■平成24年8月18日の市民オンブズマン群馬の例会の席上、地元住民から相談のあった大間々町(現・みどり市)13区を巡る不正会計事件に関しは、不正会計をして補助金等を不正に使い込んでいた区長らが、不正会計を追及する住民らを相手取り、事実無根のチラシを配布されたことにより名誉を棄損されたとして損害賠償請求を提起しましたが、裁判の過程で、地元住民らが苦労して集めた証拠から、区長らの不正会計が裏付けられ、裁判所もそのことを認めました。ところが、裁判での形勢不利と感じたのか、区長らが訴訟代理人として訴訟委任をした群馬弁護士会所属の弁護士から、住民らが訴訟代理人として委任した同じく群馬弁護士会所属の弁護士に和解の打診があり、同弁護士から住民に「不正会計も認められたので、区長はやめるだろうから」と説得がありました。
↑日弁連が14階以上に陣取る弁護士会館の正面玄関。異議申出書受付は15階。↑
住民らは13区の不正会計の事実が明らかになったことから、「もし一審の地裁で敗訴しても東京高裁で決着を付けよう」と決意していましたが、法律の専門家として全幅の信頼を置いていた同弁護士は住民らに対して「不正会計が明らかになっても高裁で勝訴できる保証はない」などと言って不安をあおりました。そのため住民らは信頼する弁護士がそれほど言うのであれば、として和解に応じました。
ところが和解後、住民らは裁判の経過報告をチラシで一部の関係者に配布したところ、区長側は訴訟委任した弁護士を通じて、「住民らは和解条項を無視して、不正会計を蒸し返している」と抗議文を住民側弁護士に送りつけました。住民側の弁護士は、チラシは和解前に作成したので和解条項に違反する行為はないと区長側弁護士に書面で回答しましたが、これを契機に、不正会計をしていた区長が引続き区長の座にとどまり、裁判で和解したはずの住民らを村八分にする暴挙にでました。
そのため、せっかく長い時間と費用をかけて、信頼の置ける弁護士に訴訟委任をしたのに、安易に和解をしたせいで、結局元の木阿弥となった責任を問う為に、市民オンブズマン群馬では、群馬弁護士会に対して平成24年8月20日付で同弁護士の懲戒請求書を提出しました。
その後8ヶ月以上経過した挙句、平成25年5月9日に群馬弁護士会から同8日の消印のある配達証明郵便が届きました。その内容は「当該弁護士の懲戒はしない」旨の決定通知だったのでした。市民オンブズマン群馬では、結果に不服があるとして、2ヶ月間の期限到来前の7月4日に、日弁連に次の内容の異議申出を提出しました。
↑弁護士会館脇の案内板。↑
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〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関1-1-3
日本弁護士連合会 御中
電話番号 03-3580-9841 FAX番号 03-2580-2868
異 議 申 出 書
平成25年7月4日
異議申立人 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
小川 賢 (61歳) 印
電話027-382-0468 FAX 027-381-0364
■懲戒の請求をした弁護士の氏名及び所属弁護士会
群馬県高崎市東町172番地16 共済会館3階
高崎合同法律事務所
対象弁護士 廣 田 繁 雄
(登録番号12845)
■弁護士会から、懲戒の処分をした旨の通知を受けた年月日 平成25年5月9日
■弁護士会からの異議申出ができる旨の教示の有無及びその内容 平成25年5月8日付け群馬弁護士会からの「懲戒請求事案の決定について(通知)」と題する書面で、「懲戒請求者は、この決定について不服があるときは、弁護士法第64条の規定により、日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。なお、異議の申出は、この通知を受けた日の翌日から起算して60日以内に、書面によってしなければなりません(郵便又は新処分に当たらない宅配便、メール便、ゆうパックなどの場合、送付に要した日数は参入されます。)」との教示有り。
■異議申出の年月日 平成25年7月4日
■異議申出の趣旨 群馬弁護士会の決定の取消を求める。
■異議申出の理由 次のとおり。
1.群馬弁護士会・綱紀委員会の公平・公正・透明性の疑義
(1) 群馬弁護士会の決定書の主文には「対象弁護士を懲戒しない」とあり、その理由として、綱紀委員会の議決書に「主文 対象弁護士につき,懲戒委員会に事実の審査を求めないことを相当とする。」と記されているため、としている。
(2) この議決書は、平成25年4月25日付となっていて、署名者は「群馬弁護士会綱紀委員会 委員長職務代行副委員長 山田謙治」となっている。なぜ綱紀委員長の金井厚二ではなく、委員長職務代行副委員長の名前なのか、不可思議である。
(3) 異議申立人は、本懲戒請求事案について、平成24年8月20日付で対象弁護士の懲戒請求書を群馬弁護士会に提出した。その後、同会綱紀委員会の金井厚二委員長に対して、平成24年10月31日付で第1回目の陳述書を、同12月12日付で第2回目の陳述書を提出した。
(4) さらに異議申立人は、平成25年1月15日付で綱紀委員会委員長から調査期日の決定通知の指示にしたがって、平成25年2月20日(水)午後3時から、前橋市大手町3-6-6-にある群馬弁護士会館2階の小会議室で開かれた調査期日に、対象弁護士によって信頼関係を毀損された住民Mを伴い出席した。調査期日では、金井厚二・綱紀委員長ほか、男性1名、女性1名の委員の計3名の弁護士(綱紀委員会のメンバーから自己紹介はなくメンバー間のやり取りで中央に座っていた人物が金井委員長であることがうかがえたが、右手の男性、左手の女性メンバーの氏名は不詳)の前で、異議申立人及び住民Mの二人は午後5時過ぎまで、懲戒請求事案について詳細に事情を説明し、委員らの質問に誠実に回答した。
(5) その際、金井厚二・綱紀委員長と男性1名の委員は、あまり突っ込んだ質問をしてこなかったが、女性1名の委員は、異議申立人及び住民Mの説明をきいて、「裁判で相手方の不正会計が立証されたにもかかわらず、なぜ対象弁護士は反訴などの手段を講じて、依頼人である住民Mら3名の防御をしなかったのか?」と率直な感想を述べたりした。
(6) 異議申立人は、こうした見解を綱紀委員会の委員が持っているのであれば、なんらかの懲戒処分が下されるものと考えていた。ところが、前述のとおり、平成25年4月25日付の「主文 対象弁護士につき,懲戒委員会に事実の審査を求めないことを相当とする。」と記された署名者「群馬弁護士会綱紀委員会 委員長職務代行副委員長 山田謙治」による議決書をよりどころに、群馬弁護士会の小磯正康・会長名で「懲戒請求事案の決定通知」として「対象弁護士を懲戒しない」と通知された。なぜ、8ヵ月半もかけて懲戒委員会で調査をした結果が「懲戒しない」という結論なのか、異議申立人は決定通知結果を受け取ってから暫く理解に苦しんだ。
(7) その後、調べてみたところ、綱紀委員会の議決書が金井厚二・綱紀委員長名でなく、委員長代行副委員長名で出された背景について重大な事実が判明した。それは、対象弁護士と金井厚二・綱紀委員長が同じ法律事務所に所属してることが分かったためである。
(8) 異議申立人が調べたところによれば、高崎合同法律事務所には、次の4名の弁護士が所属している。
・金井厚二(男性):登録年度 不詳、登録番号10793
・廣田繁雄(男性):登録年度 不詳、登録番号12845
・山浦誠治(男性):登録年度2009年、登録番号39987
・稲富 彬(男性):登録年度 不詳、登録番号48060
(9) 金井・廣田両名の登録年度は不詳だが、登録番号から金井が僅かに先輩で、廣田が後輩であることが想像できる。このように両名は同じ法律事務所で業務を分け合っていることから、当然、仲間意識を有していると見るべきであり、そのことが、綱紀委員会で8ヶ月もの間、調査に時間を浪費した要因であると見られ、調査期日でも綱紀委員長としてあまり熱心さが見られない態度を金井が取った要因であると見られる。
(10) よって、群馬弁護士会と綱紀委員会において、本当に公正、公平、透明な審査が行われたのか異議申立人として疑念を持たざるを得ない。よって、本件の異議申立により、公平、公正、透明な審査を日弁連の場で行なって頂きたい。
↑弁護士会館のあたりはその昔大岡越前の屋敷があったという。↑
2.議決書の内容に関する異議
分かりやすいように項目ごとに次の色分けでまとめた。
黒字部分:議決書の内容(但し下線部、太字部は異議申立人が追記。)
青字部分:対象弁護士の弁明
赤字部分:異議申立人の不服内容
第1 懲戒請求事由の要旨
1 みどり市大間々町13区の区長KT及び前区長KMは,群馬県みどり市大間々町第13区の運営を巡る文書配布で名誉を傷つけられたとして,同文書配布に関わった同区民の住民K,住民H,住民Mの3名を被告として前橋地方裁判所桐生支部に謝罪広告等請求事件〔平成19年(ワ)第113号〕を提起し,被告に対し上毛新聞,桐生タイムス等への謝罪広告掲載と各金100万円の損害賠償を求めた。
この訴訟の被告ら代理人として,対象弁護士が就任した。
【対象弁護士の弁明】1 懲戒請求事由1は認める。
2 本件訴訟は,平成22年4月23日,約3年近い歳月を経過して,要旨以下の和解が成立した。
