■「挑戦は、始まった『CO2ネット・ゼロ』へ」「私たち東京ガスグループは、世界最大の都市ガス事業者であるとともに、電気の販売、国内外にエネルギーソリューションを提供するエネルギー企業グループです。2030年までに1,000万トンのCO2削減に貢献し、人と地球に最も配慮したエネルギー企業グループを目指しています」と誇らしげに統合報告書2021の冒頭に記している東京ガス。そのためのアクションとして、2020年1月に群馬県安中市岩野谷地区で稼働したばかりの関東最大級のメガソーラー施設「安中市太陽光発電所」を同年2月12日にタックスヘイブンの外資ペーパー会社から買い取ってからほぼ2年が経過していますが、相変わらず、自社に都合の悪い情報の開示には消極的であることが判明しました。2021年3月から6月にかけて、大量の土砂を積んだダンプが施設内に搬入されたことが地元住民により目撃されたのが発端です。
何か土砂崩れが発生したのではないか、と直感した当会はさっそく地元関係者からヒヤリングするなどして調査を行いました。その結果は以下のブログを参照ください。
〇2022年7月27日:関東最大級のメガソーラー・・・東京ガスの安中合同ソーラー安中市太陽光発電所で土砂崩れか↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/d/20220721
ちなみに2022年3月の群馬県内の各地の降水量は以下のとおりです。
これを見ると、3月18日に30ミリ前後の雨が降ったことがわかります。当日の気象概況を調べると「前線を伴った低気圧が九州北部を通過後、本州の南を東進。雨雲が西から次第に東へ。局地的に雨雲が発達し、1時間降水量の日最大値は沖縄県名護で61.0ミリ、宮崎県延岡38.5ミリなど、所々で3月1位の値を更新。九州南部や奄美は南風が強まり、春一番」とあります。
それまでほとんど降雨の無い日が続いたあと、日量30ミリ程度の雨が降った3月18日ですが、この雨で東京ガスのメガソーラー施設敷地内で土砂崩れが発生したことになります。このメガソーラー開発計画時の地元説明会で、施工業者の東芝プラントは、土砂崩れが絶対に起きないように万全の対策をとると明言していましたが、実際には造成中も、そして今回、造成後にも土砂崩れが発生したことになります。
■こうした土砂崩れなどが発生した場合、東京ガスは協定書に基づき、地元自治体および地元住民に遅滞なく報告しなければならないはずです。しかし、実際には地元住民には何も情報が伝えられませんでした。そのため、当会は独自に調べた土砂流出(洗堀)事故について、当事者の東京ガスに確認してみることにしました。
なお、現時点で稼働中のメガソーラーではおそらく関東圏では最大級のこの大規模太陽光発電施設の2020年1月以降の経緯は次の通りです。
○2020年1月5日:関東最大級の安中ソーラー合同会社のメガソーラーがついに1月3日から送電開始!↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/2caca58c20d911700f17248e5974fef1
○2020年3月1日:1月3日に送電開始したばかりの関東最大級の安中ソーラーが早くも東ガスに身売り!↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/0414916f97f76180dd181f7665835e69
〇2020年8月19日:関東最大級メガソーラーを2月12日に買い取った東京ガスに出した質問状の回答に滲む上から目線体質↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/ae5933ff737a149f72dc388111f64541
■それでは当会が東京ガスに宛てた質問書を見てみましょう。
*****10/28東京ガスあての質問書*****
2022年10月28日
〒105-8527
東京都港区海岸1-5-20
東京ガス株式会社 エネルギー需給本部
再生可能エネルギー事業部
再エネ第一グループ 御中
質問者:〒379-0114
群馬県安中市野殿980
小川 賢
電話090-5302-8312
FAX027-381-0364
件名:安中市岩野谷地区の貴社メガソーラー施設にかかるご質問
前略 平素より、地元での再生可能エネルギー事業に取り組んでいただき厚く御礼申し上げます。
さて、貴社が2020年2月12日に取得した安中市太陽光発電所」(以下「本発電所」)について、以下の情報をお伝えしますので、できる限り詳しく教えてください。
【質問者が得ている情報内容】
