■本日の東京新聞にセクハラ被害者が直面したこれまでのセクハラ相談の苦悩が詳しく報じられています。この記事の中で特に目を引くのが「知人の地方議員に紹介され、自治労に相談しても、正規ではない嘱託には協力してくれなかった」という箇所です。実際、セクハラの被害を前橋市役所の職員課に通報しても、まったく相手にしてもらえず、時間ばかりが経過する中で、思い余った挙句、自治労群馬県本部なら、きっと労働者の側に立って支援してくれるにちがいない。そう思って相談したところ「セクハラの件を不問にすれば、嘱託職員として1年ごとの更新ではなく、5年間の嘱託契約にするように職員課に談判してやる」と言われる始末でした。このためセクハラ被害者は、外部の力に頼るしかなかったのでした。そこで、この自治労について考えてみました。まずは6月19日付けの東京新聞記事を見てみましょう。
**********東京新聞2018年6月19日
【群馬】上司からセクハラ 前橋市職員 嘱託の立場で訴えにくく
↑セクハラ被害を訴える女性が勤める前橋市役所=前橋市で↑
前橋市の四十代の女性嘱託職員が、四十代の管理職男性からのセクハラ被害を訴えている問題。女性は各国の女性らがセクハラ被害を告発する運動「#MeToo」(「私も」の意)に勇気づけられていた。一年更新の嘱託である女性は雇用の不安、訴えている二度の被害に伴う精神的な苦悩を抱え、一年半に及ぶ闘いを余儀なくされている。 (菅原洋)
「嘱託のために内部には訴えにくく、外部も回ってみたが、取り上げてくれず、遠回りしてきた」。女性は振り返る。
女性が男性からセクハラ被害に遭ったというのは、二〇一六年十二月に市内の居酒屋で開かれた職場の忘年会。飲酒した男性に胸をもまれ、行為を宴席で同僚三人が目撃していた。
女性が当時はショックで声が上げられない中、一七年三月に二度目の被害に遭う。市内で職場の宴会があり、途中で合流した上司であるこの男性が飲酒しない女性に車で送るように求め、車内で男性からキスされたという。
精神的な苦痛が深まる中、同年六月に男性からメールが届く。嘱託を含む人員配置の見直しを示唆する内容。「嘱託の身分で職場で被害を訴えるのは難しい」。女性は実感を込める。
そんな女性が注目したのが、同年の秋ごろから広まった「#MeToo」だ。女性は「私のように黙っていた女性たちが声を上げている」と希望を抱いた。ただ、知人の地方議員に紹介され、自治労に相談しても、正規ではない嘱託には協力してくれなかった。
女性が市にセクハラ被害を訴えられたのは、今年二月に男性の別の不祥事で職場に調査が入った際だった。市のセクハラ調査は進まず、ようやく今月十二日になって停職九カ月の懲戒処分が出た。女性は五月から警察に相談している。
本紙の取材に、男性は胸をもまれたとの訴えに「記憶はないが、謝罪したい」、キスについては「求められるままに応じてしまった」と話している。
女性は「一度セクハラ被害を受けた後に、私からキスを求めるわけがない」と二次被害に苦しむ。二次被害は東京都の前狛江市長(今月四日に辞職)、みなかみ町長のケースでも問題化している。
「加害者が被害者に責任を転嫁するのは一緒で、精神的にきつくなる。それだけに(#MeTooの)運動には勇気づけられ、力になった。前橋市の処分は軽く、警察への相談で最後までやり遂げたい」。女性は気丈に語った。
**********
■自治労は全国の県庁、市役所、町村役場、一部事務組合などの地方自治体で働く職員のほか、福祉・医療に関わる民間労働者、臨時・非常勤等職員、公営交通労働者などの労働者など公共サービスに関連する組合が結集する労働組合で、全国各地2708単組、約81万人の組合員(2017年1月時点)が加入しているとされています。
■自治労のHPによれば、自治労は公共サービスを提供する労働者のために、4つの目標を掲げています。以下、引用です。
1●組合員の生活水準を向上させ、労働者の権利を守る
自治労は、一人ひとりの組合員がゆとりを持って暮らせるよう、賃上げ、労働時間の短縮、必要な人員の配置、安全で快適な職場環境の確保などに取り組んでいます。また社会的にも年金や社会保障制度を充実させる活動を行い、トータルな生活水準の向上をめざします。実際に、制度や法律の設計や改正など必要に応じて、政党請願行動、省庁交渉、首長交渉などを行い、組合員だけではなく労働者の生活と権利を守るために行動しています。
