ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/08/19 納涼歌舞伎二部①「ゆうれい貸屋」

2007-09-08 00:47:25 | 観劇

不調だったインターネット回線も復活し、早速書き残していた納涼歌舞伎の第二部にとりかかる。
山本周五郎原作作品の歌舞伎化の舞台は團菊祭の「泥棒と若殿」がよかった。「ゆうれい貸屋」も期待して原作の文庫本を実家の父に借りて読み、幽霊芸者染次は福助にピッタリだと確信していた。

【ゆうれい貸屋(ゆうれいかしや)】
あらすじは以下の通り。
桶屋の弥六は腕のいい職人なのにすっかりなまけ者になってしまっていた。ほろ酔い加減で帰宅した弥六を女房のお兼や家主の平作がいくら戒めても「働き通しに働いて父親も貧乏から抜け出せずにあっけなく死んでしまった。だから俺は今の生き方でいいんだ」と言い返す始末。お兼はいっそ自分がいなくなれば弥六もまじめに働くかもしれないと実家に戻ることにする。
ふて寝していた弥六が目覚めると、台所の隅に若く美しい女が現れる。辰巳芸者の染次という幽霊は男に騙され恨み死に、男も親族も全て取り殺したが成仏できずに彷徨っているのだという。帰宅途中に喧嘩の仲裁に入った弥六を見ていて惚れたのでついてきたのだと言う。弥六がまじまじと見た染次の器量のよさを褒めると女房にしてほしいと言うので、悪くない話だと夫婦になることにする。染次は弥六に決して浮気しないことと、恨み死にした者も身内の者が供養すると成仏してしまうので決して供養はしないように約束させる。染次は夜な夜などこかの店から酒と肴を持ってきて寝間も共にしてという暮らしが続く。ある日家主が店賃をお兼が内緒で届けてきているというのもわからずに弥六が不行状を続けるのに怒る。店賃が滞ったら追い出すからそう思えと啖呵を切られる。
染次はお金を稼ぐために「幽霊貸し屋」という商売を思いつく。恨みを晴らしたい人にそのための幽霊を貸し出す商売。染次が選抜してきた幽霊が集まり、商売は繁盛。ところが身内が供養してくれたと言って爺婆はいなくなり、屑屋の又蔵はひどい目にあってきてもう嫌だと言い出して弥六は考え込まされる。最後には男狂い娘の千代にのしかかられて染次が嫉妬のあまり取り殺しにかかられ、それを鉦の音でなんとかしのぐところへ長屋の連中が駆けつける。家主に一緒に般若心経を読んでもらって染次を成仏させて、お兼とやり直すことを誓って幕。
今回の配役は以下の通り。
桶職弥六=三津五郎 幽霊芸者染次=福助
弥六女房お兼=孝太郎 家主平作=彌十郎
魚屋鉄造=秀調 お勘=右之助
幽霊又蔵=勘三郎 幽霊お千代=七之助
幽霊爺=権一 幽霊婆=玉之助

予想にたがわず幽霊芸者染次は福助のハマリ役。鉄火な姐御でポンポンしゃべり、凄味をきかせるところは地声を響かせて凄み、可愛く甘えるところは猫のように可愛い。これは弥六がとろけるのも無理はない。写真は今回の「ゆうれい貸屋」のポスターだが気合が入っている様子がうかがえる。一部の「越前一乗谷」の小少将はきちんとくずさずにつとめ、染次ではハジける。その両極端をご本人も楽しんでいる感じがした。もちろん観ている私も滅茶苦茶楽しい~。

三津五郎はなまけ者の職人という感じが最初は今ひとつピタっとこない気がした。冒頭の家主とのやりとりのあたり。だが観ているうちにこちらも慣れてくるし、染次とのやりとりの中で染次が惚れる弥六というあたりで少しずついいかもと思い始める。
勘三郎の幽霊又蔵。とっても情けない感じなのがいい。その切々と弥六に訴える台詞に情感が乗り、ここの三津五郎とのやりとりも堪能できる。幽霊爺の権一も細くて今にも消え入りそうな感じがピッタリ。今まで観た中で一番いいと思えた(^^ゞ
男狂い娘の七之助が弥六を誘惑し馬乗りになってバタバタするのも楽しかったが、そこに上から吊られた福助の染次が迫力たっぷりに現れて・・・・・・もう最高!

こんな楽しい幽霊物なのに、48年ぶりの歌舞伎上演というのは勿体ない気がした。
ちなみにその時の配役は以下の通り。想像してみるだけでも面白い。
桶職弥六=松緑(2) 幽霊芸者染次=梅幸(7)
弥六女房お兼=現富十郎 幽霊お千代=現田之助
幽霊又蔵=羽左衛門(17)

あらためて原作を読んで比べてみると、歌舞伎の弥六の方がずいぶんとカッコいい。染次が喧嘩の仲裁に入った弥六を見ていて惚れたというエピソードも歌舞伎の入れごと。歌舞伎はやっぱり役者を魅力的に押し出すようにつくるんだなぁとまたまた納得した次第。
8/19一部①「磯異人館」の感想はこちら
8/19一部②「越前一乗谷」の感想はこちら
8/19二部②「新版 舌切雀」の感想はこちら


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4 コメント

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VIVA!福ちゃん (かしまし娘)
2007-09-10 15:36:00
ぴかちゅう様、まいど!
そうですか!文庫本があるんだ。読んでみよっと。
情報ありがとうございました。

「幽霊~」は、さしずめ中村福助ワンマンショー!
イヒヒヒ。

歌舞伎では48年ぶりっ!!
もっと演ったんさい、演ったんさい。
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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-09-11 00:11:27
新潮文庫の『人情裏長屋』という短編集です。
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=30996069
團菊祭で三津五郎・松緑でやった「泥棒と若殿」も入っているし、面白い話が多かったですよ。
>「幽霊~」は、さしずめ中村福助ワンマンショー!
イヒヒヒ......ハジける福助が大好きだと堪らない演目でしたね。私もこういうのはハジけていただいていいと思うし、たっぷり楽しませていただきました!
(注)かしまし娘さんの記事はお名前の欄をクリックすると読むことができます(^O^)/
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Unknown (るるる)
2007-09-15 13:06:49
羨ましいデス。
お気づきかもしれませんが、実は6月の博多座十二夜以来ただの一度も歌舞伎を拝見いたしておりません。忙しくてどこにも行けないのと自分の公演でいっぱいいっぱいなのです。
かなり禁断症状。涙
こういった素敵な記事で毎日癒されておりまする。
たくさんたくさん拝見させて下さいませね。
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★るるる様 (ぴかちゅう)
2007-09-16 23:12:15
コメントを有難うございますm(_ _)m
観劇したいのにできない禁断症状が出ているということですが、地芝居の舞台に実際に出られるためのお稽古の真っ最中のご様子ですね。私には羨ましい限りです。難行苦行の大変さも私が推し量れる以上のものでしょう。でもきっときっと力を発揮できますよ。
埼玉の地よりお祈りしていますね(^O^)/
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