ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/01/27 「朧の森に棲む鬼」千穐楽で満足

2007-01-28 22:17:17 | 観劇
劇団☆新感線の舞台を観るのは4作目。“いのうえ歌舞伎”としては「阿修羅城の瞳」についで2作目。「阿修羅~」にはハマれなかったので今作ではどうか少々危惧していたが、プレビュー公演で杞憂になったと胸をなでおろす。千穐楽に2回目の観劇。
染五郎主演のシリーズを新感“染”ともいうらしいが、染五郎に徹底的な悪役を演じさせようというのが今作のコンセプト。酒呑童子の世界でシェイクスピアの「リチャード三世」的な話にするということで、市村正親リチャードを初演・再演ともしっかり観た私。どう料理してくるかと興味津々。
私なりに物語を追っていくと.....。

「いつとも知れぬ昔、どことも知れぬ森」にうち続く戦の中で死体漁りをするライ(染五郎)と弟分のキンタ(阿部サダヲ)が登場しての幕開き。ライだけが森のオボロの幻を見る。「マクベス」の魔女の予言のような場面。3人のオボロの挑発に心の奥の野心をめざめさせられ、「王になる野心をかなえる代わりに生き血をもらう」「自分で自分を殺さない限りは死なない」という契約を交わし、魔剣をもらう。もともと王族でもなんでもないライがのし上がっていく設定はマクベス的でもあり、リチャードの極悪人の宣言のようなものもこのやりとりの中で踏まえられる。ライは嘘のlieであり、ライ公と呼ばれれば頼光に通じている。
資源に富む小国オーエ国を侵略する大国のエイアン国。都ラジョウにある宮廷はイチノオオキミ(田山涼成)が中国の皇帝のような拵えで鎮座している。傍らには側室のシキブ(高田聖子)がいて和歌でオオキミをなぐさめている。四天王が戦を担当。渡辺綱ならぬツナ(秋山菜津子)はなんと女だてらに将軍。ツナの夫でやはり四天王だったサダミツがオーエ国に内通しにきた森の中、ライの魔剣の最初の犠牲者になる。ツナとシキブは幼馴染み。シキブはツナへの対抗意識が強く、それで側室にまで上っていった感がある。
オーエ国の首領も女でシュテン(真木よう子)。ライはサダミツに化けて血人形の契りを結び、両方の国の二重スパイのようになる。エイアン国の夜の世界を支配するマダレ(古田新太)とも義兄弟になって裏情報を把握。サダミツの死の報告をしに行って取り入ったツナのもとで、二つの国の戦を操りながら、エイアン国の中でのし上がっていく。その中でシキブもたらしこみ、オオキミも毒殺させて口封じ。ついにエイアン国の王にまで上り詰める。
弟分のキンタとは途中まで二人三脚でいくのだが、シュテンの血人形に隠された妖術の犠牲に巻き込んでしまって袂を分かつ。
途中までライに心を奪われていったツナだが、シキブが自殺に見せかけられたことからライの悪行を見抜く。さらに夫を殺したのもライだと知って深く憎む。ライは「愛するのでも憎むのでも、心を俺でいっぱいにしているということでは同じことだ」とツナを支配することに歓喜する。ライはマダレを幼い時に誘拐されたツナの兄にしたてあげようとしたが「嘘から出た真」となり、マダレはライに愛想をつかしてツナを兄として支えていく。反乱軍やオーエ国の残党はオボロの森に集結。
全てを敵に回して孤立したライ王は森そのものを焼き払って呪われた契約そのものも反古にしてしまおうとするが、本水を降らせた雨が邪魔をする。
「自分で自分を殺さない限りは死なない」という条件は、「自分でつくり出したことから死に追い込まれる」ということで満たされる。情を残したキンタは目をつぶされていたが生きてライへの復讐に燃えていたし、マダレを利用するための嘘も反対の結果を招いた。
壮絶な立ち回りの末にツナに刺されたライ。最後は雑兵によって滅多刺しにされてその血がオボロの森の川をまっ赤に染める。そしてオボロたちが勝ち誇ってみせる中での幕切れ。
「血よ。オボロの森を真っ赤な嘘に染め上げろ!それが俺の生きる証だ」というキャッチコピーがここで具現化するわけだ。

この「朧の森~」は従来よりももっと人間にスポットを当てて“大人のいのうえ歌舞伎”としての第2シリーズの初オリジナル作品とのこと。「阿修羅~」ではチャンバラや歌や踊りの遊び部分が長すぎて辟易したのがすっきり。人間ドラマが深くなっていて本当に引き込まれた。さらにオボロたちが「自分たちと同じ顔をした女たちに会う」と予言したツナ、シキブ、シュテンをそれぞれ自己主張の強い女3人にしたことによってより私好みの物語になっていたと思う。

