Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

晩年の名作 D916B+D916C の本来の姿 4(No.1746)

2010-05-13 18:44:08 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
(Taka)
2010-05-13 13:06:17
D916B+D916C
は、ピアノソナタとしてCD化された・・
みたいな話をチラッと聞きましたが、
本当なのでしょうか?

 本日、Takaさんから「コメント」を頂いたので、その顛末を書く。



D916B+D916C は、次のような順序で出版されました。

  1. 1978年 ドブリンガー社 世界初出版

  2. 1982年 ベーレンライター新シューベルト全集にて出版

  3. 1988年 ユニヴェルザール社 「忘れられたソナタD916B」の名前で出版


これがこれまでに出版された全ての楽譜です。他はありません。上の2種類は「自筆譜の通り」で、下の1種類が「補筆完成版」です。
 世界初出版の際に

D916B+D916C は、D899/1 に続く曲集であり、オペラ「グライヒェン伯爵」D918 の草稿と共に遺されていた


を発表し、続く ベーレンライター新シューベルト全集も同じように記載しました。

異論を唱えたのが ピアニスト=イエルク・デムス と 学者=ローランド・ゼルダー


です。新シューベルト全集刊行の2年後の1984年に精緻な楽曲分析を基に

D916B+D916C は2曲とも「ソナタ形式」で作曲されており、D916B = 冒頭楽章、D916C = 終楽章 説を唱えた


のです。中間楽章が無いと「シューベルトのピアノソナタ」には聞こえないので、「ドイチュ作品主題カタログ旧版(1951)」で同じ1827年作曲とされた 同じく未完成曲の アレグレット ハ短調D900 を中間楽章に据えます。そして、D916B+D916C と D900 の補筆を デムス&ゼルダー は1986年に完成させ、1988年に楽譜出版しました。
 デムスは 1987年前後にこの「忘れられたソナタ D916B(← このように表記していた)」を持って コンサートツアーを実施しており、日本でも東京で1回新宿文化センターで演奏しています。私高本も聴きに行っております。その時の演奏会プログラムかチラシか音楽の友にて「録音」の話は私も読みました。2010年の今ほど、輸入盤は入手が簡単な時代ではありませんでした。タワーレコード渋谷店がオープンしたのは1995年だったように記憶しています。
 デムスの演奏は面白かったので、録音を入手したいと考えていましたが、国内盤は発売にならなかったハズです。石丸電気の輸入盤コーナーも覗いていましたが、見付けることはできませんでした。
 来日時には既に録音はしていたようなのでおそらくCD化されたと思います。デムスは「広範囲のレーベルにて録音」しているピアニストなので、どのレーベルから発売されたかも掌握できておりません。


デムス&ゼルダーの補筆は素晴らしい!


ので、D916B+D916C は1人でも多くのシューベルトファンの皆様に聴いてほしいです。
 では、なぜ「デムス&ゼルダー補筆完成稿」が普及しなかったかについて、考察してみますと

既に1978年ベーレンライター新シューベルト「ドイチュ作品主題カタログ新版」に於いて、D900 は1820年頃の作品と確定していた


ことに尽きるように思えます。つまり「組合せに無理がある」のです。
 その為、「忘れられたソナタD916B」を弾くピアニストはデムス以外皆無のようです。もし、中古CDでも入手できれば聴いてみたい録音です。補筆自体は優れものです!

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2 コメント

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Unknown (Taka)
2010-05-17 19:55:37
Takaです。
お世話さまです。
先日は、[[2010-05-13 13:06:17]]に対して返信いただき、ありがとうございます。
文章内に、
>1.1978年 ドブリンガー社 世界初出版
とありますが、
この時点での楽譜に関してましては、純粋に2つのピアノ曲として、出版されたと聞いております。
確か、最初の曲(ハ長調)は、第2主題の途中までしか記されておらず未完成だった記憶でした
が、

後の文章の
>1988年 ユニヴェルザール社 「忘れられたソナタD916B」の名前で出版
を見ますと、
初出版以降から、イエルク・デムス氏により改訂されたということなのでしょうか?
また、
その改訂内容は・・・
■第1楽章:元の曲・D916b(ハ長調)
デムス氏改訂による完成版(締めも、ハ長調?)

■第2楽章:Allegretto ハ短調 D900を代用

■第3楽章:元の曲・D916c(ハ短調)
デムス氏改訂による完成版(締めは、ハ短調ではなくハ長調?)

という内容でよろしいのでしょうか?

もし、この改訂形式による楽譜が存在するのであれば是非入手したいと考えておるものです。

よろしくお願いいたします。。
返信する
Unknown (Taka)
2010-05-18 16:29:58
Takaです。
[[2010-05-17 19:55:37]]の追記です。

実は私、このD916b+D916cに関してまして、
(うろ覚えなのですが)
今から25年前(1985年<昭和60年>3月の終わりぐらいであったことだけは間違いありません)
番組名は、FMクラシックコンサートだったと思います。(確か)
その日は、イエルク・デムス氏のピアノコンサートだったかと思うのですが、
その中で、シューベルトのピアノ曲を幾つか演奏していたものです。
その中の一つに、
D916b+D916cがあり、
この曲を全曲聴き終わった直後の司会アナウンサーのコメントに
「イエルク・デムスさんの独奏で、ピアノソナタ・ハ長調、忘れ去られたソナタでした」

とあったことを憶えております。
それと私、この曲は一旦テープ録音していたのです。
ラジオ番組だったので、ラジオを流している中で録音していたものです。

しかし、そのテープを破損してしまって、テープ自体まともに聴けない状態となってしまって・・・(泣)
この曲を、まともに聴きたいと思って、レコード店や楽譜の売っているお店にいろいろと出向いたのですが、見当たらず・・・

その後に、(この曲に関する情報を)いろいろと調べたところ、
実は「未完成」のような、「実の曲はまた別にある」かのような・・・
曖昧な形でしか、情報が得られず・・・今日に至っております。

ただ、かれこれ何十年か経って、このサイトを見付けたとき、
この曲の詳細をある程度、掘り下げた形で知ることが出来たので、
この際、可能な限りは当曲の詳細を知りたい!
そして、聴ける機会があれば是非!と思いまして、
ここにてコメントをさせていただいたものです。
ですので、
昨日の私のコメントと併せて、D916b+cの何らかの情報が
もっと頂きたいのです。

宜しくお願い致します。。
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