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全6曲シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品の全貌(No.2347)

2013-10-20 23:00:10 | 作曲家・シューベルト(1797-1828

全6曲シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品の全貌 = 友人たちのための曲集


 シューベルト作曲時代=初期の最初の曲=「糸を紡ぐグレートヒェン」D118 が作曲された1814年10月19日2ヶ月も経たない12月7日には、友人ヨハン・マイヤホーファー の詩「湖にて」に作曲されている。ミサ曲第1番D105の初演=10月16日の曲の素晴らしさに友人たちが「シューベルティアーデ」を開始した最初の作品である。
 1816年2月までに、シューベルティアーデは、友人や偉大な詩人(例えばゲーテ)の詩に曲を付けた「ドイツ・リート」と、友人たちで踊る「ワルツ」が中心でありこの2種類が豊富に演奏された。交響曲の代理としてのピアノソナタも2曲(D157, D279)作曲・演奏された。交響曲も2曲作曲された(D125, D200)し、オペラも1曲完成(D328)されたが、演奏用のパート譜さえ作られた形跡は無いので演奏されなかった。
 1816年3月に、ピアノソナタではなく、ヴァイオリンも加えた ヴァイオリンソナタ が2曲作曲された(第2番ニ長調D384, 第3番イ短調D385)。シューベルト自身がピアノを弾き、友人がピアノの後ろから楽譜を覗きこむ形でヴァイオリンを弾いた、と考えられる。ヴァイオリンの最高音は「3点F」である。演奏会は好評を博したようで、「第3番ト短調」D408 が「ソナタIII」として作曲された。第3番は、特定の友人宅で演奏されることをはっきり指定されて作曲されたことが明解に判る。なぜなら「モーツァルト時代に61鍵盤のピアノ」のために作曲されているからだ。ヴァイオリン音域もピアノに合わせたのか4度も低い「3点C」止まり。しかし、書法は飛躍的に進歩し、特に第4楽章が前作までよりも説得力を持って来た。
 3連作の手応えは抜群に良かったようであり、直後から「ヴァイオリン協奏曲ニ長調D345(単一楽章)」「交響曲第4番ハ短調D417」「ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのロンド イ長調D438」「交響曲第5番変ロ長調D485」が1816年中に作曲されたが、どれ1曲も演奏されることは無かった。
 20才1817年は「ピアノソナタの年」であり、3月から8月にかけて8曲作曲され全てシューベルティアーデで披露されたと考えられる。勿論シューベルト自身のピアノ演奏だ。「ヴァイオリン+ピアノ」をまた友人たちの前で披露するために、ヴァイオリンソナタ第4番イ長調「大二重奏曲」D574 は1817年8月に作曲された。規模が前年3曲をはっきり上廻る。最高音は「3点A」に達した。
 それから9年間はヴァイオリン曲の依頼は無かった。フルートとアルペジオーネの依頼があっただけである。1826年10月状況が一変する。ピアノソナタ第17番ニ長調作品53D850 を献呈し初演してもらった友人 = 技巧派ピアニスト = カルル・マリーア・フォン・ボクレット(25) が 技巧派ヴァイオリニスト = ヨーゼフ・スラヴィーク(20) と共に「ヴァイオリン+ピアノ」曲を依頼した。シューベルトは以前作曲した「ヴァイオリン協奏曲ニ長調D345(単一楽章)」「ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのロンド イ長調D438」のような「協奏曲的単一楽章」の「華麗なるロンド ロ短調作品70D895」を作曲する。このロンドが、シューベルト後期作品で親しまれている「伝統的なソナタ4楽章では無い形式の小品群」の作曲にきっかけとなり、「即興曲集」「楽興の時」などの人気作が次々と1年半の間に産み出されて行った。ヴァイオリンもピアノも技巧的に描き込まれ、ヴァイオリンは最後の最後で「3点H」を高らかに鳴らして終曲する。あまりに評判が良く、早くも1827年4月19日にはアルタリア社から出版された。
 この成功に気を良くしたシューベルトは、1827年12月に 幻想曲ハ長調D934 を作曲する。意気込んだシューベルトは、ヴァイオリンにもピアノにも前作以上の技巧を山盛りにして作曲。ヴァイオリンの最高音は、前作よりも半音高い「4点C」で、しかも3回も出現し、しかも内1回は「ffの3点Hとの64分音符での付点4分音符の長いトリル」がある! シューベルトは、ピアノパートは「さすらい人幻想曲作品15D760」 以外は、音域も跳躍もそれほど広く取らない作曲家であるのに、ピアノパートまで「さすらい人幻想曲」並みに超絶技巧の連続! 「この技巧の超難易度が初演で成功しなかったのか? 批評は極めて悪かった。その為か、生前出版にも失敗し、続く作品は作曲されなかった。

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