市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

東アジアで新たな緊張を高める中共を抑えるには、台湾との連携強化が今こそ不可欠

2022-08-11 22:14:30 | 国内外からのトピックス




■台湾の人たちが「6枚のサロンパス」と呼ぶ、中共政府が設定した台湾を取り囲むかたちの6か所の軍事演習区域ですが、なぜ中共は台湾を自分の領土だと言い張るのでしょうか。そもそも、第二次大戦で日本が敗戦国として台湾から撤退すると、戦勝国になった中華民国が統治することになりましたが、蒋介石総統による台湾支配は、汚職や腐敗、犯罪増加など、社会不安を招き、1947年2月28日に起きた二・二八事件を契機に白色テロとよばれる日本教育を受けた知識人らが多数殺害され、1987年7月15日0時まで全土に戒厳令が敷かれました。

 このように中華民国の蒋介石が率いる国民党の支配となった台湾は、戦勝国として国連の常任理事国でしたが、1987年7月14日に国連でのアルバニア決議により、蒋介石の代表を追放し、中共が正式な後継者となることが採択されたため、これに抗議した蒋介石が中華民国の国連脱退を決めたのでした。

 したがって、中共が台湾を自国の領土だと主張するのは不当であり、台湾は、一時的に蒋介石の独裁政治を経たものの、まごうことなき独立国家です。

■こうしたなか、8月2日、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問しました。このニュースを聞いて、なぜかそれまでにも米国の議会関係者が台湾を訪問しているのに、それまでになく中共が怒り狂ったのでした。

 台湾を自分の領土だと主張している覇権主義国家政府の中共は、このニュースが出た瞬間、いきなり以下の行動を開始しました。

行動その1:ペロシ議長が台湾に着くのとほぼ同じ時間に、21機の戦闘機を発進し、台湾の防空識別圏に侵入。

行動その2:さらに同日、台湾のすぐ向かい側に戦車や軍用車両を集結させ、長距離ミサイルの発射訓練を実施。

行動その3:中国軍の空母「遼寧」「山東」の2隻が母港を離れて南シナ海に出港。

行動その4:ペロシ議長が台湾を離れた後、8月4〜7日の日程で中共が軍事演習の実施。実際には8月10日まで延長。

■中共が軍事演習を実施した場所は、冒頭に示した「サロンパス6枚」で、台湾周辺の海域を6ヶ所、ぐるりと取り囲み、実弾を使った大規模な訓練で、しかも、この場所は台湾の領海に堂々と入っており、日本の排他的経済水域まで含まれていました。

 そして、この軍事演習で中共は、これら「サロンパス」に向けて、8月4日夜、弾道ミサイル9発を発射し、そのうちの、演習対象海域に設定されていた日本の排他的経済水域(EEZ)内に、5発を落下させました。

 さっそくその直後、岸防衛相は「我が国の安全保障と国民の安全に関わる重大な問題で、強く非難する。中国のミサイルが日本のEEZ内に落下したのは初めてと認識している」と述べました。

 また、防衛省で把握しているうち、ミサイルが最も日本の近くに落ちたのは与那国島の北北西約80キロのEEZ外の海域だという。
 

↑中国軍の弾道ミサイルが落下したとみられる海域↑

■台湾の領土の目と鼻の先で、しかも実弾を使って演習するとは、まさに独裁国家の極みです。あらかじめシナリオを練っていたものと見られます。

 今後の台湾情勢にはますます目が離せません。とりあえず、今回の一連のできごとについて、メディアの報道を末尾に掲げておきます。

【群馬県台湾総会書記からの報告】

※関連情報
**********日経2022年8月4日 17:05 (2022年8月4日 23:20更新)
中国が台湾沖にミサイル、日本EEZ内に5発 外相会談中止

