そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

iPS細胞の劇的な展開の現状と今後

2016-05-25 | iP細胞
iPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)が人々の目に触れるようになって10年経った。京都大学の山中教授が人工的に、異なる臓器などに成長する細胞を作り出したと発表したのが、今から10年前の2006年である。この間山中教授はノーベル医学賞を受賞するなど、きわめて大きな社会的変化があった。
iPS細胞が製作されたもっと大きな目的は、再生医療である。これまでの医薬品などによる治療は、生体が自らが治癒してゆく過程を助けるものと言って過言でない。しかし根本的に失ったものは再生することができない。また、癌などに犯されたりして、生体の回復機能が失われたときなどに、臓器などが新たに作られるのを助けるのが、iPS細胞を用いた治療である。自らの細胞から作られた、iPS細胞なので臓器移植が抱える拒否反応がない。夢の治療と言われるものである。

山中教授が目指した情報の開示によって、新たに様々な分野への広がりが生じている。最も危惧されていた、移植細胞のがん化であるが、「ゲノム編集」という処置が施されることによって、癌化への危惧が格段に下がった。
治療には本人から多量のiPS細胞を作り出すため、一回の治療に5000万円かかるといわれ、臨床応用への最大のネックになっていた。ゲノム編集などによって安全性の確認し、あらかじめ蓄え置けることができるようになり、iPSバンクが設けられる見込みとなってきた。これだとコストが格段に安くなり臨床応用の幅が広がることになる。
iPS細胞を用いた「創薬」が可能になる。病気の細胞を作り出して、研究室の試験管内で医薬品の効果を観察し評価することが可能になった。医薬の開発がスピードアップするばかりではなく、実験動物を用いた試験をすることがほとんどなくなるのではないか。より一層の安全な医薬品の開発が可能になる。
再生医療はこれまでほとんど手が付けられなかった難病や、特に再生が困難な神経系の損傷による障害に道を開くことになるだろう。ほどなく、臨床応用第一号の網膜障碍者の治療にiPS細胞の応用第一号が行われることになるだろう。

小保方の失態で今後の日本の学術レベルが問われることになる

2014-12-20 | iP細胞
大学の同窓会が夏にあった。旧友の懐かしい顏の中に、数二人の研究職の人物がいた。彼らに小保方氏のSTAP細胞についての質問をした。誰もが異口同音に、彼女の研究結果に異を唱えた。研究経過が不鮮明であるばかりか、研究姿勢の根本を問われる失態を繰り返していたからである。過去のデーターや画像を用いていたこともあるが、生成の過程があまりにも単純であったからである。それにしても、いずれ必ずなぜばれるようなことをしたのか、Yく理解できない。
何よりも、彼女の「STAP細胞はあります」という、語気を強めた発言である。これは誰が見ても研究者の発言ではない。研究者あるいは科学者であれば、客観的に証明できる手法を説明手段にしなければならない。この時の彼女の発言は、感情を込めた30歳の女性の発言レベルでしかない。
理研が期限に至る3カ月も前に、検証を打ち切ったのは賢明である。STAP細胞が成功していれば、臨床の場面で必ず倫理的な問題や、がん細胞化などの病理変化に至る可能性が浮上する。仮に今後STAP細胞の作製が成功するようになっても、今回の怪しげな成果に対する評価を中止した判断は評価したい。
自殺した世界的な科学者の笹井氏は、多分このことを予見していたのではないだろうか。どのあたりかで、彼は小保方氏の研究論文に疑問を抱いたに違いない。自らの経歴の中にこの不祥事を組み込まれるのに耐えられなかったのであろう。
こういった不祥事はないにこしたことはないが、今後の科学の在り様への警鐘となるならと思われる。この事件で、各大学のドクター論文の検証が一気に厳しくなったと聞く。それも成果の一つとして評価したいものである。
それにしても、マスコミの騒ぎ様は美人のリケジョの科学的な成果を思い切り落ち上げた。話題性を内容ではなく評価する姿勢は御免こうむりたいものである。

羅臼港

春誓い羅臼港