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シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

ピアノソナタ D568 の稿問題5(No.1720)

2009-12-12 22:32:35 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

D568 の最大の特徴 = 全4楽章が中間スピードの「Andante - Allegretto(Allegro moderato)」間に収まっていて速度の起伏が少ないこと


である。これは「初稿 = 変ニ長調稿」D567 でも 「最終決定稿 = 変ホ長調」D568 でも全く変わらない。楽章数が「3 → 4」に増えただけである。


 「シューベルトファン」の方ならば

ト長調ソナタD894 も「Andante - Allegretto(Allegro moderato)」間に収まっている!


ことを思い出されるだろう。 名曲中の名曲の誉れ高い曲である。
 「他にないか?」と調べてみるとあるある!

ハ長調ソナタD840「レリーク」 も「Andante - Allegretto(Allegro moderato)」間に収まっている!


 ベーレンライター新シューベルト全集を含む 全ての既出楽譜で、誤って「第4楽章 = Allegro」と記載されている が自筆譜にはテンポ指定が無く、実際に弾いたピアニスト(バトゥラ=スコダ や ティリモ など)は皆「Allegro moderato」で弾いている。細かい音が多くて、Allegro では無理だ。
 ピアノソナタでは D568, D840, D894 の3曲で全てである。


 他の分野ではどうか? 交響曲は無い。弦楽四重奏曲も無い。ピアノ三重奏曲も無い。有名どころには、ピアノ五重奏曲にも弦楽五重奏曲にも無い。ピアノソナタだけに見られる事象なのだろうか?

 いやいや、もう1曲だけだけある。

弦楽三重奏曲変ロ長調ソナタD581(1817.09作曲) も「Andante - Allegretto(Allegro moderato)」間に収まっている!


 そう、D567 が作曲されたのが 1817年6月。D581 作曲が 1817年9月で、この曲は「全4楽章」構成。なかなか良い曲なのだが、編成が特殊な為か、ほとんど演奏もされなければ、録音も弦楽四重奏曲と比べると圧倒的に少ない。私高本も5枚しか持っていない。HMVで検索しても6枚しか無いから随分持っているんだな > 私高本


 整理してみたい。

シューベルト「Andante - Allegretto(Allegro moderato)」間に収まっている曲一覧



  1. 1817.06 ピアノソナタ 変ニ長調 D567初稿版(3楽章)

  2. 1817.09 弦楽三重奏曲 変ロ長調 D581(4楽章)

  3. 1825.04 ピアノソナタ第15番 ハ長調 D840「レリーク」(4楽章)

  4. 1826.10 ピアノソナタ第18番 ト長調 D894「幻想ソナタ」(4楽章)


が「作曲着想順」になる。これが全てと考えられる。「幻想ソナタ」の評価の高さと比較して、他の3曲の評価が極めて低いことは私高本の眼からは納得度が低い。


 D593 の「2つのスケルツォ」が作曲されたのは、D581 の2ヶ月後の1817年11月だったと筆写譜に記載されている。

実験的作品 = 弦楽三重奏曲D581 の後で「Allegretto or Allegro moderato」の舞踏楽章を追加を思い立つ


は自然なことに思える。

1817.11 の時期 = 交響曲第6番ハ長調D589 の作曲過程


である。つまり「初期ソナタ楽曲の総決算の時期」に当たる。「初期シューベルト」は決して「ソナタ楽曲」中心の作曲家では無かったが、ベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンを手本とした「古典派大作曲家」を目指していたようだ。オペラに傾注していたことは(中期にさらに顕著になるが)「当時の作曲家」としては当たり前であろう。


 この前提で考えた時に

D568/3 と D593/2 はどちらが先に作曲されたか?


と言う問題が「D568 最終決定稿の作曲時期」を特定する大きな要因となる。次回に詳述したい。

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