■当会は、赤城山の自然・環境・景観の保護、そして未来の子どもたちの健康に配慮し、子育て群馬に相応しい群馬県を具現化すべく活動している、「赤城山の自然と環境を守る会」と「赤城南麓の環境と子供たちを守る会」と連名で、放射能の二次汚染源となりかねない赤城山南麓に建設されようとしている関電工らによる前橋バイオマス燃料・発電施設の建設問題に関し、要望書=公開質問状の形で知事の見解を質そうと次の内容の文書を8月末に発信しました。
*****要望書*****PDF ⇒ 28n831mvijjo.pdf
平成28年8月31日
群馬県知事
大澤正明 様
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川忠重
赤城南麓の環境と子供を守る会
会長 井上 博
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要 望 書(公開質問状)
件名:前橋バイオマス燃料・発電施設に係る疑問・矛盾等の解消について
拝啓 貴殿におかれましては、県政のトップリーダーとしてますますご清栄のこととお慶び申しあげます。また、日頃より群馬県の発展や県民の福祉向上のためにご尽力いただき、誠にありがとうございます。
私たち「赤城山の自然と環境を守る会」、「赤城南麓の環境と子供たちを守る会」および「市民オンブズマン群馬」は、赤城山の自然・環境・景観の保護、そして未来の子どもたちの健康に配慮し、子育て群馬に相応しい群馬県を希求してそれぞれの立場で活動している団体です。この度の前橋バイオマス燃料・発電の建設問題に関し、県民サイドの立場に立ったならば、政官業が一体となった発電所建設有りきの強引なやり方に対し、いくつか要望がございますので、期日までにご回答ください。
貴殿は、8月11日に開催された山の日記念「21世紀の森まつり」で、『県民共有の財産である豊かな森林や美しい自然を見つめ直し、その恵みに感謝するとともに、森林を活用しながら、多様な自然生態系を次の世代に引き継いでいくことは、私たちの責務でもあります』と挨拶されました。しかし、今年3月に発表された『森林・林業基本計画(改訂版)』の中で、東京ドーム64個分の森林をただ燃やすために、丸裸にしようとする『皆伐』という文字が初めて記載されました。
また、同計画には、森林に住む生き物について、野生獣類だけが盛り込まれておりますが、『野生獣類による林業被害は、前年度に比べ減少しましたが、依然として高水準にあり、森林所有者の経営意欲の減退や木材資源の消失を招くなど深刻な状況が続いています』と、被害者気取りの人間独裁の身勝手な事情だけが記載されています。まったく前出の知事の挨拶のかけらもありません。
貴殿の公式ウェブサイトには、「第3回議会の開会を前に」と題し、9月7日付でコラムが掲載されています。9月4日に9月補正予算案の発表に関して、木質バイオマス発電燃料製造施設の整備が明記され、現在では、知事の査定通り、前橋バイオマス燃料に対する4億8,000万円の補助金の支給が決定されております。しかし、昨年6月に県に提出された事前補助金申請書類を見ますと、5月19日の宮城支所長との打ち合わせで、「住民説明は戸別訪問のみで、不在時は再訪問は必要ない」との助言を受けたとか、5月25日~27日に行われた戸別訪問では、『住民は反対者なし』などと、事実とは全くかけ離れた文章になっており、知事は、その虚偽の書類で査定されたことになります。
虚偽についてもう一つ。関電工及びトーセンは、「木を乾燥させるのに9ヶ月を要す」という一般論を持ち出し、貴殿を騙し、知事査定を急がした疑いがあります。初めから、殆ど乾燥の要らない全国初であろうチップのプレス式脱水方式を採用していたからです。このことを、正式な申請が出された平成28年6月まで県には黙っていました。更に、その資料には、プレスによる年間約2万トンも排液が出ることは一切隠されています。
『群馬の未来を創生』するために3期目の意欲を公式ウェブサイトで表明されました貴殿ですが、知事の過去に選挙ポスターを見ましても、『ふるさと群馬に新しい力を(2007)』、『群馬を元気に、実行力(2011)』、『実行力で未来を拓く(2015)』とスローガンが書かれており、その他にも『創りあげたい郷土がある』、『創る、群馬の未来』というポスターも有ります。貴殿には、9年前の群馬県はどのように見え、そして、未来の群馬県はどのように見えているのでしょうか。
私たちは、このバイオマス発電計画が、未成熟であり、県と県民との議論もされていないなか、強引に推し進めていることに関して、赤城山や自然環境、群馬県民の健康等にマイナスであると考え、要望書を提出した次第であります。この1年間で、建設反対の署名も12,000筆を越えようとしています。
こうした事実も鑑み、指定の期日までに、要望に対して、真摯に応えていただきたいのです。
敬具
別紙:要望(=公開質問)項目
*****別紙*****
要望(=公開質問)項目
【要望(=公開質問)その1】群馬県バイオマス活用推進計画(H24~H33)との整合性担保について
(1-1)原子力発電所の事故に伴う課題(P17)として、「バイオマスを活用する際、原子力発電所の事故に伴う放射性物質を含む物の取り扱いは、安全・安心に関わる新たな課題となっています。」と記載されています。このことに照らして、貴殿は、現在建設中の、前橋バイオマス燃料及び発電施設に対し、汚染チップを脱水し地下への垂れ流す等の当該計画内容に関して、どのように考えておりますか?
