ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/12/22 大地真央の魅力全開!『紫式部ものがたり』

2006-12-24 15:24:39 | 観劇
大地真央は私にとって定点チェックの必要な女優だ。東宝公演『サウンド・オブ・ミュージック』『十二夜』『マイ・フェア・レディ』、松竹公演『マリー・アントワネット』と観てきた(一部順不動)。
『マイ・フェアレディ』の時の感想はこちら
歌舞伎会の会員だと歌舞伎以外の松竹公演もインターネットでラクラク買えるので、今回の公演も一番安い席の最前列センターを確保。日生劇場のこのあたりの席は観やすいので4000円ではとてもリーズナブルだ。
今回の松竹公演『紫式部ものがたり』のキャッチフレーズは「齋藤雅文の書き下ろし、宮田慶子演出でお贈りする、歌あり、踊りあり、笑いあり、涙あり、究極のエンターテインメント」。大地真央のコメディエンヌぶりは素晴らしいので、こういう作品は大いに期待できる。

仕事帰りにかけつけると、劇場前に大地真央の光源氏姿の写真の看板がデーンと置かれていた。これは劇中劇で男役姿が観られるのだ~とテンションが上がる。

あらすじは以下の通り。
京の庶民たちの商いで賑わう場面から開幕。主人公の藤原文子(あやこと読む:大地真央)が人々の様子をウォッチングして自宅に戻ると侍女左近(植本潤)に咎められる。中流貴族のお姫様が供も連れずに勝手に家を出ることは非常識なこと。文子は学問の家の娘。父の為時(上條恒彦)が弟に学問を教えた時に隣で聞いていた文子が一番に覚えてしまったくらいの抜きん出た才にあふれていた(紫式部日記に書いてある)。母に早く死なれた彼女は結婚も遅くなり晩婚となったが賢子(田島ゆみか)を産むが早くに夫は他界。文子は物語を書くのが好きで左近は一番の読者で勝手に書き写しては周囲の人に回し読みをさせている。高位の人々の不倫の物語を書くのはけしからぬこと、「狂言綺語」で人心を惑わすことで地獄に落ちる所業と父やその仲間の大江匡衡(曽我廼家文童)にも咎められる。
その評判が宮中にも伝わって最高の権力を握る藤原道長(升毅)から中宮に上げた娘・彰子(神田沙也加)の家庭教師にという要請がくる。反対する父を説き伏せて一ヵ月後に出仕。女房名が紫式部となる。
宮中では同じように文筆で才能を競うライバルたちが待っていた。和泉式部(いしのようこ)、清少納言(酒井 美紀)、赤染右衛門(増子倭文江)。特に清少納言は先に入内して東宮の母でもあり先に他界していた定子方の女房。嫌味のとばしあいなどのコメディシーンも楽しい。その彰子が文子の物語を一番楽しみにしていた。「源氏物語」は本格的に書き進められる。定子の亡霊(椿真由美)やいろいろな亡霊も登場して物語を理解する人間には姿が見え話をきくこともできるという設定になっている。そこで亡霊の話もききながら物語は広がりや深みを増して展開していく。ところが文子はあまりの物語の持つ闇の大きさに途中でくじけそうになる。それをライバルたちが叱咤激励して書き続けさせていく。
定子の兄で道長に失脚させられた伊周(八十田勇一)もおどろおどろしく登場し、その生霊や亡霊たちが力を発揮すると登場するのが安倍清明(姜暢雄)。時代が違うはずだが、それは物語ということになっている。
紫式部と道長のロマンスは紫式部日記にもそれをにおわすところがあるとかで、天海祐希主演の映画『源氏物語』でも吉永小百合の式部と渡辺謙の道長のそういう場面は美しかった。ところが今回の舞台ではもっともっと切ないラブロマンスとして描かれていて私はかなり驚いた。「空蝉」のモデルはこのふたりだったというこの描き方に脚本の齋藤雅文をまたまた見直してしまった(そういえば昨年12月演舞場の『狸御殿』の脚本を書いたのも齋藤氏だった)。
文子にはずっと慕い続けた月の光の君がいて、それは道長だったのだ。その一夜を大事にずっと生き、その姿を主人公に長い長い物語を書いてきた。そして道長がこの物語を必ずしも快く思っていないことを知っている文子。道長のあらためての求愛を退ける別れの場面に胸が熱くなる。女が信念を持って別れを選び取る姿にめちゃくちゃ弱い私である。

全て書き上げた「源氏物語」を製本して献上すると道長の側近たちが焼かせてしまう。しかしながら多くの女たちが写しを左近が下書きの全てを持っていてかけつけてくる。そう、「源氏物語」は不滅だったのだ。THE END。

舞台は黒い雛壇状のところですすんでいく。御簾のような幕も使っていてなかなか面白い。平安時代の十二単などの衣装も今年6月の『和宮様御留』の時と同様にとても良いもののようで、目にもとても満足。

