Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

20才のシューベルト その8(No.1775)

2010-08-04 23:14:47 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 2010年現在、D571 の演奏は下記3パターンに集約されている。


  1. 1楽章(D571)のみ演奏 → シフ など

  2. 3楽章演奏(D571+D570/2+D570/1) → 少数派

  3. 4楽章演奏(D571+D604+D570/2+D570/1) → 多数派


 この時代背景推移を明記しておく。滅多にないぞ!

  1. 1897年 ブライトコプフ旧シューベルト全集:補巻 にて D571 世界初版。単一楽章ソナタの断片として収録

  2. 1928年 ワルター・リーベルグスが「D570 が ソナタD571 の楽章」説を初めて唱える(→ 3楽章ソナタ説の始まり)

  3. 1966年 モーリス・ブラウン が「Essays on Schubert P207」にて「D604 が ソナタD571 の第2楽章の可能性」を唱える(→ 4楽章ソナタ説の始まり)

  4. 1976年 パウル・バドゥラ=スコダ が ヘンレ版楽譜にて「D604 が ソナタD571 の第2楽章で全4楽章を唱える(→ 4楽章ソナタ説の楽譜化)

  5. 1978年 ハワード・ファーガソンが「ブラウン説追認」して楽譜出版(→ 4楽章ソナタ説強化)

  6. 1998年 マルティーノ・ティリモが「ブラウン説+バドゥラ=スコダ説」を追認し楽譜出版(→ 4楽章ソナタ説強化)


である。尚、「D604 = 1816年説」に傾いているベーレンライター新シューベルト全集は、ブラウン説についても、バドゥラ=スコダがヘンレ版楽譜で出版したことも紹介しているが、D604 は「ピアノソナタ巻」に入れなかった。「問題未解決」扱いである。


 もう1度原点に戻る。モーリス・ブラウンは「D604 が ソナタD571 の第2楽章の可能性」を示唆したが、「D604 が 1816年9月作曲序曲D470 の弦楽四重奏曲用スケッチの余白に作曲」したことも併記した。つまり、

ブラウンは「調性はピタリ合致するが、自筆譜資料からはD604は1年前の作品の可能性」の方が高い


ことも知っていた。「可能性示唆」はしたが断定はしなかった。
 10年後、バドゥラ=スコダがヘンレ版楽譜にて出版したのが転機となった。

  1. ヘンレ版
  2. 王立音楽院版
  3. ウィーン原典版

と「指遣い付き3大原典版楽譜」が揃いも揃って「D571は4楽章ソナタ」で出版されたので、大多数のピアニストは4楽章演奏(緩徐楽章=D604)に走った。仕方ないか(爆


 ブラウンが懸念していたことは、ブラウンは相当に重大視していた。つまり「D604 が 1816年9月作曲序曲D470の草稿の余白に作曲されている」である。その為、

ブラウンは『見出しでは3楽章ソナタ説』を明記し、説明文のなかで「可能性」だけ記載


であった。バドゥラ=スコダがヘンレ版楽譜で出版された後は、洪水のように「D604 を第2楽章に据えた4楽章ソナタ説」が蔓延ったのだが(苦笑


 資料的には、

  1. 「D604 ≠ ソナタD571の第2楽章」が確率が相当高く

  2. 「D348 = ソナタD571の第2楽章」が確率が極めて高い


D348 は、ソナタD459A/3 よりも後に作曲された1817年のピアノソナタの緩徐楽章の可能性が極めて高い


からであり、D575 は初稿から「現行の楽章構成(順番は違う)」が確定しているので、D571 が唯一にして最有力候補である。「D459A/3 = ソナタ第3番」としても、残りの1曲が「D664」しか考えられないのが現状。D664 には立派な第2楽章(Andante)が実在しているので、D571の緩徐楽章と考えるのが最も自然である。
 他には「D459A/3 の第2稿で廃棄された」と考えることも可能ではあるが、弾いて見るとわかるが

完成度が D348 > D349


である。
 D348 はアンスネスの名演もCD化されている。D349の名演CDは無いよ(爆


 ここから先は断定は出来ない。私高本のこれまでの研究結果である。

「Sonate V」D571 は4楽章構成で、D571, D348, D570/2, D570/1 の順である。


 特に不自然な箇所は何も無い。第2楽章の補筆完成版も容易である。第1楽章と第4楽章の補筆完成版は(これまでのバドゥラ=スコダ版、ティリモ版は少し違和感あるので)さらにより良い版が待たれる。
 もし、上記構成が正しいならば、「第1楽章、第2楽章、第4楽章が未完成」である。全ての楽章で「再現部の記譜を省略」している。何をそんなに急いで記譜したのだろうか?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 20才のシューベルト その7(... | トップ | 20才のシューベルト その9(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

作曲家・シューベルト(1797-1828」カテゴリの最新記事