ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/08/21 第八回亀治郎の会「上州土産百両首」で泣かされる(T-T)

2010-09-23 23:59:01 | 観劇

大体、「亀治郎の会」とは何か?第八回公演のコンセプトは何か?「シアターガイド」の公演情報のPRのコーナーが実にわかりやすかったので、以下に引用しておこう。
『亀治郎の会』は、「若い時ならではの感性を活かして古典の大役を演じる」ことをコンセプトに、市川亀治郎が企画・運営から演出までを手がける創造の場として2002年からスタートした自主公演です。
 第八回目を迎える今年は、正月から『悪太郎』『金幣猿島郡』『加賀見山再岩藤』『浮世風呂』『敵討天下茶屋聚』『蜘蛛絲梓弦』と、澤瀉屋の芸を毎月精力的に演じ続けた集大成として、静御前に中村芝雀丈、源九郎判官義経に市川染五郎丈をお迎えし、『義経千本桜・川連法眼館』を、伯父・猿之助の指導を仰ぎ上演致します。
 さらにもう一演目は、市川猿之助がかつて、藤山寛美・勝新太郎での上演を観て触発され、平成六年に歌舞伎座で上演された「上州土産百両首」。 原作は大正から昭和にかけて新派の作品を多数てがけた劇作家・川村花菱。 共演には、映画やテレビ、舞台で人気の若手俳優・福士誠治さん、ベテラン実力派俳優・渡辺哲さんをゲストにお招きし、新たな試みで上演致します。

藤山寛美・島田正吾が共演した松竹新喜劇の舞台のDVD情報もリンク。15年ぶりに偶然出会った幼馴染みの正太郎と牙次郎。お互いスリ稼業と知った2人は、真人間になって再会すると約束したが…。
【上州土産百両首】補綴:石川耕二
六世菊五郎と初世吉右衛門の為に書き下ろされた作品で、オー・ヘンリーの短篇小説「二十年後」が下敷きになっている。あらすじは「演劇ネット」の演目概説コーナーのものがわかりやすいのでご紹介。
今回の配役は以下の通り。
正太郎=市川亀治郎 牙次郎=福士誠治
金的の与一=渡辺哲 みぐるみの三次=中村亀鶴
隼の勘次=市川門之助 勘次女房=上村吉弥
宇兵衛=市川寿猿 宇兵衛娘=守田菜生

正太郎は板前の修業中だが悪い仲間に入って捕まっている。それを前髪姿の幼馴染みの牙次郎が逃がして別れ別れになる回想シーン。舞台奥の大きな月影に向かって歩く二人の後ろ姿が影絵のように美しい。スーパー歌舞伎のような装置だなぁと思う。場面転換したと思ったらその二人が年月を経ての偶然の再会の場面となる。月へ歩いた二人が身代わりだったんだなぁと早替り手法の活用にも感心。従来の舞台ではこの回想シーンはないと思われるが、若手の福士誠治との共演で補綴したのだろうと推測。牙次郎は少し頭が足りないようで、「アリャ~」が「アジャ~」としか言えないので「アジャがじ」というあだ名がついている。福士誠治はNHKの朝ドラ「純情きらり」の達彦さんだし、「のだめカンタービレ」の真面目な黒木くんのイメージ。長身で「うどの大木」風の三枚目の「アジャがじ」が予想外にいいので驚いた。小柄な亀治郎が「小粒でぴりりと辛い」風のアニキなので、このコンビはいける!とぐいぐい人情喜劇の世界に引き込まれた。

正太郎と牙次郎がお互いの財布をスリあったことから、心機一転、お互い真人間になろうと決意。スリ仲間の親分は気持ちよく正太郎との縁を切る。強面の渡辺哲が堅気になるつもりの人間の足を引っ張るまいとする人情を漂わせるのが実にいい。足を洗う気力のある正太郎をやっかむ兄弟分の亀鶴の切れ長の目がこれからの悲劇の予感を漂わせる。
待乳山聖天の境内で10年後に再会する約束をしてから10年。牙次郎は悪い仲間と正反対の御用聞き隼の勘次のもとに飛び込んで下働きをしている。勘次と女房の門之助・吉弥は十分にそれらしいのがいい。
正太郎は江戸を離れて上州館林料亭「たつみ」で料理人として腕を振るい、主人宇兵衛から信頼されて娘の婿にと望まれるようになっていた。三津五郎の娘である守田菜生は「風林火山」の舞台で共演するのを観ているが、今回はホンのチョイ役。
そこに流れてきた与一と三次が来て江戸前の料理を褒めたことから正太郎と再会。三次がゆすりにかかって斬りあいとなる悲劇が起こる。逃亡する正太郎は約束の日に牙次郎にやろうと貯めた百両を捕り方に召し上げられたが再逃亡。百両の賞金首となっていたのを牙次郎に自らを突き出させることで土産の金をつくろうとするというのがタイトルになっている。

賞金首が無理をして江戸に入る理由を考える隼の勘次は、待乳山聖天の境内での再会を楽しみにする牙次郎から、その勘働きで賞金首の包囲網をめぐらす。正太郎は立ち回りの末にお縄になるが、牙次郎を邪推し激昂。その誤解をとく牙次郎のせつせつとした芝居を福士が見せる。牙次郎の手柄としてやるつもりだった勘次だが、牙次郎は少しでも罪が軽くなるように自訴にさせてやりたいという。勘次に任された牙次郎は正太郎と死ぬまで道連れになろうといい、花道を二人で引っ込んでいく。
しっかり泣かされた。

回想シーンからなのでけっこう長い芝居だった。午後4時半開演で終演は9時を回った。けれどもともと藤山寛美の人情喜劇は大好きだったし、構成も配役もよくて芝居を堪能したなぁという満足感に浸って帰宅。

プログラムによると昨年の新春ワイド時代劇「寧々~おんな太閤記~」で共演した福士誠治・渡辺哲・守田菜生と共演していて、今回の企画が生まれたのだという。亀治郎の映像の出演も増えていてどんどんネットワークが広がっていることからこういう充実した企画も生まれるのかと嬉しくなった。映画「花のあと」はしっかり観たが、「寧々」は未見なのが惜しい気がしてきた。DVDでも借りて一度観てみようかという気になっている。

写真は今回の「上州土産百両首」のチラシ画像。


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