本発電所の稼働から2年が経過した2022年の3月ごろから、地元東野殿と水境地区にある農免道路を20トン以上もある大型トラックが何台も通行するのを地元の住民らが目撃しました。農業振興用の道路なので、路盤がさほど強くないため、大型トラックの通行により路面が損傷し、クラックが多数発生したり、路面が沈下したりする現象が発生しました。
住民の皆さんからの情報によると、これらのトラックは、本発電所に出入りしていたとのことです。
事実関係を確認するために、7月20日に東京ガスから委託を受けてメガソーラー施設を管理する会社の関係者に確認したところ、降雨により施設内の管理道路などが洗堀されたため、埋め戻したり補強したりするために、外部からコンクリートを混ぜた砕石や砂などを大量に搬入して補修工事を「佐田道路株式会社」が請け負って施工したことがわかりました。
他方、地元住民の皆さんからの情報では、地元の生活道路である農免道路を頻繁に走っていた20トン以上の大型トラックには「浅川商事」というロゴマークが目撃されたとのことです。
こうした大型トラックは、本来、県道前橋・安中・富岡線から、大谷地区の西谷津に15年前に作られたサイボウ環境株式会社の一般廃棄物最終処分場の搬入用道路として業者の資金で完成後、安中市に寄付されて認定道路になった市道を使って、サイボウ環境の最終処分場の南側にある東京ガスのメガソーラー施設に出入りしなければならず、それ以外のルートの走行は禁止されているはずです。
事実関係を確認すべく、さっそく佐田道路(電話027-268-6022)に電話をしました。受付の女性職員に、用事を伝えると30分後に、同社の本件工事を担当したという深津氏から電話がありました。
同氏の話によると、依頼者(東京ガスもしくは管理委託会社の鹿島建物(株)かは不詳)から要請を受けて、2022年3月29日から6月10日まで工事を行ったとのことです。そして、砕石など補修用の土木資材を満載したトラックは、県道前橋・安中・富岡線からサイボウ環境の処分場の搬入道路を経て、処分場の周辺に沿って上り、一番高い場所から東京ガスのメガソーラーの入り口まで鉄板を敷いて施設内に入り、土木資材を下した後、同じルートを戻って県道に出るようにチェックをしていたとのことでした。
そのため、本当にトラックが往復ともに指定のルートを通行していたのかどうか、再度念を押して確認を求めました。すると、同氏は「搬入する場合のみ確認したが、トラックが戻るルートについては確認していたわけではない」ことを認めました。
質問者は、地元住民の皆さんが、実際に、サイボウ環境の最終処分場の入り口前から、水境地区にある司ラーメン店脇の信号機のある県道との交差点に至る農免道路で、「浅川商事」とロゴを付けたトラックが何度も通行しているとの目撃情報を得ていることを佐田道路の深津氏に告げるとともに、「事実関係を確認してほしい」と要請しました。すると深津氏は「確かめて、結果を報告する」と言いました。
すると1時間半後の午後5時半ごろ、深津氏から連絡がありました。それによると浅川商事に確認したところ、「復路で指定されたルートを通らずに、近道となる農免道路を2回程度利用した」ことを認めたそうです。そのため、実際に浅川商事のトラックが農免道路を走っている様子を目撃した地元住民らにこのことを伝えると、「2回なんてものじゃない」と述べていました。
そして午後6時に再び深津氏に電話し、「2回どころじゃないという目撃談を得た。いずれにしても、大型トラックが路盤強度の無い農免道路を通行するとたちまちアスファルト舗装が痛み、クラックや沈下が起きて、そこから雨水が入り込み路盤や路肩を洗堀したり、雑草が生えて道路管理上も支障をきたすことで、結局その補修費用や補修作業は地元住民にもしわ寄せがくるので、二度とそうしたルール違反が起きないように徹底してほしい」と申し入れました。
質問者としては、かねてから大規模な造成に伴う土砂の洗堀や土砂崩れのリスクを懸念していましたが、早くもメガソーラー施設内のあちこちで実際に土砂の流出が発生し、その補修作業に2か月半近く要したことを重視し、このままだと今後も同様な事象が起きると考えています。
そのため、今後も継続的に工事を請け負うと思われる佐田道路に対して、再発防止を強く申し入れたものです。深津氏によると、浅川商事のほかにも資材運搬業務に携わった会社のトラックが出入りしていたということで、同氏は質問者に対して「今後は出入りするすべてのトラックについて、往路も復路も指定ルートを必ず通行するよう徹底します」と約束しました。
つきましては、次の質問があります。
【質問1】
上記の情報について、どの程度ご存じでしたでしょうか?