2●やりがいのある仕事が出来るように
私たちは、公共サービスを支える仕事をしています。そして、多くの組合員が住民・顧客に喜ばれ、自らも役に立っていると実感できる仕事がしたいと思っています。自治労は賃金・労働条件の改善だけでなく、やりがいのある仕事が出来るよう、住民や地域団体、企業、学識者と協力しながら地方自治研究活動(労働組合が主体的に、地方行政や自治体政策、公共サービスや自らの仕事のあり方について研究し、実践する活動)に取り組んでいます。自治労は地方自治研究活動を通じて、情報収集、研究分析、政策づくりを提言しています。実際に、現在多くの自治体で実施している「ごみの分別収集」「急病人の休日・夜間診療」は、自治労の自治研活動から実現した制度です。
3●社会正義を実現すること
豊かで平和な暮らしは、職場の中の活動だけでは実現できません。地球的規模で起きる環境破壊や経済格差、戦争など現代社会はたくさんの問題を抱えています。それは、毎日の生活に直接的に影響する問題から、間接的に影響するものまで、広範囲にわたります。こうした個人では解決できないことでも、労働組合という組織で力を合わせ、大きな力とすることで問題の解決に近づけます。自治労はさまざまな団体等と連携し、“社会正義”の実現をめざします。その取り組みの一環として、自治労は原発再稼働を許さない取り組みや戦争につながる施策に反対する取り組み、賃金関係で言えば連合に結集して春闘に積極的に参加しています。
4●労働者の助け合い活動の実践
組合員が過ごしやすい環境づくりのために、「自治労共済」という非営利運営による福祉事業に取り組んでいます。2013年6月以降は「全労済自治労共済本部」として大きく助け合いの輪を拡大し活動しています。サービスの提供により、日々の生活に必要な保険料などを抑制し、より多く組合員の可処分所得を確保します。
■今回の強制わいせつというセクハラ、あるいは上司という立場を利用したパワハラは自治労の掲げる上記1と3に関連しますが、どうやら自治労のいう労働者という定義は、組合員である正規職員のみを対象としていて、嘱託職員は除外されているようです。また、嘱託職員がセクハラで相談しても、管理職員のかたを持つことから、やはり嘱託職員は自治労の言う「労働者」の範疇には入らないのかもしれません。
今回のセクハラ事件も、自治労がきちんと機能していれば、セクハラ被害者もこれほど苦悩せずに済んだはずです。自治労には猛省を促したいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
**********東京新聞2018年6月19日
【群馬】上司からセクハラ 前橋市職員 嘱託の立場で訴えにくく
↑セクハラ被害を訴える女性が勤める前橋市役所=前橋市で↑
前橋市の四十代の女性嘱託職員が、四十代の管理職男性からのセクハラ被害を訴えている問題。女性は各国の女性らがセクハラ被害を告発する運動「#MeToo」(「私も」の意)に勇気づけられていた。一年更新の嘱託である女性は雇用の不安、訴えている二度の被害に伴う精神的な苦悩を抱え、一年半に及ぶ闘いを余儀なくされている。 (菅原洋)
「嘱託のために内部には訴えにくく、外部も回ってみたが、取り上げてくれず、遠回りしてきた」。女性は振り返る。
女性が男性からセクハラ被害に遭ったというのは、二〇一六年十二月に市内の居酒屋で開かれた職場の忘年会。飲酒した男性に胸をもまれ、行為を宴席で同僚三人が目撃していた。
女性が当時はショックで声が上げられない中、一七年三月に二度目の被害に遭う。市内で職場の宴会があり、途中で合流した上司であるこの男性が飲酒しない女性に車で送るように求め、車内で男性からキスされたという。
精神的な苦痛が深まる中、同年六月に男性からメールが届く。嘱託を含む人員配置の見直しを示唆する内容。「嘱託の身分で職場で被害を訴えるのは難しい」。女性は実感を込める。
そんな女性が注目したのが、同年の秋ごろから広まった「#MeToo」だ。女性は「私のように黙っていた女性たちが声を上げている」と希望を抱いた。ただ、知人の地方議員に紹介され、自治労に相談しても、正規ではない嘱託には協力してくれなかった。
女性が市にセクハラ被害を訴えられたのは、今年二月に男性の別の不祥事で職場に調査が入った際だった。市のセクハラ調査は進まず、ようやく今月十二日になって停職九カ月の懲戒処分が出た。女性は五月から警察に相談している。