キャストへのコメントの筆頭は今回初共演の植本潤。その『和宮様御留』でも素晴らしい女方として松竹の舞台にも登場しているが、今回はさらに大地真央×植本潤ですごい効果を上げている。大地真央の台詞回しでひとつこれまで問題に感じていたことがある。男役の時の台詞回しは素晴らしいのだが女役の時のそれはとても作り物っぽいのだ。鼻に抜けるようないかにも女らしい声をつくっていますという、どうにも鼻につく感じがあった。それが植本潤の女方の声と並んだら、舞台においては役によって作った声を使っても当然なのだと思えてしまった。男役の声の方が自然に馴染んでいる大地真央にとって後から女優になったんだし、元々の声域からしても女らしい声はこういう作り声になるんじゃないのか?そう思ったら今回は初めて彼女の努力をすんなりと肯定的にとることが出来てしまった。大地真央のコメディ性をさらに植本潤が時々男声でからかったりするようなコメディ場面がさらに相乗効果を上げていた。こういうコスチュームプレイではぜひこれからも共演していただきたいと思った。

上條恒彦は『マイ・フェア・レディ』に続いて父親役だが、本当に娘を想う愛情があふれていていい雰囲気。歌も最高だし、必要不可欠の存在。
升毅も『和宮様御留』で舞台を初めて観たが、今回の藤原道長も苦味ばしったイイ男である。影では手を悪に染めて権力を手にした男という雰囲気がピッタリ。そういう男が昔のラブロマンスを思い出しての最後のラブシーンはなかなかぐっときたのだった。
本名で出直した神田沙也加はその一生懸命さは買いたい。ただし丸顔で健康的すぎて役にあわない。特に二役で劇中劇の夕顔の場面などは生霊に負ける感じに無理がある。
さてさて大地真央の魅力その1は、その毅然とした美しさ。今回もしっかり楽しめる。その2は男役との早変わり。本当は洋物の男役の方が似合うと思うけれど光源氏もなかなかよかった。その3はコメディエンヌぶり。「真央さんはコメディシーンに命をかけている」と共演者がよく言うくらいだ。間の取り方からしゃべり方からとにかくよく研究している。今回それがよく炸裂していた。
以上の3大魅力が今回フルに全開していてまことに大地真央を活かした舞台だったと思う。歌も前回の『マイフェアレディ』で褒めたところだが昔よりもかなり上手くなっていて聞いていてもひっかからなくなった。台詞回しも上記の通りである。これは再演を繰り返していって欲しい舞台だと思った。

写真は松竹の公式サイトより今回公演のチラシ画像。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
絶賛ですね☆ (くーみん)
2006-12-26 09:50:16
久しぶりに見た舞台がこれで、ラッキーでした。

実は次女、「ナルニア」の冬の魔女からの、大地真央のファンのようです。すごく喜んでいました。
無事中学に入った暁には、二人で舞台三昧しようかと、たくらんでいます
返信する
楽しかったですよね♪ (midori)
2006-12-26 11:14:21
ぴかちゅうさん>
コメント&トラックバック、ありがとうございました!
レスが遅くなってしまい失礼しました。
(><)
拝見して、ほっとしました。
(^^;
だって、私もとても楽しめたので。
(^m^)
大地&植本のコンビ、強力でしたよねぇ♪
上演時間の長さと、平日夜の開演時間の早さもネック
だったんでしょうかんねぇ…。
(ーー;

拙ブログのアップを、トラバさせていただきます。
返信する
皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-12-28 01:02:28

★くーみん様
私も『ナルニア国物語』観て、大地真央の女王のお声を聞きましたよ。娘さん、大河ドラマ『巧妙が辻』のお市さまは観てらしたんでしょうか。両方とも硬質な毅然とした高位な女性の声。このタイプの声ならひっかかりません。大地さんが女方声を作らなくても出せる声なのかなぁとか思いながら聞いてました。
娘さんの個性に合った学校に入れるといいですね。
★「好きなことは止められない♪」のmidoriさま
>大地&植本のコンビ、強力でしたよねぇ♪.....ホント、同感です。
大地さんってちょっと前まで歌が今ひとつだったし、女優としてはブリッ子っぽい演技でちょっとクセがあったしで好みの分かれるタイプだったと思います。『巧妙が辻』のお市さまで全国的にイメージアップしたとは思うのですが、日生劇場をいっぱいにできるほど人気があるかというと、これまでのイメージが強いでしょうからそこまでは無理だと思います。作品もオリジナルの初演だから皆さん様子見でしょう。
midoriさん、上演時間ってそんなにチェックされるんですか?私は気にしたことがないから改めてのご指摘に考えさせられました。
しかし、帝劇の『マリー・アントワネット』と並んで、見事に宝塚の元トップのコスチュームプレイの競演となった12月でしたね。そちらも感想を書きましたのでよろしくお願いしま~すm(_ _)m
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