ツナの秋山菜津子は「SHIROH」に続く客演ということだが、毅然とした美しさが際立っている。武人でありながらライに心奪われて迷う様子に観ているこちらが心奪われる。シュテンの真木よう子はプレビュー公演ではとにかく美人だったが台詞は棒読みでどうなることかと思った。千穐楽では情感が台詞にのった上で魅力的な低音が響いて一ヶ月の成長に目を見張った。3人のオボロの登場から秋山・高田から格落ちしていたのがしっかりと並んでいた。シュテンもよし。
高田聖子はハイテンションのシキブを楽しく哀れに熱演。その相手役の田山涼成(特命係長の禿の課長でおなじみ)のオオキミが可愛くてペーソスあふれていてすっかりファンになってしまった(夢の遊民社出身だったのね)。

特に染五郎贔屓ではない私だが、ライ役は本当に魅力的だった。のし上がっていくごとに衣装もメイクも大きく変わり、最後の眉なしの国王の人間的でなくなってしまったような表情の凄みはなかなかのもの。プレビューではかすれていた声も千穐楽では低音もしっかり響いていて○(歌舞伎でも発声を頑張ってほしいと思う)。
大人計画の阿部サダヲは、いのうえひでのり演出の「天保十二年のシェイクスピア」のDVDで気じるしの王子でノックアウトされていた。今回もその魅力が炸裂。古田新太も渋い魅力。染五郎・サダヲ・古田の男3人組と上述の女3人組という魅力あふれる布陣も堪能できた。
追記
秋山菜津子は「ルル」という悪女のタイトルロールを演じた時の裸の背中の美しさが評判だった(私はその背中の写真が大きく載っていたチラシで見知っていただけ)。今回、武門の家の紋章としての背中から腕にかけての蛇の彫りものをあばかれる場面で、しっかりとその美しいお背中を拝見できて嬉しかった。また冒頭のオボロの妖かしのディープキス的なものも含め、濃厚なキスシーンが何ヶ所もあるのも美味しい舞台。官能的な美しさもテンコモリ(^^ゞ

これはゲキ×シネ必須鑑賞→DVD購入コースになるだろう。
写真は松竹の公式サイトよりチラシの画像。千穐楽カテコや煎餅撒きの話はこちら


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15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
サダヲさんは (yopiko)
2007-01-29 00:56:24
こんばんは、いつも楽しみに読ませて頂いていますm(_ _)m
朧の森~、人間の業や欲望をあれだけ露にしながらエンターテイメントとして成立していて、私もすっかり1月は朧に毒されました(*^^*)

さて、阿部サダヲさんですが、新感線は2003年の『レッツゴー!忍法帖』でもご出演でした。この公演、チケット取れたのに仕事でいけなくて悔しかった覚えが・・・。朧~での阿部さんを観て、DVDを買おうかどうか検討しています(笑)
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早く大阪でライに会いたい (スキップ)
2007-01-29 01:22:41
ぴかちゅうさま
トラックバックありがとうございました。
素晴らしい千秋楽だったようですね。お煎餅ゲットもおめでとうございます。ぴかちゅうさんのレポからも1ヵ月を経たお芝居の完成度がよく伝わってきて、またまた観たくなりました。
大阪では2月3日の初日を控えて、夜中にTVでよく公演のスポットCMが流れます。ライの姿を見るたびに切なくなって涙出そうになっています。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-01-29 02:03:17
★yopiko様
ご指摘、本当に有難うございますm(_ _)m早速修正入れました。プログラムの阿部サダヲさんのページの出演履歴をよく読まずに文章の方に「出たいと思っていたんです」とか「中島さんの台本は初めてですが」とかあったので早飲み込みしてました。
劇団☆新感線はまだまだ初心者なので(^^ゞ、ゲキ×シネでアカドクロとアオドクロを観てもっとひたってみようと思っているところです。
またよろしくお願いしま~す(^O^)/
★「地獄ごくらくdiary」のスキップ様
スキップさんの東京レポを読んで励まされて私も一気に書きました。東京の一ヶ月でも相当練り上げられています。大阪レポを楽しみにしていますね。夜中のTVCM見てみたいです。
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TBありがとうございました☆ (Ren)
2007-01-30 07:06:45
千秋楽、すばらしい舞台で終わられたみたいですね!
恒例のお煎餅まきも。いいなぁ。一度体験してみたいです。
三回目の感想がまだ書けていないのですが
TBさせていただきました。
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ひとつ屋根の下・・だったのねん♪ (かずりん)
2007-01-30 20:24:03
ああ~~♪今、染ちゃんとひとつ屋根の下だわ~~と
喜んでいたのですが
ぴかちゅうさまもだったとはっっ!!
東京くんだりまで行ったのに、熱気と迫力に当てられ、
こちらのブログ読ませていただいて、やっと、
そうだった!そうだった!と思い出す始末・・・。
何を見てたんでしょ?!
・・・って、えへへ・・・・♪♪
大阪では、しっかり目を開けてぴかちゅうさん並みに
書き残したい!!と思います!(←無理無理・・・)
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一番下外しました♪ (かずりん)
2007-01-30 20:30:19
お教えいただいた通り、一番下外してみました♪
・・・という訳で、TBさせていただきました♪
ひさしぶりだ~~♪
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続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-02-01 02:19:38
★「如意宝珠」のRenさま
染五郎バースデイの日の公演のレポを有難うございますm(_ _)mプレビュー2日目と千穐楽という極端なリピート観劇でしたが、1ヶ月の進化をしっかりと確認できました。いずれも3階B席ででしたけれど堪能しました。千穐楽の感想をTBさせていただきましたm(_ _)m
「阿修羅城の瞳」や「メタルマクベス」はハマれなかった私ですが、こちらはゲキ×シネ必須鑑賞→DVD購入にすすみそうな感じです。エンタメなのにしっかりと人間というものが描けているところが味わい深かった。こういう作品大好きです。劇団☆新感線はこれからゲキ×シネでアカドクロとアオドクロを観て、舞台は「TOMMY」を観る予定です。
★「夕日に赤いママの顔」のかずりん様
>ひさしぶりだ~~♪のTBを有難うございますm(_ _)m私の方もちゃんとTBできるようになって嬉しいです。
>ひとつ屋根の下・・だったのねん.....そうですよ~、残念!!ミニミニオフ会のお茶会やってたのでご一緒できればよかったのにと本当に残念です。
そうそう私たちと一緒に出入り口にいれば内野聖陽も幸四郎ご夫妻もお姿をしっかり見ることができたのに...これはまぁついでですが(笑)次からは遠征の際はお声をかけてくださいませ。
かずりんさんの大阪レポを楽しみにしていま~す(^O^)/