(1-2)バイオマス活用に関する理解の促進(P18)として、「バイオマスの活用を推進するためには、多くの人々のバイオマスへの理解と協力が不可欠ですが、その必要性や意義等については、まだ十分に認識されていないのが現状です。(中略)このため、今後、関係者が連携して、バイオマス活用に対する理解や意識の向上を図るための取組を推進します。」と記載されていますが、今回の前橋バイオマス燃料・発電に関し、県民の理解と協力が得られたとお考えですか?
(1-3)林地残材の需要の拡大(P22)として、「小規模な木質バイオマス発電施設、熱利用施設等の設置を検討します」と記載されております。このことについて、計画にもない今回の大規模な木質バイオマス発電を知事は『緊急性と必要性がある』と査定しておられますが、「群馬県バイオマス推進計画」にもない巨大な木質バイオマス発電を委員会や議会、県民の理解なしに、知事決済で承認したのかその根拠、理由をお聞かせください。また、そのことによる県民のメリットを全てお教えください。
(1-4)計画(P9)として、「H33年での林地残材の賦存量は67,000トンで、利用量20,000トン」と記載されております。一方、今回の前橋バイオマス発電では、計画の4倍である年間8万トンの木質燃料を確保するとあります。この食い違いについてなぜだろうかと疑問に思っていたところ、平成28年3月に改定された『群馬県森林林業基本計画』の中で、突然、東京ドーム64個分の森林を丸裸にする計画が貴殿より発表されました。このため、貴殿の真意をお聞きしなければなりません。現時点において、8万トンの間伐材等を確保するための設備やマンパワー、また、貯木場所は確保されておりますでしょうか?現状の整備状況を具体的に、且つ詳細に全てお教えください。また、本来の林地残材を利用した木質バイオマス発電ではなく、今回のような燃やすための皆伐・間伐では、本末転倒であると考えられますが、100年後の森林に問題は起きないのでしょうか?起きないと判断されておられるのであれば、その裏付けや根拠を詳細にお教えください。
【要望(=公開質問)その2】知事査定(平成27年度9月補正予算検討案)の妥当性について
(2-1)貴殿は、この事業の緊急性・必要性について、「原木の調達・乾燥に9ヶ月を要するので、平成27年10月に工事を着工しないと計画通りに発電のための燃料の製造が出来ない」として、事業者の計画をそのまま査定されています。貴殿のいう「9ヶ月」と言うのは一般的な自然乾燥の話だと考えます。ところが、関電工とトーセンは、補助金の査定者である貴殿に対して、許可、承認を早めるために嘘をついています。なぜなら、実際の燃料の製造工程では、燃料の脱水を促進するための巨大なプレス機を導入することで計画されており、ほとんど乾燥期間は要さなくても良いはずだからです。このことに関して、貴殿はどのようにお考えですか?
(2-2)しかも、この方式はおそらく全国初ではないでしょうか?
