BSEに関する10月29日のブログに少々誤解を招く内容がありましたので、補足しま す。BSEの全頭検査を行い、ゼロリスクを目指すのは無意味だという意見があります。経費の無駄遣いだと、国もこうした意見に沿う形で全頭検査を止めました。現在は、各地方自治体が「自主検査」という形で、全頭検査を行っているのです。国は、全頭検査を放棄したのです。
BSEの確定診断は、脳にある異状プリオンを化学的反応で検出する検査に加えて、脳を病理学的に空包を見つけることで補足しています。
この異状プリオンにたいして、生体は異物としての反応をしません。抗原抗体反応がないために、生前の診断はできないのです。将来とも難しいのではないかと思います。
この異状プリオンは、口から取り入れられて消化管から吸収されます。3年ほどして脳に 至り、空包形成(スポンジ様、海綿状の脳)をします。その間、脳脊髄に至るため、屠場で指示通りの解体を行なえば20ヶ月だか30ヶ月以下の検査は不要というのが、政府のお抱え機関、学者の意見です。
しかし、腸管からすぐさま脳脊髄に、核酸のない蛋白物質でしかないプリオンがすばやく至るとは思えません。つまりその間には、生体のどこかに異状プリオンがあるはずです。全頭検査は、ゼロリスクを目指す我侭だという論拠はないのです。全頭検査でもリスクはあります。止むを得ない事だと思います。
肉骨粉からは異状プリオンは検出されていませんが、英国の20万頭のBSE発生から見ても、肉骨粉は原因だとは思われます。しかしながら、今までの経過を見ていると、肉骨粉だけでは、発病の全てを説明するとは到底思えないのです。
私は乳牛の臨床獣医師です。消費者の安全もさることながら、牛の健康に関心があります。原因が究明されない限り、不治のBSEの予防はもとより、酪農家の指導もできるはずがありません。
現在の、全頭検査とあわせて個体識別が徹底されることで、はじめてそれらが可能になるかも知れないのです。
原因の究明を放棄して、「発生したら金は出すから、悪いようにはしないから」とする姿勢はこの国の農政に一貫しています。