当事者ら双方は,13区の過去の会計において一部適切でない慣行及び会計処理があったことを共通の前提として,以下のとおり合意をする。
(1)被告らは,原告らに対し,相当でない表現を用いて原告らの名誉を毀損する内容を含む文書等を作成,配布したことにつき陳謝する。
(2)当事者ら双方は,爾後,13区の運営がより民主的かつ適切にされるよう相互に協力し,互いの名誉を毀損するような言動をしないことを相互に約束する。
【対象弁護士の弁明】2 同事由2は認める。
3 被告らが上記和解に踏み切ったのは,対象弁護士の以下3点の説明と説得があったからである。
【対象弁護士の弁明】3 同事由3について (1)本文については,被告らが和解した動機の中には対象弁護士の説得,説明以外に裁判官の説得等も含め,他の要因もあった。
【異議申立人の不服内容】(1)“他の要因もあつた”という対象弁護士の弁明の意味の解釈が出来ない。なぜなら、裁判で、原告区長KTらの不正会計=横領行為が判明していたから、被告側には“折れて和解に応じる”必要はなかったためである。にもかかわらず和解の動機として、それ以外の要因としてなにがあったというのか。もし他の原因があったのであれば、対象弁護士に訴訟委任をした被告らは対象弁護士から“それ以外の原因”についてしかるべき説明を受けたはずである。従って、この期に及んで対象弁護士から“他の要因”と弁明されても被告住民Mらは「何のことか解からない」と対象弁護士に対する不信感を一層深めている。
(1)区長側より裁判を和解に持ち込めないかとの説明を受けたこと。
【対象弁護士の弁明】(2)同(1)は不知。
【異議申立人の不服内容】(2)被告の一人の住民Mは「(対象弁護士である)廣田弁護士が、(住民Mの経営する)株式会社Mファッションの工場の裏にある当時の出荷場に訪ねて来て、『(原告)区長側の弁護士より“和解に持ち込めないか”と言われたが』と言ってきたので、(住民Mは)『先生、何を言い出すのですか。裁判官も“区長等は不正会計がある”と円卓裁判室で言っているのに』と怒り、『東京高裁に控訴してもよい』と言うと、(廣田弁護士から)『区長に不正会計があったからといって、法律的には敗訴するとは限らない』と言われたので、私(=住民M)は大変なショックと恐怖と衝撃を受けた」と証言している。従って、対象弁護士がこのことを「不知」だと弁明することはできない。
(2)裁判官から,区長らは悪いことをしたことはわかっているが,前向きに建設的な気持ちになりなさいと諭されたこと。
【対象弁護士の弁明】(3)同(2)は概ね認める。
【異議申立人の不服内容】(2)裁判官の説明は事実である。被告の一人の住民Mは「縦2センチ、横10センチの用紙に“不正会計が有る”と書かれた文書を裁判官から頂いた。協力者(被告の一人の住民K〔元市議(その後、物故)〕の支援者で原告区長の不正会計の責任を追及してきた住民らのこと)にも見せている」と明言している。にもかかわらず、対象弁護士が「“概ね”認める」と曖昧な弁明をする必要はないはず。対象弁護士は明確に「認める」と弁明すればよいはず。
(3)対象弁護士からは,区長側が不適切な会計を認めたのだから辞任するでしょうからとの説明を受けたこと。
【対象弁護士の弁明】 (4)同(3)のうち,区長側が不適切な会計を認めたことは認めるが,「辞任するでしょうから」との説明は,見通しを述べたものであって断定的なものとして述べたものではない。
なお,区長の辞任自体が和解の成否を決定付けた重大事ではない。
【異議申立人の不服内容】(4)被告らが訴訟委任をした対象弁護士が「“辞任するでしょうから”との説明は、見通しを述べた」だけとは、依頼者である住民Mら被告が信頼して訴訟を委任した弁護士が、後出しで話す言葉とは到底思われない。懲戒請求を受けて、苦し紛れに発した言葉かもしれないが、依頼人の信頼を裏切った言葉である。このような言葉が一層弁護士への不信感を助長させる。訴訟委任をした被告らは、裁判の過程で、すでに区長の横領したことが判明しているのだから、対象弁護士から「辞任するでしょうから」と説明を受ければ、見通しなどとは思わず、弁護士の断定的な判断だと信じるであろう。対象弁護士はまた「区長の辞任自体が和解の成否を決定付けた重大事ではない」などと、責任を回避する釈明の言葉を発している。民主的な区の運営の実現は、横領した区長は辞任しないかぎり、果たせないことは弁護士であれば直ちに理解できるはず。
4 被告らは,上記3点の説明を受けたことから,対象弁護士からの説得を受けてその言葉を信じ,その説得に応じて和解に踏み切った。
【対象弁護士の弁明】4 同事由4は否認する。
和解は,被告らと対象弁護士が協議した結果,成立したものであって,対象弁護士の言葉を信じ,説得に応じて和解に踏み切ったという経過ではない。
【異議申立人の不服内容】4 区長は、裁判官からも不正会計と判断されており、その結果、罪を認めた原告区長に対して、和解案が裁判所から勧められた。それを受けて、被告らと対象弁護士が協議した際、和解条件として、被告の一人の住民Hが「原告区長が退任をして、今後民主主義的運営が出来るようになること」を2度ほど求めたが、対象弁護士は返事をしなかった。そのかわりに対象弁護士は「区長は責任を取るだろうから和解をしてもよいのでは」と言った。そして「控訴しても、不正会計をした区長が法的に敗訴するとは限らない」と、対象弁護士が言った。そのため、住民Mは「もしも我々が敗訴になったら」と不安を抱き、和解をするのもやむをえないと考えるようになり、躊躇し悩んだ末に対象弁護士が示した和解という選択をしてもよいという気持ちになった。それもこれも、信頼していた対象弁護士の言うことを信じざるを得ない状況が背景にあったからである。
5 平成22年5月22日付桐生タイムスに和解内容が報じられたが,原告の区長KTは,和解条項を無視して,「桐生タイムスの裁判記事記載は間違いであるから,被告住民Kらは13区を乱した罪として13区から出ていけ。」と述べて区費の徴収を拒否したり,被告らや被告らに賛同した区民に対して13区の役職を強制的に降ろしたり,中傷したりして非情な仕打ちをした。
被告らは,村八分にされているが,これも対象弁護士の和解の説明の言葉と説得を信用したからである。
【対象弁護士の弁明】5 同事由5は概ね認めるが,対象弁護士の和解の言葉を信頼したためという点は否認する。
原告らの裁判後の行動は,被告らはもとより対象弁護士の予想外の行動であり,対象弁護士の責任に帰することはできない。
【異議申立人の不服内容】5 対象弁護士に訴訟委任をした被告らは、「何も法律知らないから当方の弁護士を信頼してお任せしたのです」と述べている。裁判の過程で、和解に踏み切るかどうか判断に迷い、他の弁護士2名(前橋市の池田昭男、及び、桐生合同法律事務所の春山典勇(のりお))に都合30回も相談したが、「原告による公金の不正会計が判明しているのだから、和解する必要のない問題だ」と言われた。それでもなお、和解に踏み切ったのは信頼を置いていた対象弁護士の和解の言葉と説得のほうを重視したからだ。
6 被告らは,事態の終息のため,原告らに和解条項を遵守させるための方策として,区民に和解の状況や経過を説明するよう対象弁護士に求めたが,全く反応しない。
【対象弁護士の弁明】6 同事由6は否認する。
対象弁護士は,被告らから,事態終息のため,和解の経過を区民に説明する協力要請に全く反応していないわけではない。被告住民Mから和解成立後の経過を地元関係者に直接説明に出向くよう求められ,①日時,場所を設定すれば出向いていく,②対象弁護士の事務所に来所してもらい,同所で説明してもよい旨回答したが,被告住民Mからは,①についての要請もなく,②の打診もなかった。
【異議申立人の不服内容】6 被告らは夫々の仕事の都合で時間の調整がつかなかったため、被告らの代表として住民Mが前橋市大手町にある群馬弁護士会館を平成24年7月31日に訪れ、対象弁護士に会って、区の情況を説明した。その際、住民Mは対象弁護士に「(被告の)区長KTは区長を辞めないでいます」と言うと、対象弁護士は「まだ辞めないのか!」と大声を上げた。そして対象弁護士は「事務所に行って調べる」と言い、去っていた。住民Mは、その大声に何か言い知れない不信感を持ったので、翌日FAXで高崎合同法律事務所に「自分で調べる」旨のメッセージを送信した。その後住民Mは、市民オンブズマン群馬の事務所の場所を調べて、平成24年8月18日のオンブズマンの例会に参加し本件について発表し協力要請があったため、満場一致で、本件について住民Mらを支援することが承認された。
7 対象弁護士の和解に至る行為や和解後の対応は,弁護士法第1条2項の誠実に職務を行う義務に違反し,弁護士法第56条の懲戒処分に該当する。
なお,懲戒請求人は,市民オンブズマン群馬の代表者であるが,平成24年8月18日の開会の例会に被告住民Mが出席して相談を受けたことから,本懲戒請求者となったものである。
【対象弁護士の弁明】7 同事由7は否認する。
対象弁護士は,「和解に至る行為」の説明と説得は,和解条項記載のとおり13区の運営がより民主的,かつ適切になされるよう前向きに建設的に考えたほうが望ましいと判断し,被告らにもその旨説明して説得し,被告らもこれを承諾して和解したものであって,これは和解手続における通常の方法であり,被告らの意思に反して和解を進めたということは全くなかった。
また,被告らから裁判所の判決がほしいという要望もなかった。