【質問2】
上記の情報で、誤っている部分がありますでしょうか?もしあれば、ご指摘ください。
【質問3】
貴社が把握されている施設内で発生した上記の洗堀状況は、どの程度の規模で、原因は何だったのでしょうか?修復前の写真などあればお願いします。
【質問4】
修復のための対策工事の内容について教えていただけますでしょうか?工事の場所、期間、費用もお願いします。また、工事後の写真などあればお願いします。
【質問5】
この洗堀が事実とすれば、その原因は何だったとお考えでしょうか?
【質問6】
この洗堀と補修について、行政や地元にはどのように通知していますでしょうか?通知していない場合、その理由を教えてください。
つきましては、誠に恐縮ですが、2022年12月15日(木)までに上記質問へのご回答を書面で質問者の連絡先あてにお願いいたします。
草々
**********
■すると、当会が海外取材中の12月8日に東京ガスから電話がありました。「12月15日までに回答するのが難しい」ということでしたので、当会が「12月15日までに返事をもらっても、すぐには確認できないため、翌週でも構わない」とコメントしたところ、12月21日付で以下の内容で回答書が郵送されてました。
*****12/21東京ガスからの返事*****
書類送付のご案内
2022年12月21日
小川賢様
東京ガス株式会社
再生可能エネルギー事業部
砂田良知
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、下記の通り書類を送付いたしますので、ご査収下さいますようよろしくお願い申し上げます。発送が遅れまして恐縮です。
敬具
記
●「回答書」 1通
以上
=====12/21東京ガスからの回答書=====
2022年12月21日
小川賢様
東京ガス株式会社
群馬安中太陽光発電合同会社
回答書
平素より、弊社太陽光発電事業への格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
2022年10月28日付「安中市岩野谷地区の貴社メガソーラー施設にかかるご質問」につきまして、以下の通り回答申し上げます。今後も地区の皆様のご理解、ご協力を賜りながら安全な発電事業に努めて参りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
【質問1】
上記の情報について、どの程度ご存じでしたでしょうか。
ご記載の通り、今年3月から6月にかけて洗堀対策工事を行っており、当該工事を佐田道路株式会社に発注しております。受注者が通行するルートが、農免道路でなく県道前橋安中・富岡線からサイボウ環境の脇に続く道路であることは承知しておりました。
【質問2】
上記の情報で、誤っている部分がありますでしょうか?もしあれば、ご指摘ください。
ご記載の通り、今年3月から6月にかけて洗堀対策工事を行っており、当該工事を佐田道路株式会社に発注しております。弊社を当事者とする情報を除いては、大変恐縮でございますが、正確性について分かりかねます。
【質問3】
貴社が把握されている施設内で発生した上記の洗堀状況は、どの程度の規模で、原因は何だったのでしょうか?修復前の写真などあればお願いします。
施設内の勾配のある数ヶ所に洗堀が生じております。大雨が原因と考えられます。
【質問4】
修復のための対策工事の内容について教えていただけますでしょうか?工事の場所、期間、費用もお願いします。また、工事後の写真などあればお願いします。
今後の大雨に備え、排水路の溢水対策工事や構内通路の洗堀対策工事を今年の3月から6月にかけて行っております。
【質問5】
この洗堀が事実とすれば、その原因は何だったとお考えでしょうか?
洗掘は大雨により生じたものと考えております。
【質問6】
この洗堀と補修について、行政や地元にはどのように通知していますでしょうか?通知していない場合、その理由を教えてください。
群馬県と安中市の各関係部署に通知しています。
以上
**********
■当会が入手した情報を詳細に提示して、どこまで事業者として把握し認識しているのか問い合わせたにも関わらず、「弊社を当事者とする情報を除いては、大変恐縮でございますが、正確性について分かりかねます」などと、ぞんざいな返事には驚かされます。
また、土砂流出(洗堀)の発生原因について、東京ガスは「大雨」としか示しません。日量30ミリの決して激しいとは言えない雨量で、なぜ大規模な事故が発生したのか、施工に問題があったのではないか、と誰でも心配するところですが、東京ガスは、そうした地元住民の不安は他人事のように感じているとしか思えません。
さらに東京ガスとして、地元住民への報告をした経緯が見当たりません。他方、群馬県と安中市には「各関係部署に通知しています」と言っていることから、群馬県と安中市に対してどのような報告をしたのか、情報開示請求を行う必要があります。
ちなみに安中市環境政策課に聴取したところ、「6月に東京ガスの担当者と上席がやってきて、土砂流出の報告をしてきた記憶がある」とのことです。なお、安中市からは地元区長には何も報告していないそうで、地元軽視、大企業重視の安中市役所の姿勢がここにも垣間見ることが出来ます。
【ひらく会情報部】
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