靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)が3月18日、映画館での上映とりやめになりました。別の上映予定館も右翼の街宣車が押しかけ、「『靖国』の上映を中止しろ!」と叫んで、上映中止運動を展開しています。
自民党の稲田朋美議員たちが、「反日映画に政府出資の基金から助成金が出ていることがおかしい」と、国会内で3月12日に「試写会」を行いました。これは、与党議員らによる、権力者側からの明らかな「検閲」である。
稲田議員らは「ある種のイデオロギー的感じ」「こうした映画兵の助成は好ましくない」と結論付けた。
メッセージ性のないドキュメンタリー映画が存在しうるのかとも思うが、これは明らかな国家権力側の「検閲」である。国家あるいは権力者側が、気に入らない言論や主張を抑え込もうとする、あからさまな歴史への逆行である。それこそ、彼女たちの行為の方がよほど偏向されたものであるといえる。
映画「靖国」は、8月15日に繰り返される騒ぎを映した後に、靖国神社のご神体の「靖国刀」を、老刀匠が打つ姿をナレーションなしで描き出したものだそうである。自民党の右寄りである鈴木邦夫や島村宜伸議員ですら「自虐史観に基づいていない」と発言している。また、今年の香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞している。
右翼の街宣車による圧力で、この映画を上映しようとする映画館が取りやめ始めた。4月の上映館は中止した。稲田議員たちは、それだけで当初の目的を達成したと思うことだろう。映画公開そのものができなくなくなれば、彼女たちはそれでいいのだ。日教組に会場を違法行為と判っても、取りやめたホテルの例が思い起こされる。
こうしたことの報道が極めて少ないことも気になる。何だか恐ろしい世の中になってきた気がする。
オフィシャルサイト http://www.yasukuni-movie.com/