↑中国人民解放軍の東部戦区が4日、ミサイル発射演習の一場面として「微博(ウェイボ)」に投稿した映像=共同↑
【北京=羽田野主】中国軍は4日、台湾周辺で演習を開始した。台湾東部沖へ複数のミサイルを発射したと発表した。岸信夫防衛相は同日夜、日本の排他的経済水域(EEZ)内に5発が落ちたもようだと明らかにした。中国の弾道ミサイルのEEZ内落下は初めてだという。
 中国の軍事演習はペロシ米下院議長の台湾訪問に反発したもので、台湾を取り囲むように6カ所の対象地域を設定した。中国軍は域内への一般船舶や航空機の進入を禁じた。


 日本の防衛省はEEZ外に落ちたものを含め計9発の弾道ミサイル発射を確認した。5発は沖縄県・波照間島南西のEEZ内で、中国が設けた演習地域に落下したと推定した。
 発射場所は中国内陸部、福建省沿岸、浙江省沿岸の3カ所だった。4発は台湾本島上空を飛んだ。
 岸氏は防衛省で記者団に「日本の安全保障と国民の安全に関わる重大な問題で強く非難する」と語った。中国の軍事演習については「非常に威圧的だ」と指摘した。船舶や航空機への被害は「いま確認している限りない」と述べた。
 外務省の森健良次官は同日、中国の孔鉉佑駐日大使に電話で抗議し、軍事演習を即刻中止するよう求めた。
 日中両政府は4日に調整していた外相会談を見送ると決めた。中国側が中止を申し入れた。中国外務省の華春瑩報道局長は記者会見で、主要7カ国(G7)外相がペロシ米下院議長の訪台を巡る共同声明で「不当に中国を非難した」からだと説明した。
 林芳正外相と中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がカンボジアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議に合わせて会談を検討していた。取りやめが決まったのは開始予定のおよそ2時間前だった。
 林氏を含むG7外相は3日、ペロシ氏訪台を受けた中国の軍事圧力に懸念を表明した。華氏はこれに「米国による中国の主権侵害行為の片棒をかついだ」と反発した。日本について「台湾問題で歴史的な罪を背負っており、とやかく言う資格はない」とも述べた。
 日中両外相は会談中止に先立つASEANと日中韓の外相会議で同席した。日本側の発表によると王氏が台湾に関する中国側の主張を展開し、林氏は中国の軍事活動に「重大な懸念」を伝えた。
 林氏はASEAN関連会議に合わせてブリンケン米国務長官とも立ち話し、中国のミサイル発射を強く非難することで一致した。