よって,対象弁護士は,懲戒に相当するような行為は何等していない。
なお,本件懲戒請求は,訴訟当事者とは直接関係のない立場の者による請求である。
【異議申立人の不服内容】7 対象弁護士は、対象弁護士に訴訟委任をした被告らから「裁判所の判決がほしいという要望もなかった」と言うが、被告の一人である住民Hは、2回も区長の退任について対象弁護士に訴えた。被告らは、区長退任が前提ではなく、単なる和解のみであれば、絶対に和解案など聞き入れることはなかった。それを動かしたのは、「区長らは辞任するでしょう」という対象弁護士の言葉を信頼したためであった。対象弁護士は「なお,本件懲戒請求は,訴訟当事者とは直接関係のない立場の者による請求である。」と釈明するが、弁護士法58条によれば、弁護士等に対する懲戒の請求は、事件の依頼者や相手方などの関係者に限らず誰でもでき、その弁護士等の所属弁護士会に請求すればよいとなっており、対象弁護士の釈明は失当である。
第3 証拠
1 書証
(1)懲戒請求者
甲第1号証 第27回口頭弁論調書(和解)(前橋地方裁判所桐生支部平成19年第113号)
甲第2号証 桐生タイムス(平成22年5月25日付)
甲第3号証 書簡(平成24年3月10日付)
甲第4号証 FAX通信表(平成24年10月14日付)
甲第5号証 証明書
甲第6号証 請求書
甲第7号証 訴状(前橋地方裁判所桐生支部平成19年(ワ)第113号)
甲第8号証 答弁書(同上事件)
甲第9号証 被告準備書面(1)(同上事件)
甲第10号証 平成25年2月20日調査期日用資料
甲第11号証 平成25年2月20日調査期日用資料
甲第12号証 平成14年度の金銭出納頓と一般会計簿の比較
甲第13号証 平成15年度の金銭出納頓と一般会計簿の比較
甲第14号証 金銭出納帳と一般会計簿の比較
甲第15号証 繰越金について
(2)対象弁護士
乙第1号証の1 「広田弁護士様」ではじまる書面(平成24年4月頃付)
の2 「広田弁護士様」ではじまる書面(平成24年4月23日付)
乙第2号証の1 「御通知」なるFAX文書(平成22年6月24日付)
の2 「みどり市第13区の不正会計疑惑…」で始まる書面
の3 「第1回報告書補正板」で始まる書面
の4 「大間々町第13区の皆様へ」ではじまる書面
乙第3号証 回答書
2 人証
懲戒請求者,住民M
第4 当委員会が認定した事実及び判断
1 当委員会の認定した事実
(1)原告区長KT外1名は,平成19年8月19日,住民K,住民H,住民Mの3名を被告として謝罪広告等請求事件を前橋地方裁判所桐生支部に提訴した。
請求の内容は,①桐生タイムス外2紙に謝罪広告を掲載すること,②被告らは連帯して,原告らに対し,各100万円を支払えというものである。
被告らは,訴訟代理人として対象弁護士に委任した。
(2)同訴訟における原告らの主張は,被告らが虚偽であることを知りながら,原告らが区費の不正処理をして横領,着服,または濫用した旨公言して,原告らの名誉を毀損し,原告らに対する区民らの信頼を損ねたということで,謝罪広告と損害賠償を求めたものである。
(3)本件訴訟は,平成22年4月23日付で被告住民H,同住民M同席のうえ和解が成立し,その内容は,群馬県みどり市大間々町第13区の過去の会計において,一部適切でない慣行及び会計処理があったことを当事者ら双方の共通の前提として,①被告らは,原告に対し,相当でない表現を用いて原告らの名誉を毀損する内容を含む文書を作成,配布したことにつき謝罪する,②当事者ら双方は,今後13区の運営がより民主的,かつ適切にされるよう協力し,互いの名誉を毀損しないことを約束するというものであった。
(4)この和解は,平成22年5月23目付桐生タイムス夕刊で報道され,見出しに「大間々13区訴訟が和解 名誉傷つけて陳謝一区民側 不適切会計認める一区長側」と掲載された。
(5)和解成立後の平成22年6月24日,原告ら代理人から被告ら代理人の対象弁護士に対して通知書が届き,被告住民M及び同住民Hが和解内容を独自に解釈し,原告らの名誉を毀損する内容を含むビラの配布を繰り返しているので,そのような行為は控えるよう申し入れがあった。
これに対し,被告ら代理人の対象弁護士は,同年7月23日付回答書で,原告ら代理人の申し入れに添付された文書は名誉を毀損するものではないこと,和解前に配布した文書であること等を回答している。
【異議申立人の不服内容】被告の一人の住民Mによれば、「(被告ら代理人の対象弁護士の)廣田弁護士は『原告区長ら代理人弁護士の申し入れに添付された文書は、和解前に配布した文書テである等を回答している。』とあるが、これは間違いである。実際には、和解後に配布した文書であり、住民K市会議員の支援者が、不正会計の追及に関心のある住民らを対象に、裁判の経過を説明する為の報告書として30枚配布したものである」とのことだ。対象弁護士は、同じく群馬弁護士会所属の原告代理人の弁護士から、そのようないいがかりを付けられて、「“和解前に配布した文書だ”から名誉毀損ではない」とあたかも被告らの立場に立ったような弁明をしている。実際には“和解後に配布した文書”であり、裁判経過報告なのだから、原告代理人の弁護士らにつべこべ言われるスジ合いのものではないはず。それを“和解前に配布した文書”だとして、事実でない理由で穏便にしてしまったことで、原告らは裁判所の和解条項を無視してもかまわないと考えた可能性がある。原告代理人弁護士らに対して、正しく“和解後に配布した裁判経過報告の文書だ”と説明していれば、原告側も、変な言いがかりをつけることができないと判断したかもしれないし、あるいは、和解条項を無視したとして再度名誉毀損で訴訟をしかけてきたかもしれない。原告代理人がこのように和解後も原告区長の要請で、被告側に対して積極的に行動しているのに比べると、被告代理人である対象弁護士の和解後の消極性が一層際立っている。
(6)その後,平成24年4月10日,被告住民Mから対象弁護士に対し,区長らが区民に対して和解の意味を誤解した伝え方をしているので,和解の伏況と経過を区民に説明してほしい旨の通知があった。
対象弁護士は,区民に対し,説明に出向いていくことや対象弁護士の事務所を訪問されてもよい旨を回答していた。
しかし,被告らから具体的な要望はなかった。
(7)平成24年8月18日,被告住民Mは,懲戒請求人小川賢の代表する市民オンブズマン群馬の例会に出席して,同人に相談した結果,平成24年9月7日,同人が本懲戒請求を申し立てた。
2 当委員会の判断
(1)まず,対象弁護士から和解の成立する過程で対象弁護士に弁護士法違反の事由があるかであるが,この点については,弁護士職務基本規程第36条に定める(本件処理の報告及び協議)義務に関する問題がある。
懲戒請求者は,被告らが本件訴訟の和解成立を決断するに至った動機として,対象弁護士の次の点についての説明と説得が和解の決め手となったと主張する。これが決め手となったとして対象弁護士の説明,説得が同規定に反するかについて判断すると,対象弁護士は,次の三点すなわち,
①「区長側からこの裁判を和解に持ち込めないかとの説明があった」との主張については認定はできない。
②裁判官から「区長側は悪いことをしたことはわかっているが,前向きに建設的になりなさいと諭された」との主張については認定でき,対象弁護士も裁判官が不適切な会計の存在を認識していると説明したものである。
③対象弁護士から,区長側は不適切な会計を認めているのだから「辞任するでしょうから。」との説明があったことは認められる。一方,区長の辞任が和解の成否を決定づける事項となっていなかったことも認められる。対象弁護士の上記発言は,希望的な見通しを述べたものであって,断定的に述べたものとは認められない。
そして,和解後に原告区長KTが区長を辞任しなかったことは,前記希望的な見通しが違っていたこともあったが,和解の中で区長が辞任する旨の約束も取り付けられていない以上,和解成立後の区長らの動向は,和解の条項に違反することでもない。 こうしてみると,対象弁護士の上記三点に関する説明と説得が決め手となったとは言い切れず,また,仮に被告らが対象弁護士の言葉を信頼して和解に踏み切ったとしても,被告住民H,同住民M同席のうえで,被告らの判断で和解を成立させたものであったから,対象弁護士に弁護士職務基本規定第36条の違反は認められない。
【異議申立人の不服内容】綱紀委員会は、対象弁護士の釈明に重点を置いて判断している。
①「区長側からこの裁判を和解に持ち込めないかとの説明があった」との主張については認定はできない。―――とする委員会の判断は、事実を無視したものである。実際に、公金の不正会計が明らかになったため、勝ち目がなくなった区長側から、対象弁護士に対して和解の打診があった。被告の一人の住民Mは、対象弁護士が住民Mの経営する株式会社Mファッションの工場兼出荷場(当時)にやってきて、「区長側弁護士から和解に持ち込めないかと言われているが」と対象弁護士に言われた。その際、住民Mは「不正会計が判明していることを裁判官が言ったのだから、なぜ和解に応じる必要があるのか。それなのに、和解をしろ、と言うなら、東京高裁で判決をもらっても良い」と対象弁護士に言った。すると対象弁護士は「だけども法律的には勝訴するとは、限らない」と不安をあおる事を住民Mに言った。住民Mはこのことを他の被告らや賛同する住民らにも直後に伝えた。本来であれば、依頼人の意向に沿って、不正会計の事実を原告に突きつけて反訴などの防御方法もあったのに、対象弁護士はそうしようとせずに、逆に訴訟委任をした法律知識の乏しい依頼人に対して、法律の専門家であること武器に、被告にとって勝訴或いは敗訴(この場合には東京高裁へ控訴)となるべき判決を回避して和解の方向に誘導したのである。
