ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/09/24 新秋九月大歌舞伎夜の部②海老蔵×亀治郎の「かさね」!!

2008-10-04 23:59:14 | 観劇

2006年のこんぴら歌舞伎で評判だった海老蔵×亀治郎の「かさね」をついに観ることができる!
【色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね】清元浄瑠璃
内容と配役は以下の通り。
腰元のかさね(亀治郎)は同じ家中の侍と不義の仲となり心中の約束をするが、その男に出奔されてしまう。男(海老蔵)は与右衛門と名乗っているが百姓の助を殺して捕手に追われている。与右衛門が雨の降る中を木下川堤にやってくると、かさねがようよう追いついてきた。かさねは約束通り一緒に死んでくれ、身ごもっているのだと必死の思いで与右衛門をかき口説く。与右衛門もその気持ちにほだされて心中の決意を固めたところ、川の縁に左の目に鎌の刺さった髑髏が卒塔婆に乗って流れ着く。与右衛門がそれを拾って殺した助の卒塔婆だと気づいて卒塔婆を折るとたちまちかさねが苦しんでのたうち回る。
そこに二人の捕手(新十郎・升平)が現れるが与右衛門の抵抗に退却。落していった書状には与右衛門の罪状が書き付けられていた。
苦しんでいたかさねの左目はただれ、片方の足も痛んで動かせなくなっている。殺した助の最後の再現だった。かさねを連れていくと騙し、髑髏から引き抜いた鎌で斬りつけると驚くかさね。懐から手鏡を出して顔を見せ、かさねに自らとの因縁を語り聞かせていく。かさねの父親が殺した助であり、母親である菊との情交からのことであった。ついにかさねにもとどめを刺し、川に突き落として立ち去ろうとする与右衛門。花道まで来たところを強い力で引き戻される。土橋の上にはかさねの幽霊。逃すまじと手招きすると与右衛門の身体はその力で前を向いたままで凄い速さで後退させられてしまう。必死の形相で行きつ戻りつを繰り返す「連理引き」という見せ場を堪能させての幕切れ…。

短いけれどドラマチックな一幕だ。
亀治郎のかさねは美人すぎないのがいい。まさに色悪そのものの与右衛門と情けを交わしてしまったという不幸な女の風情が全身から滲む。不幸な女がせめて一緒に死ぬことで愛を全うしたいという全身全霊をかけてのクドキ。亀治郎の踊りはそういう情念を感じさせる。

その情念に包み込まれる色悪そのものの与右衛門の海老蔵の風情がまたいい。海老蔵の色悪というのはビジュアルの美しさ、海老蔵という役者自身のキャラクターイメージと相俟って劇場いっぱいに悪魔的な魅力が満ち満ちるように私には思えて仕方がない。(けなしているようだが誉めている!)

「連理引き」の迫力もすごかった。亀治郎の手は美しいと以前も何かで誉めたが、その優美な手指が妖しく動いて与右衛門を逃がさない。海老蔵はその身体能力の高さを最大限に発揮して花道から舞台中央まであそこまで後ろ向きに早く動けるのかというのを見せる。海老蔵が汗だくになって必死にもがき必死に逃げようとするその動きを、亀治郎の白い優美な手指が自在に制御するように見えるのを、息をつめて堪能。

この満足な一幕で、前の出し物「加賀見山」で満足できなかったこともすっかり帳消しになった。口直しがしっかりできて打ち出されてきたのだった。
座頭海老蔵、大きく破れているところに魅力があるようだ。

写真は今回公演のチラシのかさねの亀治郎を携帯で撮影。
9/20昼の部①「枕獅子」
9/20昼の部②「源平布引滝」三幕
9/24夜の部①「加賀見山旧錦絵」