(2-3)そうなると、放射能に汚染されたチップ等をプレスで絞ることによって、年間2万トン程度の廃液が生じることになります。ところが、関電工とトーセンの計画では、この膨大な廃液について何の処理もせず、地下浸透させてしまう設計となっております。関電工らは住民との話し合いも行っていない時点での状況で、貴殿は、知事査定を早々に行った訳ですが、未来永劫、土壌汚染や地下水汚染はおきないとお考えですか?またその根拠を詳細にお教えください。
(2-4)関電工らの事業の狙いに関して、貴殿は「前橋木質バイオマス発電の燃料チップ約8万トンは、県内素材生産量の3割を占め、森林・林業計画を1年前倒しして達成できる」と評価しています。一方で、本来、木質バイオマス発電は、群馬県バイオマス活用推進計画(前出)にも貴殿により書かれているように、未利用のまま林地に残置されている間伐材である『林地残材』を活用するのがそもそもの目的のはずです。どうみても、発電のための間伐・皆伐を伴う木質バイオマス発電事業は森林・林業との共生とは真逆でありますが、貴殿はこのことについて、どうお考えですか?
(2-5)現在、群馬県が県民から徴収しているいわゆる緑の県民税と称する税金のピンハネ分は、奥山の切捨て間伐にも充当できるとなっています。そうなると、林地に放置することを前提とした切捨て間伐に、この緑の県民税を使うことは、その間伐材を集めて燃料にするための費用を助成していることになり、さらにその燃料を製造する施設に我々の血税を補助金として投入することは、税の無駄遣いそのものではありませんか?
(2-6)知事査定時において、木質チップを巨大なプレス機で圧縮・脱水し、そのままその排液を地下に垂れ流すことの説明を受け、認識されていましたか?
(2-7)また、その危険性について、また、放射能対策の必要性等について、知事査定に際し、どのような議論がありましたか?その全てをお教えください。
【要望(=公開質問)その3】環境影響評価条例の適用除外について
(3-1)第四条(技術指針)において、「(1) 知事は、既に得られている科学的知見に基づき、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法の選定その他の環境影響評価を行うために必要な技術的事項に関する指針(以下「技術指針」という。)を定めるものとする。(2)知事は、技術指針について常に必要な科学的判断を加え、変更を行わなければならない。(3)知事は、技術指針を定めるに当たっては、あらかじめ群馬県環境影響評価技術審査会の意見を聴かなければならない。(4)知事は、技術指針を定めたときは、遅滞なく、その内容を公表しなければならない。」などと貴殿の知事としての責務が記載されています。また、群馬県バイオマス活用推進計画(前出)に「バイオマスを活用する際、原子力発電所の事故に伴う放射性物質を含む物の取り扱いは、安全・安心に関わる新たな課題である」と記載されています。これらの方針や安全管理の観点を踏まえて、貴殿は、3.11東日本大震災以来、上記の環境影響評価対象案件に対してどのような姿勢で指示をされたり取り組まれてきたのでしょうか?その全てをお教えください。
(3-2)また、貴殿は、上記の責務を完全に責任を果たしているとお考えですか?それともまだ責任を果たしていないとお思いですか?どちらにせよ、その理由をご説明ください。
(3-3)第四十六条(勧告及び公表)において、「知事は、事業者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該事業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。(1)この条例の規定に違反して環境影響評価その他の手続を実施しなかったとき。(2)虚偽の記載をした第一種事業方法書、第一種事業準備書若しくは第一種事業評価書又は第二種事業方法書、第二種事業準備書若しくは第二種事業評価書を送付したとき。(3)第三十九条第一項又は第三項の規定に違反して対象事業を実施したとき。(4)第四十一条第一項の規定により求められた環境影響評価その他の手続を実施しなかったとき。(5)第四十三条第一項に規定する環境の保全のための措置を実施しなかったとき。」と記載されております。これによりますと、前橋バイオマス発電の排ガス量は42,000㎥/h(県環境政策課情報)であり、排ガス量が40,000㎥/h以上の場合、第一種事業となり環境影響評価を実施しなければならないことになっていますが、担当部局の単独の判断で、木質燃料については2割を差し引いても良いことを決め、環境アセスメントの実施をしないような処置が取られています。このことについて、貴殿は、その行為の事実をご存じですか?
