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シネカノン有楽町にレディスデイで夜の上映回がある最終日に仕事帰りに駆けつける。小さい部屋だがほとんど満席。ぎりぎりに行ったら最前列か2列目のサイドしかなく、「ハウルの動く城」以来の久しぶりの銀幕が幕だとよくわかる斜め見(笑)それでも映画館で観ることにして正解!
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【ミルク】
監督:ガス・ヴァン・サント 脚本:ダスティン・ランス・ブラック
「cinemacafe.net」のサイトの作品情報は以下の通り。
恋人のスコット・スミス(ジェームズ・フランコ)と共に、N.Y.からサンフランシスコにやって来たハーヴィー・ミルク(ショーン・ペン)は、同性愛者たちが集まる中心地カストロ通りで小さな写真店を開く。そこでミルクは、同性愛者に対する平等な権利と機会を求め、市民権運動の活動家として行動を起こす。ミルクは、クリーブ・ジョーンズ(エミール・ハーシュ)をはじめとする多くの若者から支持を得て、見事、市政執行委員に当選、全米で初めて同性愛者であることを公言して公職に就くことになった。しかし、就任して1年も経たないうちに、ミルクをある悲劇が襲う・・・・・・。
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高校時代に漫画家の竹宮惠子が『風と木の詩』の連載を始めた第一回から読んで衝撃を受け、単行本も毎回買い揃えていったくらいで今のBLブームにも全く驚かなかった私。男×男、女×女の恋愛にも全く違和感はない。男×女以外の恋愛を異常扱いしたり差別したりすることの方が人権侵害だと思っている。
ゲイの人権を守るために闘い、48歳で暗殺されたハーヴィー・ミルクのことはこの映画で初めて知った。『ビッグイシュー日本版』118号も買ってショーン・ペンのインタビューも読み、絶対観ると決めていた。
Wikipediaの「ハーヴェイ・ミルク」の項はこちら
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キリスト教社会では生殖のためのセックスしか認めない教義のために長らく罪悪視されたようだ。明治以前の日本社会は男色をそんなに異端視せず、歌舞伎でもそういう設定のお話はたくさんある。
1970年代のアメリカでもゲイに対する差別は激しく、一番自由度の高いサンフランシスコでもゲイだとわかると排除されたり暴力を振るわれたりされ、警察も守ってはくれなかった。ミルクが先頭にたってゲイにも市民権をと立ち上がった人々の姿に胸が熱くなる。どんな人間も平等に扱われる社会をつくるために市政執行委員や下院議員の選挙に何度も挑戦。4度目で市政執行委員に当選したミルクは、自らも支持したモスコーニ市長とともにマイノリティにやさしく住みやすいまちづくりの取り組みをすすめる。犬の糞を飼い主に片付ける義務を負わせる条例づくりなどもなるほどなぁと思えた。
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社会が変革の方向に動き出すと従来の秩序を取り戻そうとする保守反動の動きが起きるというのが社会変動のパターンだと思っているが、同性愛者を公職から追放する条例制定運動がキリスト教原理主義者を先頭に盛り上がった。その提案6号に対する反対運動を起こすミルクたち。
人間のエネルギーが高まっていた時代ということもあるだろう。その様子にも熱くなってしまう。ミルクたちの運動=ムーブメントの報道に保守的なエリアで絶望し自殺をしようとしていたゲイの若者の希望になる。家を出て理解者を求めて動き出す力を湧き立たせる。そういう手ごたえにミルクはつきすすんでいったのだ。
一方で自分よりも外の関係を優先するミルクに耐えられずにパートナーのスコットは家を出て行ってしまうという別れ。その孤独を埋めるかのように現れた若いジャックとの暮らし。しかし心はずっとスコットとつながって求め合っているのにジャックを放っておけなくなっているミルク。というようにプライベートの姿もしっかり描かれているのがこの作品の魅力だ。
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ちょっとびっくりしてやがて感心したのがミルクと二人のパートナーとの恋愛の始まり方だった。NYで一目ぼれして「誕生日を独りにしないでくれ」とくどき落したスコットとの関係。独りになった寂しさもあって若くない自分に若く可愛い甘えん坊が言い寄ってきてというジャックとの関係。いずれも感性と身体の相性のよさから始まる直感的な色恋だ。それがダメになったり続いたりということが人間の恋愛の自然な姿なのじゃないかと思い当たる。「源氏物語」の光源氏だって同じじゃないかと!打算やら何やら相手にいろいろと求めすぎてなかなか恋愛に発展しない現代の多くの若者と比べてしまった。「命短し恋せよ若者!」と言いたい。
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ミルクのもとには反対派から「殺すぞ」という脅迫状も届いているが、暗殺のおそれをずっと抱いていて、そうなった場合にのみ公表すべしという録音テープが遺されていた。映画は暗殺されたという場面から始まり、その録音をしているミルクの姿と語り、それをドラマでつないでいくという実に緊迫感あふれる展開方法。脚本が賞をとるのも納得の出来だ。
それにしてもショーン・ペンのミルクの素晴らしさよ。恋愛にも生きることにも真っ直ぐに突き進み、そこで理不尽だと思ったことを変えるためにも真っ直ぐに進んでいく。それも社交的な性格が生きてどんどん人を巻き込むし、多くの人に支持される作戦もうまい。その魅力で多くの人の知恵も力も集まり若者も育っていく。その実在のミルクに惚れ込んだショーン・ペンが現代人にも魅力的に見せつける。これはオスカーにふさわしい!!