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♪♪♪ (かしまし娘)
2007-02-01 10:20:32
ぴかちゅう様、まいど!
連投失礼しま~す。
オオ!千秋楽!羨ましいですぅぅ。
真木よう子の、あの声から発する台詞が~。アッパレ無名塾出身者!殺陣も柔らかくて好きでした。
ライ様を全く無視してしまったような、私の観劇レポ送ります。怒らないでね(笑)

yopiko様、ここから失礼します。
『レッツゴー!忍法帖』のDVDは買いです!疲れた時に見ると吹っ飛びますよ。何もかも~(笑)
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羨ましい! ()
2007-02-01 23:50:56
「朧~」の千秋楽行かれたとは、なんとも羨ましい!
千秋楽定番の煎餅もゲットされたようで、何よりです。

主役の染様を目当てで行った私でしたが、
終わってみるとおバカなキンタにメロメロでした。(笑)
カーテンコールでの拍手の大きさは、キンタのほうが大きかったようにも感じました。
主役を喰らった感はありますが、
それもこれも裏を返せば悪役に徹したライの演技が、
見事だったからこそ!(笑)
やはり新感染での染様はスゴイの一言に尽きます。

私もゲキシネ→DVD購入コースは間違いなさそうです。
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続続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-02-02 21:45:18
★かしまし娘さま
TBの連投有難うございま~すm(_ _)m
千穐楽は新感線の発車音の直前に着席~。そうか、新幹線の発車音にひっかけてるんだと今回やっと気づきました。それくらい劇団☆新感線初心者の私です。だから古田さんのスリムだった頃を知らないんです。
>ライ様を全く無視してしまったような、私の観劇レポ送ります。怒らないでね......全く怒りませんよ。私の娘も染ちゃんより古田さん観てましたから。そして昨晩もエル・ポポラッチがちょうどTVに映っていたので娘に教えたら驚いて大喜びしてました(笑)
>『レッツゴー!忍法帖』のDVDは買いです.....そうなんですね。「血風ロック」も聞けるんですよね。買ってしまおうかな。

★「ARAIA -クローゼットより愛をこめて」の麗さま
>おバカなキンタにメロメロでした.....わかります。私も「天保十二年のシェイクスピア」の気じるしの王子は大好きなので今回のキンタも一回目でハマりました。ライとキンタのコンビがめちゃめちゃいいです!
>3階席では1階で観るのとはまた違う楽しみ方がありますよね。照明の美しさは別格だった事でしょう♪
劇団☆新感線の場合、安い席があれば必ず安い席でというのが今の私のスタンスです。だって気に入った舞台のアップはゲキシネ→DVDで楽しめばいいと割り切ってるんですよ。ケチですみませんm(_ _)m
「SHIROH」でも思ったのですが、大劇場では特に照明の綺麗さが映えるとつくづく思いました。
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