③対象弁護士から,区長側は不適切な会計を認めているのだから「辞任するでしょうから。」との説明があったことは認められる。一方,区長の辞任が和解の成否を決定づける事項となっていなかったことも認められる。対象弁護士の上記発言は,希望的な見通しを述べたものであって,断定的に述べたものとは認められない。そして,和解後に原告区長KTが区長を辞任しなかったことは,前記希望的な見通しが違っていたこともあったが,和解の中で区長が辞任する旨の約束も取り付けられていない以上,和解成立後の区長らの動向は,和解の条項に違反することでもない。こうしてみると,対象弁護士の上記三点に関する説明と説得が決め手となったとは言い切れず,また,仮に被告らが対象弁護士の言葉を信頼して和解に踏み切ったとしても,被告住民H,同住民M同席のうえで,被告らの判断で和解を成立させたものであったから,対象弁護士に弁護士職務基本規定第36条の違反は認められない。―――とする委員会の判断は、到底容認できない。「希望的な見通が違っていた」などと、事後の懲戒請求を受けて、いくら苦し紛れで後付けで発せられたとしても、法律の専門家からそのような事を言われたら、法律の専門家ではない一般人はいったい誰を信じ対価を支払って訴訟委任したらよいのか。法律の専門家たる弁護士はいったいどこまで責任をもって親身になって訴訟委任をする依頼人の面倒をみてくれるのか。それが、被告弁護士、原告弁護士、そして裁判官との間の司法試験合格者の間の司直関係者の間で和解ありきのかたちで幕引きが行われ、和解だから横領による刑事罰は免罪となったなどとして、一方が(今回は原告)が和解をないがしろにしてしまえば、それにより大変な思いを強いられて苦しむのはもう一方(今回は被告)である。これでは、長い期間かけて法廷で争った時間も、そのために訴訟委任をした弁護士への着手金や報酬金、さらに証拠集めの費用等に投じられたカネも、無意味なものになってしまう。
また、「和解成立後の区長らの動向は、和解の条項に違反することでもない」としているが、民主主義とは自己責任を取ることである。いくら綱紀委員会の委員長が対象弁護士と同じ事務所に所属しているからといって、このようないい加減な解釈を記した綱紀委員会の議決署を群馬弁護士会として追認してよいのか。原告の不正会計を前提に、せっかく本件を“まあるい”言葉で納めた裁判所と名裁判官にたいして、侮辱するものである。もちろん、対象弁護士を信頼して費用と時間を費やした被告らに対しても、重大な背任の言葉であることはいうまでもない。
さらに、「被告同席のうえで」だから訴訟委任をした依頼人側にも自己責任があると言わんばかりの説明は如何なものか。法律の専門家ではない一般人は、法律の専門家であるはずの弁護士の言葉を信じて、それに従うのが通常ではないか。
(2)次に,和解後の対象弁護士の対応については,民法第645条に委任中に処理の状況を報告し,委任終了後に遅延なくその経過及び結果を報告する義務を負い,弁護士職務規程第44条において(処理結果説明)義務があるところ,和解成立後の平成22年6月24日,原告ら代理人から対象弁護士に通知書が届き,被告住民M及び同住民Hが和解内容を独自に解釈して原告らの名誉を毀損する内容のビラの配布を繰り返しているので,差し控えるよう相手方に働きかけてほしい旨申し入れがあった。
これに対し,対象弁護士が上記処理結果説明義務として対応する義務は存在しないと認められるが,対象弁護士は,同年7月23日付回答書で原告ら代理人の申し入れに添付された文書は,原告らの名誉を毀損するものではないこと,同文書は和解前に配布した文書である旨回答している。 また,被告らからの説明に来てほしい旨の連絡に対しても連絡があればいつでも被告ら方に出向いて説明すること,また,対象弁護士事務所を来訪してもらい説明するのでもよい旨回答しており,被告らからは,これに対する要望は特になかったのであるが,この点も対象弁護士の上記処理結果説明義務として対応する義務はないと認められ,対象弁護士に同規定に違反する行為はない。
以上からすると,対象弁護士に弁護士法第56条1項の非行があったとはいえない。
【異議申立人の不服内容】異議申出書の7ページから8ページにかけて述べたとおり、被告の一人の住民Mによれば、「(被告ら代理人の対象弁護士の)廣田弁護士は『原告区長ら代理人弁護士の申し入れに添付された文書は、和解前に配布した文書テである等を回答している。』とあるが、これは間違いである。実際には、和解後に配布した文書であり、住民K市会議員の支援者が、不正会計の追及に関心のある住民らを対象に、裁判の経過を説明する為の報告書として30枚配布したものである」とのことだ。対象弁護士は、同じく群馬弁護士会所属の原告代理人の弁護士から、そのようないいがかりを付けられて、「“和解前に配布した文書だ”から名誉毀損ではない」とあたかも被告らの立場に立ったような弁明をしている。実際には“和解後に配布した文書”であり、裁判経過報告なのだから、原告代理人の弁護士らにつべこべ言われるスジ合いのものではないはず。それを“和解前に配布した文書”だとして、事実でない理由で穏便にしてしまったことで、原告らは裁判所の和解条項を無視してもかまわないと考えた可能性がある。原告代理人弁護士らに対して、正しく“和解後に配布した裁判経過報告の文書だ”と説明していれば、原告側も、変な言いがかりをつけることができないと判断したかもしれないし、あるいは、和解条項を無視したとして再度名誉毀損で訴訟をしかけてきたかもしれない。原告代理人がこのように和解後も原告区長の要請で、被告側に対して積極的に行動しているのに比べると、被告代理人である対象弁護士の和解後の消極性が一層際立っている。
議決書では「また,対象弁護士事務所を来訪してもらい説明するのでもよい旨回答しており,被告らからは,これに対する要望は特になかったのであるが,この点も対象弁護士の上記処理結果説明義務として対応する義務はないと認められ,対象弁護士に同規定に違反する行為はない」としているが、もともと被告らが信頼を置いていた対象弁護士に、和解後も和解条項を遵守しない原告について縷々報告や対応策の相談をしても、対象弁護士の腰は重く、いくら依頼しても埒があかないのでは不信が募るのは当然である。そうした事態を裂けるためにも、対象弁護士は、和解条項の遵守をきちんと能動的に相手側に働きかけて和解条項の実現まできちんとフォローすべきである。和解で一件落着したとして、着手金や関連経費の支払いを依頼人から受けたら(今回、対象弁護士は、報酬金は受け取っていないと言っている)、あとは野となれ山となれでは、訴訟委任をした依頼人は浮かばれない。
↑弁護士会館脇の広場にある無題のモニュメント。↑
3.弁護士法違反
以上の通り、対象弁護士は、不正会計について裁判所が認めており、そのことについて反訴をすれば被告側が勝訴した可能性もあったのに、それを怠り、原告側代理人弁護士の和解の持ちかけに安易にすがり、もともと和解条項での決着を好む裁判所や裁判官の性向に迎合し、和解後も、積極的に攻めてきた原告代理人弁護士と比べ、反訴も辞さぬ覚悟も示さず消極的な対応に終始した結果、不正会計を働いた張本人が引き続き区長の座にのさばり、和解条項で決められた民主的な大間々町13区の運営の実現には程遠い異常な現状を招くことにより、被告らの利益を損なった。さらに、不正会計が明らかになった事で、東京高裁での控訴も辞さない訴訟委任者である被告ら依頼人に対して、「だけども法律的には勝訴するとは限らない」などと法律の専門家である立場を利用して、不安をあおり、和解を誘導したことも、弁護士としての使命感や責任感に欠けていると言わざるを得ない。
このことは、弁護士法第1条2項に定めた弁護士の使命である「誠実な職務遂行による社会秩序維持」に違反し、同法第2条に定めた弁護士の職務の根本基準である「教養保持と品性陶冶による法律事務の精通」に違背し、弁護士の職務基本規定第4節「事件の処理における規律」第36条(事件処理の報告及び協議)に定めた「弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない」を怠り、さらに同規定第5節「事件の終了時における規律」第44条(処理結果の説明)に定めた「弁護士は委任の終了に当たり事件処理の状況又はその結果に関し必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明しなければならない」を怠るなどして、対象弁護士が同規定に違反したことは明らかである。
したがって、対象弁護士は、弁護士の品位を汚したのであるから、弁護士法第56条に定めた懲戒処分に該当すると考えられるため、今後、弁護士に対する一般市民の信頼維持を担保するためにも日弁連にて、本懲戒請求事案について、公平、公正、透明性をもって審査することを強く望むものである。 以上
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↑付近の通りにある道先案内図。↑
■7月4日、オンブズマン代表名で3部(正本1部、副本2部)が日弁連に提出され、受理されました。今後、どのような審査と判断がなされるのかはっきりしたことはわかりませんが、日弁連からなにか連絡があれば市民オンブズマン群馬事務所からの報告としてお伝えしていきます。