**********JPプレス2022年8月4日
習近平の面目丸つぶれ、ペロシ訪台は第4次台湾危機の始まりなのか?
米国への恫喝は空回り、失敗に終わった戦狼外交
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↑台湾・台北を訪れたナンシー・ペロシ米下院議長(2022年8月3日、提供:Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)↑
 先週、本コラム(「米中軍事衝突の引き金に? どうなるペロシ米下院議長の台湾訪問」)でも取り上げたナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問団が、8月2日現地時間午後10時44分、無事に台北市の松山空港に到着した。おそらく多くの人たちが「フライトレーダー24」でペロシ搭乗機を追い、ネットの中継でその無事到着を確認してホッとしたことだろう。
 ペロシはグランド ハイアットで一晩宿泊し、8月3日午前、立法院(議会)を訪問し、蔡其昌副院長と会見。続いて総統府を訪問し蔡英文総統と会見した。午後は国家人権博物館(白色テロ景美紀念園区)の訪問などをしたあと、現地時間午後5時頃、19時間の滞在を終えて次の訪問地に向かった。
 1997年の野党のギングリッチ下院議長(共和党)の訪台がわずか3時間だったことと比べると、この訪台の政治的意義は決して小さくない。
これまでにない米国への恫喝を繰り返した中国
 ペロシ訪台について、中国は恫喝発言を繰り返し、思いとどまるように米国に圧力をかけてきた。7月28日には習近平自身がバイデン大統領とのオンライン会談で「火遊びをすれば自分も燃える」と恫喝した。
 だが、ペロシは現職の下院議長であり、大統領と言えども立法の府のトップの行動を制限することはできない。ペロシは国防省からそのリスク説明を十分に受けたうえで訪台を決断し、米軍はペロシ護衛のために万全の対策をとった。
 中国外交部の戦狼(攻撃的に相手を威嚇する)外交官の趙立堅は8月1日の記者会見で「解放軍も座視してはいない」「我々は刮目して待つ」と恫喝してみせ、2日には外交部として声明を出し「火遊びをするものは自らを焼く」「一切の責任は米国と台湾独立派分裂勢力の責任だ」と繰り返した。
 元環球時報主筆の戦狼言論人の胡錫進はツイッターで、「もし米軍がペロシの搭乗機を護衛して台湾領空にはいれば、これは侵略だから、警告射撃して、その行動を妨害してもいいし、それでも離脱しなければ、撃墜してもいい」などと勇ましいことを書き込んで、アカウントを凍結されたほどだ。
 だが、これまでにないレベルの中国の威嚇発言に米国側は臆することなく、空母レーガン戦闘群を南シナ海に向かわせた。沖縄方面では、強襲揚陸艦2隻も配備、ハワイ方面には空母リンカーンが控え、台湾周辺に35隻の艦船、4隻の原子力潜水艦が集結した。空母や強襲揚陸艦にはF35戦闘機が艦載されている。建前はハワイ沖で行われる米韓日の弾道ミサイル・探知追尾訓練「パシフィック・ドラゴン」や米・インドネシアを中心とした多国籍演習「ガルーダ・シールド」に参加するために集結しているということになるが、ペロシ訪台に対する中国のこれまでにない脅しに対して、米軍として、軍事力を見せつけて威嚇し返したということだろう。
 結局、中国の戦狼外交では、ペロシ訪台を阻止することができなかった。ペロシは蔡英文と会い、「米台は自主自決の運命共同体であるだけでなく、多くの共通の安全保障のテーマをもち、お互いの経済関係も深め、両国人民がさらに素晴らしい暮らしができるようにしていかねばならないのです」「我々は台湾を絶対見捨てない」と発言し、米台の絆をアピールしたのだった。
★ペロシ訪台の4つの意義★
 ペロシの訪台について、自分の政治的信念のために米中台の緊張を不必要に高めたという批判の意見はもちろんあろう。ペロシはなぜ、ここまでのリスクを引き受けて、空母戦闘群まで動かして、台湾訪問を敢行したのか。単なる自己満足なのか。そして、蔡英文総統は、なぜ、軍事的なリスクがあるかもしれないこの訪問を受け入れたのか。

