「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」(代表醍醐聰東京大学名誉教授)によると、日本がTPPに参加した場合の全産業の生産減少額は10兆5000億円にのぼり、農家の所得も全国で3483億円減るという試算を、22日に「公表した。会は、政府資産の問題点を微細に分析しているが、以下は会の文章そのままである。
① 「政府統一試算」ベースによる農林水産物等の生産減少額(2兆9,680億円)により、全産業の生産減少額は、約10兆5千億円にのぼる。
② 「政府統一試算」でいう農林水産物の生産減少額は、他産業への影響からの「跳ね返り効果」5千億円を含めて、最終的に約3兆4,700億円の減少となる。
③ 就業者に与える影響(雇用効果)は、「政府統一試算」の対象品目の生産に係る農林水産業で約146万人、全産業で、約190万人の減少となる。
④ 企業・家計の所得など国民総生産(GDP)に与える影響は、約4兆8千億円の減少となり、GDPを1.0%押し下げる。
※ GDPは、09~11年度平均約489兆円(内閣府経済社会総合研究所)
⑤ 生産減少、就業者数の減少を通じた家計消費の減少額は、約2兆7千億円となり、GDPの1.0%低下のうち、0.6%分の寄与となる。
会は、TPPは関税撤廃について7年~10年の猶予期間は認めても、その後は必ず撤廃することが大前提になっている。むしろ例外というのは10年の猶予期間が取れたことだと誤魔化して、除外の意味を変えてくることことに注意が必要だと警告している。
試算の大きな違いの一つの例として、十勝などの連作を上げている。政府の試算では、てん菜と馬鈴薯それに小麦は壊滅状況になるだろうが、小豆は30%ほど生き残るというのである。これらの作物は連作が効かない。毎年作り続けることができないのである。輪作の一部は生き残るとする判断は、農業を熟知しないお役人の典型的な机上論である。
一連の政府の試算は、関連企業の跳ね返り効果とその代償について、正確な評価をしていない。雇用不安に伴う関連産業の減少などの評価が不徹底である。政府は今回出された、専門家と現地の声や現状の分析の精度を高めて、TPP参加を即時中止するべきなのです。新参者の日本は、TPP協議で叩かれることははっきりしている。交渉力などそもそも存在しないのです。
この50年で日本の地方はすっかり疲弊してしまいました。輸出産品の代償に、農産物を輸入してきたからです。人的な供給も、農村がやってきました。かつては、都会の人たちには古里がありましたが、すでに定着している地方出身者たちも、2世・3世になって、農村の現状や食糧の生産することの重要性も、農村文化も理解できなくなってしまいました。
TPPはそうした中でもわずかに生き残ってきていた農業に、さらに大きな打撃を与えることになります。農家所得を倍増するのではなく、農家戸数を倍増するか生産量を倍増しなければ、豊芦原瑞穂の国の文化的基盤はなくなってしまいます。