↑国会通りを10分程歩くと東京電力本社がある。相変わらず公金を費やして警備は厳重だ。↑
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑日弁連が14階以上に陣取る弁護士会館の正面玄関。異議申出書受付は15階。↑
住民らは13区の不正会計の事実が明らかになったことから、「もし一審の地裁で敗訴しても東京高裁で決着を付けよう」と決意していましたが、法律の専門家として全幅の信頼を置いていた同弁護士は住民らに対して「不正会計が明らかになっても高裁で勝訴できる保証はない」などと言って不安をあおりました。そのため住民らは信頼する弁護士がそれほど言うのであれば、として和解に応じました。
ところが和解後、住民らは裁判の経過報告をチラシで一部の関係者に配布したところ、区長側は訴訟委任した弁護士を通じて、「住民らは和解条項を無視して、不正会計を蒸し返している」と抗議文を住民側弁護士に送りつけました。住民側の弁護士は、チラシは和解前に作成したので和解条項に違反する行為はないと区長側弁護士に書面で回答しましたが、これを契機に、不正会計をしていた区長が引続き区長の座にとどまり、裁判で和解したはずの住民らを村八分にする暴挙にでました。
そのため、せっかく長い時間と費用をかけて、信頼の置ける弁護士に訴訟委任をしたのに、安易に和解をしたせいで、結局元の木阿弥となった責任を問う為に、市民オンブズマン群馬では、群馬弁護士会に対して平成24年8月20日付で同弁護士の懲戒請求書を提出しました。
その後8ヶ月以上経過した挙句、平成25年5月9日に群馬弁護士会から同8日の消印のある配達証明郵便が届きました。その内容は「当該弁護士の懲戒はしない」旨の決定通知だったのでした。市民オンブズマン群馬では、結果に不服があるとして、2ヶ月間の期限到来前の7月4日に、日弁連に次の内容の異議申出を提出しました。
↑弁護士会館脇の案内板。↑
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〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関1-1-3
日本弁護士連合会 御中
電話番号 03-3580-9841 FAX番号 03-2580-2868
異 議 申 出 書
平成25年7月4日
異議申立人 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
小川 賢 (61歳) 印
電話027-382-0468 FAX 027-381-0364
■懲戒の請求をした弁護士の氏名及び所属弁護士会
群馬県高崎市東町172番地16 共済会館3階
高崎合同法律事務所
対象弁護士 廣 田 繁 雄
(登録番号12845)
■弁護士会から、懲戒の処分をした旨の通知を受けた年月日 平成25年5月9日
■弁護士会からの異議申出ができる旨の教示の有無及びその内容 平成25年5月8日付け群馬弁護士会からの「懲戒請求事案の決定について(通知)」と題する書面で、「懲戒請求者は、この決定について不服があるときは、弁護士法第64条の規定により、日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。なお、異議の申出は、この通知を受けた日の翌日から起算して60日以内に、書面によってしなければなりません(郵便又は新処分に当たらない宅配便、メール便、ゆうパックなどの場合、送付に要した日数は参入されます。)」との教示有り。
■異議申出の年月日 平成25年7月4日
■異議申出の趣旨 群馬弁護士会の決定の取消を求める。
■異議申出の理由 次のとおり。
1.群馬弁護士会・綱紀委員会の公平・公正・透明性の疑義
(1) 群馬弁護士会の決定書の主文には「対象弁護士を懲戒しない」とあり、その理由として、綱紀委員会の議決書に「主文 対象弁護士につき,懲戒委員会に事実の審査を求めないことを相当とする。」と記されているため、としている。
(2) この議決書は、平成25年4月25日付となっていて、署名者は「群馬弁護士会綱紀委員会 委員長職務代行副委員長 山田謙治」となっている。なぜ綱紀委員長の金井厚二ではなく、委員長職務代行副委員長の名前なのか、不可思議である。
(3) 異議申立人は、本懲戒請求事案について、平成24年8月20日付で対象弁護士の懲戒請求書を群馬弁護士会に提出した。その後、同会綱紀委員会の金井厚二委員長に対して、平成24年10月31日付で第1回目の陳述書を、同12月12日付で第2回目の陳述書を提出した。
(4) さらに異議申立人は、平成25年1月15日付で綱紀委員会委員長から調査期日の決定通知の指示にしたがって、平成25年2月20日(水)午後3時から、前橋市大手町3-6-6-にある群馬弁護士会館2階の小会議室で開かれた調査期日に、対象弁護士によって信頼関係を毀損された住民Mを伴い出席した。調査期日では、金井厚二・綱紀委員長ほか、男性1名、女性1名の委員の計3名の弁護士(綱紀委員会のメンバーから自己紹介はなくメンバー間のやり取りで中央に座っていた人物が金井委員長であることがうかがえたが、右手の男性、左手の女性メンバーの氏名は不詳)の前で、異議申立人及び住民Mの二人は午後5時過ぎまで、懲戒請求事案について詳細に事情を説明し、委員らの質問に誠実に回答した。
(5) その際、金井厚二・綱紀委員長と男性1名の委員は、あまり突っ込んだ質問をしてこなかったが、女性1名の委員は、異議申立人及び住民Mの説明をきいて、「裁判で相手方の不正会計が立証されたにもかかわらず、なぜ対象弁護士は反訴などの手段を講じて、依頼人である住民Mら3名の防御をしなかったのか?」と率直な感想を述べたりした。
(6) 異議申立人は、こうした見解を綱紀委員会の委員が持っているのであれば、なんらかの懲戒処分が下されるものと考えていた。ところが、前述のとおり、平成25年4月25日付の「主文 対象弁護士につき,懲戒委員会に事実の審査を求めないことを相当とする。」と記された署名者「群馬弁護士会綱紀委員会 委員長職務代行副委員長 山田謙治」による議決書をよりどころに、群馬弁護士会の小磯正康・会長名で「懲戒請求事案の決定通知」として「対象弁護士を懲戒しない」と通知された。なぜ、8ヵ月半もかけて懲戒委員会で調査をした結果が「懲戒しない」という結論なのか、異議申立人は決定通知結果を受け取ってから暫く理解に苦しんだ。
(7) その後、調べてみたところ、綱紀委員会の議決書が金井厚二・綱紀委員長名でなく、委員長代行副委員長名で出された背景について重大な事実が判明した。それは、対象弁護士と金井厚二・綱紀委員長が同じ法律事務所に所属してることが分かったためである。
(8) 異議申立人が調べたところによれば、高崎合同法律事務所には、次の4名の弁護士が所属している。
・金井厚二(男性):登録年度 不詳、登録番号10793
・廣田繁雄(男性):登録年度 不詳、登録番号12845
・山浦誠治(男性):登録年度2009年、登録番号39987
・稲富 彬(男性):登録年度 不詳、登録番号48060
(9) 金井・廣田両名の登録年度は不詳だが、登録番号から金井が僅かに先輩で、廣田が後輩であることが想像できる。このように両名は同じ法律事務所で業務を分け合っていることから、当然、仲間意識を有していると見るべきであり、そのことが、綱紀委員会で8ヶ月もの間、調査に時間を浪費した要因であると見られ、調査期日でも綱紀委員長としてあまり熱心さが見られない態度を金井が取った要因であると見られる。
(10) よって、群馬弁護士会と綱紀委員会において、本当に公正、公平、透明な審査が行われたのか異議申立人として疑念を持たざるを得ない。よって、本件の異議申立により、公平、公正、透明な審査を日弁連の場で行なって頂きたい。
↑弁護士会館のあたりはその昔大岡越前の屋敷があったという。↑
2.議決書の内容に関する異議
分かりやすいように項目ごとに次の色分けでまとめた。
黒字部分:議決書の内容(但し下線部、太字部は異議申立人が追記。)
青字部分:対象弁護士の弁明
赤字部分:異議申立人の不服内容
第1 懲戒請求事由の要旨
1 みどり市大間々町13区の区長KT及び前区長KMは,群馬県みどり市大間々町第13区の運営を巡る文書配布で名誉を傷つけられたとして,同文書配布に関わった同区民の住民K,住民H,住民Mの3名を被告として前橋地方裁判所桐生支部に謝罪広告等請求事件〔平成19年(ワ)第113号〕を提起し,被告に対し上毛新聞,桐生タイムス等への謝罪広告掲載と各金100万円の損害賠償を求めた。
この訴訟の被告ら代理人として,対象弁護士が就任した。
【対象弁護士の弁明】1 懲戒請求事由1は認める。
2 本件訴訟は,平成22年4月23日,約3年近い歳月を経過して,要旨以下の和解が成立した。
当事者ら双方は,13区の過去の会計において一部適切でない慣行及び会計処理があったことを共通の前提として,以下のとおり合意をする。
(1)被告らは,原告らに対し,相当でない表現を用いて原告らの名誉を毀損する内容を含む文書等を作成,配布したことにつき陳謝する。
(2)当事者ら双方は,爾後,13区の運営がより民主的かつ適切にされるよう相互に協力し,互いの名誉を毀損するような言動をしないことを相互に約束する。
【対象弁護士の弁明】2 同事由2は認める。