本紙の取材に、男性は胸をもまれたとの訴えに「記憶はないが、謝罪したい」、キスについては「求められるままに応じてしまった」と話している。
女性は「一度セクハラ被害を受けた後に、私からキスを求めるわけがない」と二次被害に苦しむ。二次被害は東京都の前狛江市長(今月四日に辞職)、みなかみ町長のケースでも問題化している。
「加害者が被害者に責任を転嫁するのは一緒で、精神的にきつくなる。それだけに(#MeTooの)運動には勇気づけられ、力になった。前橋市の処分は軽く、警察への相談で最後までやり遂げたい」。女性は気丈に語った。
**********
■自治労は全国の県庁、市役所、町村役場、一部事務組合などの地方自治体で働く職員のほか、福祉・医療に関わる民間労働者、臨時・非常勤等職員、公営交通労働者などの労働者など公共サービスに関連する組合が結集する労働組合で、全国各地2708単組、約81万人の組合員(2017年1月時点)が加入しているとされています。
■自治労のHPによれば、自治労は公共サービスを提供する労働者のために、4つの目標を掲げています。以下、引用です。
1●組合員の生活水準を向上させ、労働者の権利を守る
自治労は、一人ひとりの組合員がゆとりを持って暮らせるよう、賃上げ、労働時間の短縮、必要な人員の配置、安全で快適な職場環境の確保などに取り組んでいます。また社会的にも年金や社会保障制度を充実させる活動を行い、トータルな生活水準の向上をめざします。実際に、制度や法律の設計や改正など必要に応じて、政党請願行動、省庁交渉、首長交渉などを行い、組合員だけではなく労働者の生活と権利を守るために行動しています。
2●やりがいのある仕事が出来るように
私たちは、公共サービスを支える仕事をしています。そして、多くの組合員が住民・顧客に喜ばれ、自らも役に立っていると実感できる仕事がしたいと思っています。自治労は賃金・労働条件の改善だけでなく、やりがいのある仕事が出来るよう、住民や地域団体、企業、学識者と協力しながら地方自治研究活動(労働組合が主体的に、地方行政や自治体政策、公共サービスや自らの仕事のあり方について研究し、実践する活動)に取り組んでいます。自治労は地方自治研究活動を通じて、情報収集、研究分析、政策づくりを提言しています。実際に、現在多くの自治体で実施している「ごみの分別収集」「急病人の休日・夜間診療」は、自治労の自治研活動から実現した制度です。
3●社会正義を実現すること
豊かで平和な暮らしは、職場の中の活動だけでは実現できません。地球的規模で起きる環境破壊や経済格差、戦争など現代社会はたくさんの問題を抱えています。それは、毎日の生活に直接的に影響する問題から、間接的に影響するものまで、広範囲にわたります。こうした個人では解決できないことでも、労働組合という組織で力を合わせ、大きな力とすることで問題の解決に近づけます。自治労はさまざまな団体等と連携し、“社会正義”の実現をめざします。その取り組みの一環として、自治労は原発再稼働を許さない取り組みや戦争につながる施策に反対する取り組み、賃金関係で言えば連合に結集して春闘に積極的に参加しています。
4●労働者の助け合い活動の実践
組合員が過ごしやすい環境づくりのために、「自治労共済」という非営利運営による福祉事業に取り組んでいます。2013年6月以降は「全労済自治労共済本部」として大きく助け合いの輪を拡大し活動しています。サービスの提供により、日々の生活に必要な保険料などを抑制し、より多く組合員の可処分所得を確保します。
■今回の強制わいせつというセクハラ、あるいは上司という立場を利用したパワハラは自治労の掲げる上記1と3に関連しますが、どうやら自治労のいう労働者という定義は、組合員である正規職員のみを対象としていて、嘱託職員は除外されているようです。また、嘱託職員がセクハラで相談しても、管理職員のかたを持つことから、やはり嘱託職員は自治労の言う「労働者」の範疇には入らないのかもしれません。
今回のセクハラ事件も、自治労がきちんと機能していれば、セクハラ被害者もこれほど苦悩せずに済んだはずです。自治労には猛省を促したいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】