 ペロシの本心はわからないのでここでは触れないとして、客観的にみれば、これはやはり米台にとって、そのリスクを引き受けるだけの重要の意義があったと思う。意義は主に4つある。
(1)米国が台湾をインド太平洋安全保障の盟友と見ていることを世界に知らしめた。
(2)厳しい中間選挙を戦わねばならない米国与党・民主党にとっては、ペロシのパフォーマンスは追い風になった。
(3)中国からの軍事的圧力を受けながらも、ペロシを堂々と歓迎した蔡英文政権の度胸は国際社会から一目置かれることになった。台湾も11月に地方選挙が行われるが、民進党に追い風が吹くだろう。そして少々気が早いが2024年の台湾総統選で民進党が勝つ可能性が高まるだろう。92年コンセンサス(一つの中国原則)を否定する民進党政権が12年、あるいは16年の長期政権を築けば、台湾は中華民国(中国)という国号や憲法のくびきから自由になるチャンスも見出せるかもしれない。
(4)習近平の戦狼外交によってペロシ訪台が阻止できなかった事実は、戦狼外交の限界を見せつけた。有り体にいえば、習近平の戦狼外交は失敗したのだ。今後、習近平の戦狼外交に屈せず、台湾を訪問する政治家が各国で次々と出てくるかもしれない。すでに英国庶民院議会議員団が年内に訪台すると言っている。
 もちろん、習近平の戦狼外交は、実は外交のように見えて内政である、という言い方はできる。人民の米国や台湾の独立派分裂勢力への敵愾心を煽り、しばし目の前の不満、たとえば銀行預金封鎖や理財商品のデフォルトだとか、ゼロコロナ政策による不自由や生活苦など、ややもすると習近平政権に向きそうな不満の矛先をうまく米国や台湾に転換させたという意味では戦狼外交は成功なのだ、という見方もある。
 だが、共産党内の反習近平官僚からみれば、戦狼外交で人民の敵意を外国に向けることで党の求心力を強化するより、米国との関係を少しでも改善して関税を撤廃させ、半導体企業への制裁を緩和させる道を探るほうが長期的に党の求心力を回復させることができると言いたいところだろう。
 一次的に人民の不満が米国や台湾を罵ることで緩和しても、それに続く習近平の外交政策が、口で吠えるだけで、実行が伴わない弱腰のままであれば、再びそれは政権への不満に転換される。また反米反日などの外国へ敵意からくるデモは、いつ何時、社会不満、社会不安と結びついて大規模化しコントロール不可能になるかもわからないから、煽りすぎも禁物なのだ。
★習近平は戦狼外交の失敗をどう挽回するのか★
 ここで日本の安全保障に関係があるのは(1)(3)(4)で、いずれも台湾の民主主義国家としての未来につながる動きであり、日本も積極的にこの方向性を推進してほしい、と私は思っている。
 ただ(4)にからみ、習近平が今後、戦狼外交の失敗をどういう形で挽回するつもりであるか、という点には気をつけねばならない。
 戦狼外交が限界点に達した時、選択肢は2つある。1つは、戦狼外交から国際協調外交にUターンする。もう1つは、戦狼外交をさらにエスカレートさせて北朝鮮的な瀬戸際外交に突き進むことだ。核兵器をちらつかせ、ミサイルを発射してみせ、臨戦態勢をみせつける。戦争にまで行かない軍事行動をとり、一触即発の瀬戸際を演じ続けるやり方だ。
 私が今懸念しているのは、後者だ。中国人民解放軍はペロシ訪台前から東部戦区に対し、「厳陣以待、聴命而戦」(堅陣を敷いて敵を待ち構え、命令が出れば戦え)と号令をかけ、台湾対岸の福建省平潭で実弾演習をして見せた。空母キラーミサイル・東方17号の実験発射映像をCCTVで流したりもした。
 さらに8月4日正午から7日正午にかけては、台湾周辺の6つの海域で実弾演習を行うという。「安全のため、この期間、船舶および飛行機はこの海域および空域に進入してはならない」とも言い、事実上3日間の台湾周辺の海域空域封鎖を行うとした。
 新華社によれば、この演習は解放軍として3つの「初めて」があるという。まず、台湾周辺6地域の同時演習は初めて。さらに東側(日本側)までぐるりと囲む形でミサイル発射演習を行うのは初めて。「演習区域、ミサイル発射演習のドロップポイントが台湾海峡中間線の東側に位置するのは初めて」であり、これは解放軍が海峡中間線は存在しないということを行動上で示したことになる、という。「いったん、台湾軍が応対しようとしても、解放軍は完全に台湾を包囲し、袋のネズミ状態にできる」という。
 また、いわゆる台湾の12カイリ海空域を初めて超えて演習地域を設定した。おそらく台湾沿岸から10カイリの範囲にまで解放軍演習が迫ることになる。「世界にただ一つの中国しかなく、台湾が中国の不可分の領土の一部である」ということを知らしめるのだという。
 この3つの「初めて」が可能となったのは、「解放軍は台湾軍に対して粉砕する実力があるだけでなく、同時にパワー、装備、実戦能力が米軍の挑発に対応できるだけのレベルになったからだ」と軍事専門家の張学峰が環球時報紙上で語っていた。
★第4次台湾海峡危機が始まるのか★
 この演習が3日間の威嚇行動で済むのか、あるいは、ロシアのように演習のふりをして台湾侵攻のタイミングを探っているのか。一部では、1996年の第3次台湾海峡危機の再来、第4次台湾海峡危機が始まるという声も出ている。
 第3次台湾海峡危機では、李登輝の国策顧問で中国共産党と極秘ルートをもつ曽永賢が、中国側から「2~3週間後、弾道ミサイルを台湾に向け発射するが、慌てなくていい」と事前連絡を受けていたという逸話が『李登輝秘録』(河崎眞澄著)で公開されている。危機のように見えて、中国の政治的メンツを守るための国内向け軍事パフォーマンス、いわゆる「筋肉ショー(肌肉秀)」であった。
 今後、台湾周辺海域で展開される中国と米国の軍事パフォーマンスが、第3次台湾海峡危機レベルの「筋肉ショー」なのか、それとも習近平にとって秋の党大会を乗り越えて、毛沢東なみの個人独裁体制を完成させ、「台湾武力統一」という野望のため、戦争の瀬戸際までゆく、第4次台湾海峡危機につながってゆくのか。
 しばらくは緊張感をもって推移をうかがうしかない。
(福島 香織:ジャーナリスト)