3 被告らが上記和解に踏み切ったのは,対象弁護士の以下3点の説明と説得があったからである。
【対象弁護士の弁明】3 同事由3について (1)本文については,被告らが和解した動機の中には対象弁護士の説得,説明以外に裁判官の説得等も含め,他の要因もあった。
【異議申立人の不服内容】(1)“他の要因もあつた”という対象弁護士の弁明の意味の解釈が出来ない。なぜなら、裁判で、原告区長KTらの不正会計=横領行為が判明していたから、被告側には“折れて和解に応じる”必要はなかったためである。にもかかわらず和解の動機として、それ以外の要因としてなにがあったというのか。もし他の原因があったのであれば、対象弁護士に訴訟委任をした被告らは対象弁護士から“それ以外の原因”についてしかるべき説明を受けたはずである。従って、この期に及んで対象弁護士から“他の要因”と弁明されても被告住民Mらは「何のことか解からない」と対象弁護士に対する不信感を一層深めている。
(1)区長側より裁判を和解に持ち込めないかとの説明を受けたこと。
【対象弁護士の弁明】(2)同(1)は不知。
【異議申立人の不服内容】(2)被告の一人の住民Mは「(対象弁護士である)廣田弁護士が、(住民Mの経営する)株式会社Mファッションの工場の裏にある当時の出荷場に訪ねて来て、『(原告)区長側の弁護士より“和解に持ち込めないか”と言われたが』と言ってきたので、(住民Mは)『先生、何を言い出すのですか。裁判官も“区長等は不正会計がある”と円卓裁判室で言っているのに』と怒り、『東京高裁に控訴してもよい』と言うと、(廣田弁護士から)『区長に不正会計があったからといって、法律的には敗訴するとは限らない』と言われたので、私(=住民M)は大変なショックと恐怖と衝撃を受けた」と証言している。従って、対象弁護士がこのことを「不知」だと弁明することはできない。
(2)裁判官から,区長らは悪いことをしたことはわかっているが,前向きに建設的な気持ちになりなさいと諭されたこと。
【対象弁護士の弁明】(3)同(2)は概ね認める。
【異議申立人の不服内容】(2)裁判官の説明は事実である。被告の一人の住民Mは「縦2センチ、横10センチの用紙に“不正会計が有る”と書かれた文書を裁判官から頂いた。協力者(被告の一人の住民K〔元市議(その後、物故)〕の支援者で原告区長の不正会計の責任を追及してきた住民らのこと)にも見せている」と明言している。にもかかわらず、対象弁護士が「“概ね”認める」と曖昧な弁明をする必要はないはず。対象弁護士は明確に「認める」と弁明すればよいはず。
(3)対象弁護士からは,区長側が不適切な会計を認めたのだから辞任するでしょうからとの説明を受けたこと。
【対象弁護士の弁明】 (4)同(3)のうち,区長側が不適切な会計を認めたことは認めるが,「辞任するでしょうから」との説明は,見通しを述べたものであって断定的なものとして述べたものではない。
なお,区長の辞任自体が和解の成否を決定付けた重大事ではない。
【異議申立人の不服内容】(4)被告らが訴訟委任をした対象弁護士が「“辞任するでしょうから”との説明は、見通しを述べた」だけとは、依頼者である住民Mら被告が信頼して訴訟を委任した弁護士が、後出しで話す言葉とは到底思われない。懲戒請求を受けて、苦し紛れに発した言葉かもしれないが、依頼人の信頼を裏切った言葉である。このような言葉が一層弁護士への不信感を助長させる。訴訟委任をした被告らは、裁判の過程で、すでに区長の横領したことが判明しているのだから、対象弁護士から「辞任するでしょうから」と説明を受ければ、見通しなどとは思わず、弁護士の断定的な判断だと信じるであろう。対象弁護士はまた「区長の辞任自体が和解の成否を決定付けた重大事ではない」などと、責任を回避する釈明の言葉を発している。民主的な区の運営の実現は、横領した区長は辞任しないかぎり、果たせないことは弁護士であれば直ちに理解できるはず。
4 被告らは,上記3点の説明を受けたことから,対象弁護士からの説得を受けてその言葉を信じ,その説得に応じて和解に踏み切った。
【対象弁護士の弁明】4 同事由4は否認する。
和解は,被告らと対象弁護士が協議した結果,成立したものであって,対象弁護士の言葉を信じ,説得に応じて和解に踏み切ったという経過ではない。
【異議申立人の不服内容】4 区長は、裁判官からも不正会計と判断されており、その結果、罪を認めた原告区長に対して、和解案が裁判所から勧められた。それを受けて、被告らと対象弁護士が協議した際、和解条件として、被告の一人の住民Hが「原告区長が退任をして、今後民主主義的運営が出来るようになること」を2度ほど求めたが、対象弁護士は返事をしなかった。そのかわりに対象弁護士は「区長は責任を取るだろうから和解をしてもよいのでは」と言った。そして「控訴しても、不正会計をした区長が法的に敗訴するとは限らない」と、対象弁護士が言った。そのため、住民Mは「もしも我々が敗訴になったら」と不安を抱き、和解をするのもやむをえないと考えるようになり、躊躇し悩んだ末に対象弁護士が示した和解という選択をしてもよいという気持ちになった。それもこれも、信頼していた対象弁護士の言うことを信じざるを得ない状況が背景にあったからである。
5 平成22年5月22日付桐生タイムスに和解内容が報じられたが,原告の区長KTは,和解条項を無視して,「桐生タイムスの裁判記事記載は間違いであるから,被告住民Kらは13区を乱した罪として13区から出ていけ。」と述べて区費の徴収を拒否したり,被告らや被告らに賛同した区民に対して13区の役職を強制的に降ろしたり,中傷したりして非情な仕打ちをした。
被告らは,村八分にされているが,これも対象弁護士の和解の説明の言葉と説得を信用したからである。
【対象弁護士の弁明】5 同事由5は概ね認めるが,対象弁護士の和解の言葉を信頼したためという点は否認する。
原告らの裁判後の行動は,被告らはもとより対象弁護士の予想外の行動であり,対象弁護士の責任に帰することはできない。
【異議申立人の不服内容】5 対象弁護士に訴訟委任をした被告らは、「何も法律知らないから当方の弁護士を信頼してお任せしたのです」と述べている。裁判の過程で、和解に踏み切るかどうか判断に迷い、他の弁護士2名(前橋市の池田昭男、及び、桐生合同法律事務所の春山典勇(のりお))に都合30回も相談したが、「原告による公金の不正会計が判明しているのだから、和解する必要のない問題だ」と言われた。それでもなお、和解に踏み切ったのは信頼を置いていた対象弁護士の和解の言葉と説得のほうを重視したからだ。
6 被告らは,事態の終息のため,原告らに和解条項を遵守させるための方策として,区民に和解の状況や経過を説明するよう対象弁護士に求めたが,全く反応しない。
【対象弁護士の弁明】6 同事由6は否認する。
対象弁護士は,被告らから,事態終息のため,和解の経過を区民に説明する協力要請に全く反応していないわけではない。被告住民Mから和解成立後の経過を地元関係者に直接説明に出向くよう求められ,①日時,場所を設定すれば出向いていく,②対象弁護士の事務所に来所してもらい,同所で説明してもよい旨回答したが,被告住民Mからは,①についての要請もなく,②の打診もなかった。
【異議申立人の不服内容】6 被告らは夫々の仕事の都合で時間の調整がつかなかったため、被告らの代表として住民Mが前橋市大手町にある群馬弁護士会館を平成24年7月31日に訪れ、対象弁護士に会って、区の情況を説明した。その際、住民Mは対象弁護士に「(被告の)区長KTは区長を辞めないでいます」と言うと、対象弁護士は「まだ辞めないのか!」と大声を上げた。そして対象弁護士は「事務所に行って調べる」と言い、去っていた。住民Mは、その大声に何か言い知れない不信感を持ったので、翌日FAXで高崎合同法律事務所に「自分で調べる」旨のメッセージを送信した。その後住民Mは、市民オンブズマン群馬の事務所の場所を調べて、平成24年8月18日のオンブズマンの例会に参加し本件について発表し協力要請があったため、満場一致で、本件について住民Mらを支援することが承認された。
7 対象弁護士の和解に至る行為や和解後の対応は,弁護士法第1条2項の誠実に職務を行う義務に違反し,弁護士法第56条の懲戒処分に該当する。
なお,懲戒請求人は,市民オンブズマン群馬の代表者であるが,平成24年8月18日の開会の例会に被告住民Mが出席して相談を受けたことから,本懲戒請求者となったものである。
【対象弁護士の弁明】7 同事由7は否認する。
対象弁護士は,「和解に至る行為」の説明と説得は,和解条項記載のとおり13区の運営がより民主的,かつ適切になされるよう前向きに建設的に考えたほうが望ましいと判断し,被告らにもその旨説明して説得し,被告らもこれを承諾して和解したものであって,これは和解手続における通常の方法であり,被告らの意思に反して和解を進めたということは全くなかった。
また,被告らから裁判所の判決がほしいという要望もなかった。
よって,対象弁護士は,懲戒に相当するような行為は何等していない。
なお,本件懲戒請求は,訴訟当事者とは直接関係のない立場の者による請求である。
