そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

このどさくさ紛れに安倍晋三は食料自給率を数字上で一気に逆転をしようとする

2020-03-31 | 食料自給率

新型ウイルスの蔓延のどさくさに紛れてて、政府は一気に食料自給率の向上を狙っている。実際食料自給率の計算は多様で様々な方法があり、世界で統一されているわけでもない。
日本は最も”食”の在り方、根源的な方法として、カロリーベースで行っている。これは世界のスタンダードというわけではないが、ヒトが食べものとして必要なカロリーをどこに依存しているかの基準になるものである。現在自給率は38%とか過去最低である。
経済団体が推すのが、金額ベースの自給率である。これは飼料用穀物を大量に輸入している日本などは、すなわち安価な穀物を大量に家畜に与えて、高価な畜産製品に代えている国は、自給率が上がることになる。大量に穀物を購入し大量に畜産生産する、こうした形態はいわば「畜産加工業」と言われるものである。先進国がこうした形態をとってきたが、近年矛盾を抱える食料問題や環境問題に大きな問題を起こしている。
金額が絶対ならそれでもかまわないが、金額は食料の本質とは無縁のもので、日ごと変動するものである。金額ベースが食料自給の基準になるかは大いに疑問のある所である。
日本はお米など概ね1000万トン近く穀物を生産している。そして概ね3000万トンの穀物を輸入している。そのうち2000万トン近くが、家畜用である。消費量が4000万トン近くあるので、穀物ベースの自給率は25%ほどということになる。
日本では人と家畜はほぼ同量の穀物を消費している。極めて不自然なこうした食料事情はあまり知られていない。
例えば大型高泌乳酪農家の乳牛は、年間1万キロ泌乳するが、給与される穀物は3千キロほどである。生乳は水分が85%ほどであるから、1.5トンの牛乳を3トンの穀物給与で行うことになる。固形分比較で半量にするのである。こうした食料を消耗するスタイルを基準にすることは許されない。
今政府が検討しているのは、食料自給率の数字から家畜用の飼料用穀物を外すことである。こうすると食料自給率は、輸入する2000万トンの穀物が外されるので金額ベースをも上回り、一気に70%の半ばになる。
安倍晋三が兵器や武器を”防衛整備品”と呼び名を変えたり、GDPの基本データーを恣意的に変更したり、集団的自衛権行使容認を言葉上の解釈で変えてきたり、どこからどう見ても空母をヘリコプター搭載艦船と言い張ってきたことに酷似する、全く汚いやり方である。
今また、食料自給率を食料生産せずに、あるいは農業政策の失敗を覆い隠すために、これまで堅持してきた基準を変えようとするのである。欺きの手法である。

羅臼港

春誓い羅臼港