**********JPプレス2022年8月4日
警戒レベルを上げる米軍、台湾対岸で中国版「神風特攻機」がスタンバイ
最新鋭ドローンに生まれ変わった“骨董品”J-6戦闘機

↑無人機に改造する前の中国空軍J-6戦闘機(Alert5, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)↑
 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を巡って、米中当局者の舌戦がエスカレートしている。このような状況下で、台湾対岸の中国軍航空基地の航空写真に映し出された骨董品ともいえるJ-6戦闘機によって、台湾との戦闘を想定している米軍関係者たちの警戒が一段と高まっている。
 龍田航空基地は、台北に最も近接(およそ200km)している中国軍の航空基地であるが。その龍田基地が大幅に増強された様子が民間の衛星写真に鮮明に捉えられた。

↑龍田航空基地の位置↑
 20年近く前の龍田基地の航空写真には中国軍の「J-6」戦闘機の姿が捉えられていた。今回の写真にもJ-6戦闘機の機影が新型戦闘機などとともに駐機している模様が写っている。
 J-6戦闘機は1950年代にソ連のMIG-19戦闘機をベースに中国で生産され始めた第2世代に分類されるジェット戦闘機だ。中国空軍や海軍航空隊では、航空戦力の近代化成果が軌道に乗り始めた2000年代初頭まで、多数のJ-6が実戦配備されていた。その後、練習機として使用されていたが2010年頃には中国軍から姿を消した。
 しかしながら、中国軍はJ-6戦闘機を無人機に改造して再利用を図り、すでに500機以上のJ-6ドローンが生み出されているとものと考えられている。パイロットが操縦するための装備やパイロットを保護するための設備などをすべて取り払うことができるJ-6ドローンには、より多くのミサイルや爆弾を装填することが可能だ。
 初期型のJ-6ドローンは単純な偵察や攻撃あるいは特攻任務に投入される無人攻撃機であったが、現在、その一部は敵のレーダーを撹乱したり破壊する能力に特化した「J-6W」と呼ばれている無人電子戦機へと進化させられつつあるという。
 今回、龍田航空基地で確認された21機のJ-6戦闘機の機影は、おそらくJ-6ドローンおよび最新型のJ-6W無人電子戦機と考えられる。
皮切りは無人機による飽和攻撃
 龍田航空基地にJ-6W無人電子戦機とJ-11戦闘機などの航空機がスタンバイしているのは、「ペロシ下院議長が台湾を訪問する際に、下院議長が搭乗する航空機に米軍が戦闘機の護衛を付けた場合には、撃墜される覚悟をしなければならない」といった中国側の警告が口先だけでないことを米軍側に見せつけていると考えられている。
 なぜならば、台湾を巡る中国 対 台湾・米国の軍事衝突が勃発した場合、以前は中国軍による第1波攻撃は台湾の戦略要地に対する長射程ミサイル(長距離巡航ミサイルと弾道ミサイル)の飽和攻撃と考えられていたが、その後の高性能無人航空機戦力の充実に伴って、ミサイル飽和攻撃に先立って無人機による飽和攻撃が敢行されるものと考えられるようになっているからだ。
 すなわち、数百機にのぼるJ-6W無人電子戦機による飽和攻撃で台湾軍の防空警戒システムに大打撃を加えるのである。
 同時に、多数のJ-6ドローンや「J-7」ドローンによる囮(おとり)作戦的な特攻飽和攻撃も実施される(中国空軍は、J-6同様に旧式戦闘機のJ-7を無人攻撃機J-7ドローンに改造しつつある。中国空軍はJ-7を600機以上装備していた)。