【異議申立人の不服内容】7 対象弁護士は、対象弁護士に訴訟委任をした被告らから「裁判所の判決がほしいという要望もなかった」と言うが、被告の一人である住民Hは、2回も区長の退任について対象弁護士に訴えた。被告らは、区長退任が前提ではなく、単なる和解のみであれば、絶対に和解案など聞き入れることはなかった。それを動かしたのは、「区長らは辞任するでしょう」という対象弁護士の言葉を信頼したためであった。対象弁護士は「なお,本件懲戒請求は,訴訟当事者とは直接関係のない立場の者による請求である。」と釈明するが、弁護士法58条によれば、弁護士等に対する懲戒の請求は、事件の依頼者や相手方などの関係者に限らず誰でもでき、その弁護士等の所属弁護士会に請求すればよいとなっており、対象弁護士の釈明は失当である。
第3 証拠
1 書証
(1)懲戒請求者
甲第1号証 第27回口頭弁論調書(和解)(前橋地方裁判所桐生支部平成19年第113号)
甲第2号証 桐生タイムス(平成22年5月25日付)
甲第3号証 書簡(平成24年3月10日付)
甲第4号証 FAX通信表(平成24年10月14日付)
甲第5号証 証明書
甲第6号証 請求書
甲第7号証 訴状(前橋地方裁判所桐生支部平成19年(ワ)第113号)
甲第8号証 答弁書(同上事件)
甲第9号証 被告準備書面(1)(同上事件)
甲第10号証 平成25年2月20日調査期日用資料
甲第11号証 平成25年2月20日調査期日用資料
甲第12号証 平成14年度の金銭出納頓と一般会計簿の比較
甲第13号証 平成15年度の金銭出納頓と一般会計簿の比較
甲第14号証 金銭出納帳と一般会計簿の比較
甲第15号証 繰越金について
(2)対象弁護士
乙第1号証の1 「広田弁護士様」ではじまる書面(平成24年4月頃付)
の2 「広田弁護士様」ではじまる書面(平成24年4月23日付)
乙第2号証の1 「御通知」なるFAX文書(平成22年6月24日付)
の2 「みどり市第13区の不正会計疑惑…」で始まる書面
の3 「第1回報告書補正板」で始まる書面
の4 「大間々町第13区の皆様へ」ではじまる書面
乙第3号証 回答書
2 人証
懲戒請求者,住民M
第4 当委員会が認定した事実及び判断
1 当委員会の認定した事実
(1)原告区長KT外1名は,平成19年8月19日,住民K,住民H,住民Mの3名を被告として謝罪広告等請求事件を前橋地方裁判所桐生支部に提訴した。
請求の内容は,①桐生タイムス外2紙に謝罪広告を掲載すること,②被告らは連帯して,原告らに対し,各100万円を支払えというものである。
被告らは,訴訟代理人として対象弁護士に委任した。
(2)同訴訟における原告らの主張は,被告らが虚偽であることを知りながら,原告らが区費の不正処理をして横領,着服,または濫用した旨公言して,原告らの名誉を毀損し,原告らに対する区民らの信頼を損ねたということで,謝罪広告と損害賠償を求めたものである。
(3)本件訴訟は,平成22年4月23日付で被告住民H,同住民M同席のうえ和解が成立し,その内容は,群馬県みどり市大間々町第13区の過去の会計において,一部適切でない慣行及び会計処理があったことを当事者ら双方の共通の前提として,①被告らは,原告に対し,相当でない表現を用いて原告らの名誉を毀損する内容を含む文書を作成,配布したことにつき謝罪する,②当事者ら双方は,今後13区の運営がより民主的,かつ適切にされるよう協力し,互いの名誉を毀損しないことを約束するというものであった。
(4)この和解は,平成22年5月23目付桐生タイムス夕刊で報道され,見出しに「大間々13区訴訟が和解 名誉傷つけて陳謝一区民側 不適切会計認める一区長側」と掲載された。
(5)和解成立後の平成22年6月24日,原告ら代理人から被告ら代理人の対象弁護士に対して通知書が届き,被告住民M及び同住民Hが和解内容を独自に解釈し,原告らの名誉を毀損する内容を含むビラの配布を繰り返しているので,そのような行為は控えるよう申し入れがあった。
これに対し,被告ら代理人の対象弁護士は,同年7月23日付回答書で,原告ら代理人の申し入れに添付された文書は名誉を毀損するものではないこと,和解前に配布した文書であること等を回答している。
【異議申立人の不服内容】被告の一人の住民Mによれば、「(被告ら代理人の対象弁護士の)廣田弁護士は『原告区長ら代理人弁護士の申し入れに添付された文書は、和解前に配布した文書テである等を回答している。』とあるが、これは間違いである。実際には、和解後に配布した文書であり、住民K市会議員の支援者が、不正会計の追及に関心のある住民らを対象に、裁判の経過を説明する為の報告書として30枚配布したものである」とのことだ。対象弁護士は、同じく群馬弁護士会所属の原告代理人の弁護士から、そのようないいがかりを付けられて、「“和解前に配布した文書だ”から名誉毀損ではない」とあたかも被告らの立場に立ったような弁明をしている。実際には“和解後に配布した文書”であり、裁判経過報告なのだから、原告代理人の弁護士らにつべこべ言われるスジ合いのものではないはず。それを“和解前に配布した文書”だとして、事実でない理由で穏便にしてしまったことで、原告らは裁判所の和解条項を無視してもかまわないと考えた可能性がある。原告代理人弁護士らに対して、正しく“和解後に配布した裁判経過報告の文書だ”と説明していれば、原告側も、変な言いがかりをつけることができないと判断したかもしれないし、あるいは、和解条項を無視したとして再度名誉毀損で訴訟をしかけてきたかもしれない。原告代理人がこのように和解後も原告区長の要請で、被告側に対して積極的に行動しているのに比べると、被告代理人である対象弁護士の和解後の消極性が一層際立っている。
(6)その後,平成24年4月10日,被告住民Mから対象弁護士に対し,区長らが区民に対して和解の意味を誤解した伝え方をしているので,和解の伏況と経過を区民に説明してほしい旨の通知があった。
対象弁護士は,区民に対し,説明に出向いていくことや対象弁護士の事務所を訪問されてもよい旨を回答していた。
しかし,被告らから具体的な要望はなかった。
(7)平成24年8月18日,被告住民Mは,懲戒請求人小川賢の代表する市民オンブズマン群馬の例会に出席して,同人に相談した結果,平成24年9月7日,同人が本懲戒請求を申し立てた。
2 当委員会の判断
(1)まず,対象弁護士から和解の成立する過程で対象弁護士に弁護士法違反の事由があるかであるが,この点については,弁護士職務基本規程第36条に定める(本件処理の報告及び協議)義務に関する問題がある。
懲戒請求者は,被告らが本件訴訟の和解成立を決断するに至った動機として,対象弁護士の次の点についての説明と説得が和解の決め手となったと主張する。これが決め手となったとして対象弁護士の説明,説得が同規定に反するかについて判断すると,対象弁護士は,次の三点すなわち,
①「区長側からこの裁判を和解に持ち込めないかとの説明があった」との主張については認定はできない。
②裁判官から「区長側は悪いことをしたことはわかっているが,前向きに建設的になりなさいと諭された」との主張については認定でき,対象弁護士も裁判官が不適切な会計の存在を認識していると説明したものである。
③対象弁護士から,区長側は不適切な会計を認めているのだから「辞任するでしょうから。」との説明があったことは認められる。一方,区長の辞任が和解の成否を決定づける事項となっていなかったことも認められる。対象弁護士の上記発言は,希望的な見通しを述べたものであって,断定的に述べたものとは認められない。
そして,和解後に原告区長KTが区長を辞任しなかったことは,前記希望的な見通しが違っていたこともあったが,和解の中で区長が辞任する旨の約束も取り付けられていない以上,和解成立後の区長らの動向は,和解の条項に違反することでもない。 こうしてみると,対象弁護士の上記三点に関する説明と説得が決め手となったとは言い切れず,また,仮に被告らが対象弁護士の言葉を信頼して和解に踏み切ったとしても,被告住民H,同住民M同席のうえで,被告らの判断で和解を成立させたものであったから,対象弁護士に弁護士職務基本規定第36条の違反は認められない。
【異議申立人の不服内容】綱紀委員会は、対象弁護士の釈明に重点を置いて判断している。
①「区長側からこの裁判を和解に持ち込めないかとの説明があった」との主張については認定はできない。―――とする委員会の判断は、事実を無視したものである。実際に、公金の不正会計が明らかになったため、勝ち目がなくなった区長側から、対象弁護士に対して和解の打診があった。被告の一人の住民Mは、対象弁護士が住民Mの経営する株式会社Mファッションの工場兼出荷場(当時)にやってきて、「区長側弁護士から和解に持ち込めないかと言われているが」と対象弁護士に言われた。その際、住民Mは「不正会計が判明していることを裁判官が言ったのだから、なぜ和解に応じる必要があるのか。それなのに、和解をしろ、と言うなら、東京高裁で判決をもらっても良い」と対象弁護士に言った。すると対象弁護士は「だけども法律的には勝訴するとは、限らない」と不安をあおる事を住民Mに言った。住民Mはこのことを他の被告らや賛同する住民らにも直後に伝えた。本来であれば、依頼人の意向に沿って、不正会計の事実を原告に突きつけて反訴などの防御方法もあったのに、対象弁護士はそうしようとせずに、逆に訴訟委任をした法律知識の乏しい依頼人に対して、法律の専門家であること武器に、被告にとって勝訴或いは敗訴(この場合には東京高裁へ控訴)となるべき判決を回避して和解の方向に誘導したのである。
