の老人となっているが、平維盛を総大将とする木曽義仲追討の戦で北越へ赴いている。その実盛の側には義仲軍側について死んでしまっている息子の五郎(尾上菊之助)が霊となって常に側にいる。弟の六郎(坂東亀三郎)も平家を見限って義仲軍側に走る。そこで五郎の死の真実、義仲軍の姿が明らかになっていき・・・(中略)・・・実盛は最後の戦いに髪を墨で染め、顔に白粉を塗って若やいだ姿で臨み、敵に囲まれての幕切れ。

義仲軍は、浅間山荘事件を起こした連合赤軍を重ね、時の権力に挑んで滅んでいく若者たちの姿として描いている。そして実盛は権力の側にいながら、権力と闘う側への強いシンパシーを持っている。二股武士として生きざるを得なかった実盛をうまく使った作品だとつくづく思う。
ウィキペディアの「斎藤実盛」の項はこちら

世の中のひずみが大きくなり、「あるべき姿」にしようという情熱を持つ人々のエネルギーが大きなうねりを作り出せた時、時代は動く。
しかしながらそのうねりは、真っ直ぐに突き進むとは限らない。その支え手の成熟度が問われてくる。バランスを失すれば大きな誤りを犯すことさえある。フランス革命時にロベスピエールらの恐怖政治にぶれた時の恐ろしさ(ミュージカル「マリー・アントワネット」でも見せつけられた)。極左集団や極右集団もそれぞれに生まれてきた背景があり、極端に走っての自滅もあり。過去の歴史が物語る。

父を裏切り、木曽軍に身を投じる息子ふたり。五郎も六郎も父がかつて駒若丸を預けにいって触れた木曽の森に生きる人々の国への憧れを語るのを聞いて育ってしまっていた。
「・・・・・・あの頃森の国には眩しいほど輝きに満ちた若者たちがいた」「・・・気おくれというよりあの若者たちに嫉妬の年を燃やした、男として、人間として」
平家の専横に甘んじる父を否定し、自分たちも憧れを抱いた森の国へと走ったのだ。だから実盛自身はそんな息子たちを心から憎んではいない。そういう関係の上に、今の五郎の霊と対話する実盛がある。

木曽軍の指揮を巴御前がとっている。義仲が精神に異常をきたしてのことという(権力とたたかうリーダーがその重圧で狂気に陥る様は先に「将門」でも描かれていた)。そして代って指揮をとる巴までが精神的に極限状態にあり、凛々しくリーダーシップをとっていたかと思うと心弱くなって夫に代って縋りつける男を求めている姿をさらけ出している。
側近の逞しい男で肉欲を満たすことでかろうじて精神のバランスをとりながら(大富士の台詞にかなり仰天!)、本当の心の支えにしているのはかつて心を寄せた実盛だった。そしてその息子の五郎に実盛を重ねたのだろう。五郎はその巴の願いを退けて、裏切り者とされて殺されたのだった。

巴が実盛をマークしつつも殺さぬように指示を出しているために戦っても戦っても死なないこと、老いの姿が目立つので実盛とわかることに気がつくと実盛は・・・・・・。マークをはずして正々堂々と見事に討ち死にをするために髪を黒く染め、老いた顔を隠す化粧をする。
その若やいだ姿に若かった頃の気持ちが漲り、命が燃え上がったと実盛が感じた時に敵に囲まれて......本懐をとげたということか!
「どこかで水が溢れている・・・・・・いっぱい溢れている・・・・・・妙だ、水を思うと心がなごむ、心が落ち着く・・・・・・なぜだ・・・・・・」

清水邦夫の戯曲の台詞は美しい。それを声も台詞もいい役者が響かせる至福。萬斎の低音と菊之助の高音の父と子の語らいのハーモニーという贅沢。二人はコメディタッチにふるまったかと思うと生と死の世界に分かれてこそ心の底から言い合えると思えるやりとりをする。
コメディの感覚は狂言の手法が生きているし、最後の化粧の場面はまるで菊之助のお富が番頭に白粉を塗っているあの歌舞伎の名場面を彷彿とする。これってねらってないか(笑)
歌舞伎からはもうひとり亀三郎が弟の六郎役で出演。歌舞伎ではない舞台は初めてらしいが堂々とした台詞が響き、嬉しくなった。
老け役を初めてするという萬斎の老実盛はなかなかのものだったし、最後に若やぐ場面では今の年齢が生きる。リチャード三世を翻案した「国盗人」のイメージも重なる。今、最高のコンビを蜷川幸雄ならでは実現できたのだろうし、それを観ることができた幸福を噛み締める。

巴御前も秋山菜津子がベストキャストだろう。「朧の森に棲む鬼」のツナ役と同様、男勝りの武人でありながら女の哀しい部分を強烈に印象づけることのできる女優だ。
もうひとりの女傑は平維盛の乳母・浜風の神保共子。老女でありながらも巴同様に戦仕度で陣中に共にある。両軍共に武装した女傑がいるのである。維盛の長谷川博己とのコミカルな感じもいい。
実盛と同じ一族の在所の藤原権頭の津嘉山正種も私好みのいい声で惚れ惚れ。萬斎とのやりとりでも安定感あり。
とにかく出演者も豪華に揃って、清水邦夫×蜷川幸雄の世界に浸れたことが嬉しかった。
一度じっくりと戯曲を読みたいものだが、図書館通いができるようになるまでお預けにしておこう。

写真はこの公演のチラシ画像。
(追記)
①権力との闘いということでいえば、新劇の主流派への蜷川幸雄のアンチテーゼという意味もあったようだ。民芸での初演で宇野重吉が実盛を演じたことも懐の深いことだったのだと思える。そして蜷川幸雄は今も闘う気概をかきたてている。それをずっと追っかけていきたい私である。
②この作品の感想をネット検索していたら松井今朝子さんのHPの記事が大変面白かった。リンクでご紹介させていただきたい。