 これらのJ-6ドローンやJ-7ドローンに対して、台湾軍は多数の対空ミサイルを発射したり、戦闘機や早期警戒機を出撃させることになるが、中国空軍はドローン群とともに新鋭戦闘機も出撃させて、台湾空軍なけなしの早期警戒管制機(「E-2」ホークアイを6機保有)を破壊し、場合によっては戦闘機をも撃墜する。
 さらに中国空軍は、ドローンの後方から「J-16D」電子戦機(有人でJ-6Wより強力)を飛来させ、台湾防空網を麻痺させてしまうことになる。
 このようなドローンによる飽和攻撃に引き続いて、長射程ミサイルによる飽和攻撃が実施されるものと考えられているのである。
航空戦力を温存する中国版神風攻撃
 J-6W無人電子戦機、J-6ドローン、それにJ-7ドローンによる飽和攻撃は、アメリカ製高性能防空システムや、数に限りはあるとはいえ高性能対空ミサイルを装備している台湾軍に対しては、かつての日本軍の神風攻撃のような作戦ではある。
 しかしながら、日本軍の特攻作戦と違い中国版神風攻撃は、極めて強力な長射程ミサイル戦力や後詰めの航空戦力を温存することにより、第2波、第3波攻撃によって台湾軍側を壊滅させるための囮攻撃である点が根本的に相違している。
 また無人機は、たとえ台湾軍の防空ミサイルによって撃破されても中国軍側の人的損害はゼロである。おまけに、J-6ドローンやJ-7ドローンは(高性能かつ多機能の無人攻撃機であるJ-6W無人電子戦機であっても)改造コストが弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルの生産コストよりも低価格である。よって経済的損失も極小に抑えられる。
 一方の台湾軍は、ドローンの飽和攻撃に対して数に限りがある地対空ミサイルや空対空ミサイルなどの貴重かつ高価な防空資源を大量に消費せざるを得なくなり、少なくない数の早期警戒機や戦闘機、そしてそれらの搭乗員を失う可能性も高い。それだけでなく戦闘機などの出動によってパイロットや整備補給要員は確実に疲弊することになる。
 上記のような理由によって、骨董品戦闘機がリサイクルされて誕生したJ-6ドローン、J-6W無人電子戦機が台北から200kmの中国軍・龍田航空基地でスタンバイしていることを、中国との衝突を現実のものと想定して準備を進めなければならない人々は大いに危惧しているのである。

↑中国空軍の翼竜無人攻撃機と各種搭載兵器(出所:成都飛機工業公司)↑
(北村 淳:軍事社会学者)

**********共同通信2022年8月3日11:55(JST)(12:01(JST)updated)
中国、ペロシ氏の訪台に対抗措置 軍事演習や経済制裁

↑中国軍が演習を実施するエリア↑
 【北京共同】中国は3日、ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、台湾周辺での軍事演習を展開した。台湾産の農水産物の輸入停止も打ち出し、経済制裁を発動した。中国は米国と「台湾独立勢力」が過ちの報いを負うことになると警告しており、さらなる対抗措置を準備しているもようだ。
 中国軍で台湾海峡を管轄する東部戦区は、ミサイル試射や遠距離の実弾射撃を含む軍事行動を2日深夜に開始。米国を「震え上がらせる」としている。中国軍全体では、4~7日に台湾を取り囲む六つの空・海域で実弾射撃を伴う演習を実施することになる。
 
↑ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、台湾周辺で軍事演習を開始したことを報じる3日付の中国各紙(共同)↑
**********

 

 

 


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