パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

老いの歌

2012-01-01 | book
新年を迎え、高齢時代の日々を生きる我々には一日一日と老いが迫っている。おめでたい日にあえて、死へのカウントダウンを考える。

岩波新書の『老いの歌-新しく生きる時間へ』を読んだ。2011年8月刊。著者の小高賢は、1944年生まれというから67歳になる。多くの和歌とともに、我々にその生き方を問いかける。

日本は高齢社会にいる。平均寿命は、明治から大正にかけて、男女とも43.4歳、まさに人生50年時代だった。それが、昭和30年1955には男性が63.6歳、女性が67.75歳。昭和60年1985年には74.78歳、80.48歳。平成21年2009には79.59歳、86.44歳になる。この半世紀で約20歳も寿命が延びたことになる。

しかし、このような状況は過去にはない。つまり、日本人がはじめて迎える状況なのだ。未知との遭遇ともいうべき時間がすでに来ている。定年が60歳としても、そこから20年、30年という長きに渡る時間が待っている。それは決してバラ色の空間ではなく、老いはもちろん、介護や闘病といった日々が同居するのだ。その生活を、多くの高齢者が親しむ和歌五七五七七の31文字の世界でを紹介した。

恋、死といった人生50年時代の和歌だけではなく、新たに体、病、食といった日々の暮らしがほとばしる世界。老いという大きな河を漕ぎ出す我々に、痛みや恐れ、苦悩が、あきらめ、なぐさめ、ジョークといった思いでこぶしのように突きあがる。この本で紹介される多くの歌が、今、私たちがいる世界をまざまざと見せ付ける。この現実をどう生き抜くか。浄土に戻るまで。
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