③対象弁護士から,区長側は不適切な会計を認めているのだから「辞任するでしょうから。」との説明があったことは認められる。一方,区長の辞任が和解の成否を決定づける事項となっていなかったことも認められる。対象弁護士の上記発言は,希望的な見通しを述べたものであって,断定的に述べたものとは認められない。そして,和解後に原告区長KTが区長を辞任しなかったことは,前記希望的な見通しが違っていたこともあったが,和解の中で区長が辞任する旨の約束も取り付けられていない以上,和解成立後の区長らの動向は,和解の条項に違反することでもない。こうしてみると,対象弁護士の上記三点に関する説明と説得が決め手となったとは言い切れず,また,仮に被告らが対象弁護士の言葉を信頼して和解に踏み切ったとしても,被告住民H,同住民M同席のうえで,被告らの判断で和解を成立させたものであったから,対象弁護士に弁護士職務基本規定第36条の違反は認められない。―――とする委員会の判断は、到底容認できない。「希望的な見通が違っていた」などと、事後の懲戒請求を受けて、いくら苦し紛れで後付けで発せられたとしても、法律の専門家からそのような事を言われたら、法律の専門家ではない一般人はいったい誰を信じ対価を支払って訴訟委任したらよいのか。法律の専門家たる弁護士はいったいどこまで責任をもって親身になって訴訟委任をする依頼人の面倒をみてくれるのか。それが、被告弁護士、原告弁護士、そして裁判官との間の司法試験合格者の間の司直関係者の間で和解ありきのかたちで幕引きが行われ、和解だから横領による刑事罰は免罪となったなどとして、一方が(今回は原告)が和解をないがしろにしてしまえば、それにより大変な思いを強いられて苦しむのはもう一方(今回は被告)である。これでは、長い期間かけて法廷で争った時間も、そのために訴訟委任をした弁護士への着手金や報酬金、さらに証拠集めの費用等に投じられたカネも、無意味なものになってしまう。
また、「和解成立後の区長らの動向は、和解の条項に違反することでもない」としているが、民主主義とは自己責任を取ることである。いくら綱紀委員会の委員長が対象弁護士と同じ事務所に所属しているからといって、このようないい加減な解釈を記した綱紀委員会の議決署を群馬弁護士会として追認してよいのか。原告の不正会計を前提に、せっかく本件を“まあるい”言葉で納めた裁判所と名裁判官にたいして、侮辱するものである。もちろん、対象弁護士を信頼して費用と時間を費やした被告らに対しても、重大な背任の言葉であることはいうまでもない。
さらに、「被告同席のうえで」だから訴訟委任をした依頼人側にも自己責任があると言わんばかりの説明は如何なものか。法律の専門家ではない一般人は、法律の専門家であるはずの弁護士の言葉を信じて、それに従うのが通常ではないか。
(2)次に,和解後の対象弁護士の対応については,民法第645条に委任中に処理の状況を報告し,委任終了後に遅延なくその経過及び結果を報告する義務を負い,弁護士職務規程第44条において(処理結果説明)義務があるところ,和解成立後の平成22年6月24日,原告ら代理人から対象弁護士に通知書が届き,被告住民M及び同住民Hが和解内容を独自に解釈して原告らの名誉を毀損する内容のビラの配布を繰り返しているので,差し控えるよう相手方に働きかけてほしい旨申し入れがあった。
これに対し,対象弁護士が上記処理結果説明義務として対応する義務は存在しないと認められるが,対象弁護士は,同年7月23日付回答書で原告ら代理人の申し入れに添付された文書は,原告らの名誉を毀損するものではないこと,同文書は和解前に配布した文書である旨回答している。 また,被告らからの説明に来てほしい旨の連絡に対しても連絡があればいつでも被告ら方に出向いて説明すること,また,対象弁護士事務所を来訪してもらい説明するのでもよい旨回答しており,被告らからは,これに対する要望は特になかったのであるが,この点も対象弁護士の上記処理結果説明義務として対応する義務はないと認められ,対象弁護士に同規定に違反する行為はない。
以上からすると,対象弁護士に弁護士法第56条1項の非行があったとはいえない。
【異議申立人の不服内容】異議申出書の7ページから8ページにかけて述べたとおり、被告の一人の住民Mによれば、「(被告ら代理人の対象弁護士の)廣田弁護士は『原告区長ら代理人弁護士の申し入れに添付された文書は、和解前に配布した文書テである等を回答している。』とあるが、これは間違いである。実際には、和解後に配布した文書であり、住民K市会議員の支援者が、不正会計の追及に関心のある住民らを対象に、裁判の経過を説明する為の報告書として30枚配布したものである」とのことだ。対象弁護士は、同じく群馬弁護士会所属の原告代理人の弁護士から、そのようないいがかりを付けられて、「“和解前に配布した文書だ”から名誉毀損ではない」とあたかも被告らの立場に立ったような弁明をしている。実際には“和解後に配布した文書”であり、裁判経過報告なのだから、原告代理人の弁護士らにつべこべ言われるスジ合いのものではないはず。それを“和解前に配布した文書”だとして、事実でない理由で穏便にしてしまったことで、原告らは裁判所の和解条項を無視してもかまわないと考えた可能性がある。原告代理人弁護士らに対して、正しく“和解後に配布した裁判経過報告の文書だ”と説明していれば、原告側も、変な言いがかりをつけることができないと判断したかもしれないし、あるいは、和解条項を無視したとして再度名誉毀損で訴訟をしかけてきたかもしれない。原告代理人がこのように和解後も原告区長の要請で、被告側に対して積極的に行動しているのに比べると、被告代理人である対象弁護士の和解後の消極性が一層際立っている。
議決書では「また,対象弁護士事務所を来訪してもらい説明するのでもよい旨回答しており,被告らからは,これに対する要望は特になかったのであるが,この点も対象弁護士の上記処理結果説明義務として対応する義務はないと認められ,対象弁護士に同規定に違反する行為はない」としているが、もともと被告らが信頼を置いていた対象弁護士に、和解後も和解条項を遵守しない原告について縷々報告や対応策の相談をしても、対象弁護士の腰は重く、いくら依頼しても埒があかないのでは不信が募るのは当然である。そうした事態を裂けるためにも、対象弁護士は、和解条項の遵守をきちんと能動的に相手側に働きかけて和解条項の実現まできちんとフォローすべきである。和解で一件落着したとして、着手金や関連経費の支払いを依頼人から受けたら(今回、対象弁護士は、報酬金は受け取っていないと言っている)、あとは野となれ山となれでは、訴訟委任をした依頼人は浮かばれない。
↑弁護士会館脇の広場にある無題のモニュメント。↑
3.弁護士法違反
以上の通り、対象弁護士は、不正会計について裁判所が認めており、そのことについて反訴をすれば被告側が勝訴した可能性もあったのに、それを怠り、原告側代理人弁護士の和解の持ちかけに安易にすがり、もともと和解条項での決着を好む裁判所や裁判官の性向に迎合し、和解後も、積極的に攻めてきた原告代理人弁護士と比べ、反訴も辞さぬ覚悟も示さず消極的な対応に終始した結果、不正会計を働いた張本人が引き続き区長の座にのさばり、和解条項で決められた民主的な大間々町13区の運営の実現には程遠い異常な現状を招くことにより、被告らの利益を損なった。さらに、不正会計が明らかになった事で、東京高裁での控訴も辞さない訴訟委任者である被告ら依頼人に対して、「だけども法律的には勝訴するとは限らない」などと法律の専門家である立場を利用して、不安をあおり、和解を誘導したことも、弁護士としての使命感や責任感に欠けていると言わざるを得ない。
このことは、弁護士法第1条2項に定めた弁護士の使命である「誠実な職務遂行による社会秩序維持」に違反し、同法第2条に定めた弁護士の職務の根本基準である「教養保持と品性陶冶による法律事務の精通」に違背し、弁護士の職務基本規定第4節「事件の処理における規律」第36条(事件処理の報告及び協議)に定めた「弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない」を怠り、さらに同規定第5節「事件の終了時における規律」第44条(処理結果の説明)に定めた「弁護士は委任の終了に当たり事件処理の状況又はその結果に関し必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明しなければならない」を怠るなどして、対象弁護士が同規定に違反したことは明らかである。
したがって、対象弁護士は、弁護士の品位を汚したのであるから、弁護士法第56条に定めた懲戒処分に該当すると考えられるため、今後、弁護士に対する一般市民の信頼維持を担保するためにも日弁連にて、本懲戒請求事案について、公平、公正、透明性をもって審査することを強く望むものである。 以上
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↑付近の通りにある道先案内図。↑
■7月4日、オンブズマン代表名で3部(正本1部、副本2部)が日弁連に提出され、受理されました。今後、どのような審査と判断がなされるのかはっきりしたことはわかりませんが、日弁連からなにか連絡があれば市民オンブズマン群馬事務所からの報告としてお伝えしていきます。
↑国会通りを10分程歩くと東京電力本社がある。相変わらず公金を費やして警備は厳重だ。↑
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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