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市長とミルクとを射殺したアイルランド系の保守派の市政執行委員の同僚ダン・ホワイト(ジョシュ・ブローリン)の姿も単純な敵役として描かれていなかったのもよかった。どんどん孤立していき財政的にも逼迫して精神的にも追い詰められていく様子が丁寧に描かれていた。市政執行委員の報酬は多くないらしくボランティア的に勤める役職なのだろうと推測(北欧の議員もボランティア的な位置づけなので長くしがみつくものではないのだそうだ)。
映画では描かれなかったが、実際のダン・ホワイトは刑期を終えて出てきてからもいろいろあって立ち直れずに自殺したという。敬虔なカトリック教徒だったはずの彼が自殺するというのはなんとも皮肉なことになってしまったものだと思い、彼の不幸にも思いが至った(最近の私は犯罪者を生み出す社会の病理への関心も深い)。
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それにしてもだ、モスコーニとミルクを悼むキャンドルライトの行進は胸をうつ。今でも毎年命日にミルクの記念の行進が続いているらしいが、この映画の撮影のためにスタッフの予想を上回る参加があったという。
昨年には同性婚禁止の提案が出される状況もあるが、社会は振子のように右に左に振れながら、またらせん状に上昇していくというイメージを持っている私はその振子の大きな振れを信じていこうと思っている。
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写真はこの作品のチラシ画像。
私も、どうして同性同士の恋愛を制限したり、排除しようとしたりするのだろう?と思います。
しかし、様々なブログ上での感想を読み、異性愛でなければ違和感を持つ方の多いことに正直驚きました。
マイノリティが生き易い社会は、すべての人にとって生き易い社会であるというミルクのメッセージは、私には素直に心に響いたのですが。。
ショーン・ペンも素晴らしかったのですが、ジェームズ・フランコが最高に素敵!でした。
ではでは、失礼します。
>「命短し恋せよ若者!」
に妙に納得してしまいました(笑)。
それはさておき、ハーヴェイ・ミルク本人の強さも弱さも
しっかり描くことによって、その魅力ある人物として惹かれ
さらに彼の持つ熱い「志」の高さを知るにつけ、
大いに心動かされる映画となりました。
それにしてもショーン・ペンってやつは…、
本当にお見事でした。
それはさておいても、『ミルク』には 感動があり、ショーン・ペンの巧さには脱帽。主演男優賞も大納得でした。
>様々なブログ上での感想を読み、異性愛でなければ違和感を持つ方の多いことに正直驚きました......まぁ現状はそうだと思います。違和感は持っても自分とは違う感性や考え方の存在を受容できる力をもつ人が増えていくことが大事だと思っています。
ジェームズ・フランコのスコットが別れた後もミルクと心がつながっている様子が切なくてよかったです。
★「俺の明日はどっちだ」のnikidasuさま
「命短し恋せよ若者!」......に反応していただき有難うございます(^^ゞ嬉しいです(笑)
>ハーヴェイ・ミルク本人の強さも弱さもしっかり描くことによって、その魅力ある人物として惹かれ.......ミルクのプライベートな側面を描く場面を増やすようにリクエストしたのはショーン・ペンだということで、そこまで役に惚れ込んで映画全体にも深く関わってくれたからこそ作品の奥行きが出たように思えます。
★「たまごのなかみ」のmayumiさま
mayumiさんの記事を読ませていただいていて、絶対に観るつもりでいたのですが、見つけられずにTBさせていただけていませんでした。TBいただいて有難かったですm(_ _)m
>こういう作品で 王子と語り合えるっていうのが......いいなぁ、羨ましいです。こういう硬派の作品だと娘がなかなか気軽に付き合ってくれないんですよ(^^ゞ
ショーン・ペンは「デッドマン・ウォーキング」の次がこれでしたが、すごい役者ですねぇ。マドンナが一時期パートナーにしたのも納得です。
「デッドマン・ウォーキング」も良かったし、この映画もいいセリフがありますね。