(3-4)また、「知事の責務である科学的根拠、群馬県環境影響評価技術審査会での承認の必要性、技術指針変更の公表等」に関して、貴殿の知事としての見解をお聞かせください。
以上
なお、貴殿のご回答を得た上で、当会のブログ等においても明らかにし広く群馬県民等に広報してまいる所存です。つきましては、平成28年9月15日(木)必着で、文書で回答し投函くださるようお願い申し上げます。
【ご回答送付先】
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川忠重
〒371-0244 群馬県前橋市鼻毛石町1991
電話027-284-1688
**********
■これに対する回答として、9月14日付で群馬県環境森林部環境政策課長、環境エネルギー課長、林業振興課長の連名で赤城山の自然と環境を守る会の横川会長あてに文書が郵送されてきました。文書の内容は次の通りです。
*****回答*****PDF ⇒ m.pdf
(公印省略)
林振第30260-10号
平成28年9月14日
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川 忠重 様
赤城南麓の環境と子供を守る会
会長 井上 博 様
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
群馬県環境森林部
環境政策課長 須藤 雅紀
環境エネルギー課長 中田 富久
林業振興課長 山崎信明
要望書(公開質問状)について(回答)
平素、群馬県の発展のために、ご活動いただき、誠にありがとうございます。
担当しております環境政策課、環境エネルギー課、林業振興課から回答いたします。
平成28年8月31日付でご要望(ご質問)のありました「前橋バイオマス燃料・発電施設に係る疑問・矛盾等の解消について」は、前橋バイオマス燃料製造施設への補助金支出に関して住民訴訟を提起され、前橋地方裁判所で審理中の案件となりますので、回答は差し控えさせていただきます。
今後とも、県政の推進に対し、ご理解、ご協力いただきますよう、お願い申し上げます。
担当:群馬県環境森林部林業振興課
TEL:027-226-3241
FAX:027-223-0154
**********
■何というハレンチな返事なのでしょうか。生活環境面での不安を訴える住民らに対して、このように平然と説明責任を放棄した役人らは税金に基づく報酬を受け取る資格があるとは到底おもえません。
群馬県の職員として県民の声に答えるのは当然の義務のはずですが、裁判を理由に口をつぐむのでは、公僕失格と言わざるを得ません。
そこで今後は直接、群馬県知事に対して要望書(公開質問状)を届けようと、総務部気付けて再チャレンジすることにしました。果たして、総務部経由で知事の回答は得られるのでしょうか? 注目してみたいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
*****要望書*****PDF ⇒ 28n831mvijjo.pdf
平成28年8月31日
群馬県知事
大澤正明 様
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川忠重
赤城南麓の環境と子供を守る会
会長 井上 博
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要 望 書(公開質問状)
件名:前橋バイオマス燃料・発電施設に係る疑問・矛盾等の解消について
拝啓 貴殿におかれましては、県政のトップリーダーとしてますますご清栄のこととお慶び申しあげます。また、日頃より群馬県の発展や県民の福祉向上のためにご尽力いただき、誠にありがとうございます。
私たち「赤城山の自然と環境を守る会」、「赤城南麓の環境と子供たちを守る会」および「市民オンブズマン群馬」は、赤城山の自然・環境・景観の保護、そして未来の子どもたちの健康に配慮し、子育て群馬に相応しい群馬県を希求してそれぞれの立場で活動している団体です。この度の前橋バイオマス燃料・発電の建設問題に関し、県民サイドの立場に立ったならば、政官業が一体となった発電所建設有りきの強引なやり方に対し、いくつか要望がございますので、期日までにご回答ください。
貴殿は、8月11日に開催された山の日記念「21世紀の森まつり」で、『県民共有の財産である豊かな森林や美しい自然を見つめ直し、その恵みに感謝するとともに、森林を活用しながら、多様な自然生態系を次の世代に引き継いでいくことは、私たちの責務でもあります』と挨拶されました。しかし、今年3月に発表された『森林・林業基本計画(改訂版)』の中で、東京ドーム64個分の森林をただ燃やすために、丸裸にしようとする『皆伐』という文字が初めて記載されました。
また、同計画には、森林に住む生き物について、野生獣類だけが盛り込まれておりますが、『野生獣類による林業被害は、前年度に比べ減少しましたが、依然として高水準にあり、森林所有者の経営意欲の減退や木材資源の消失を招くなど深刻な状況が続いています』と、被害者気取りの人間独裁の身勝手な事情だけが記載されています。まったく前出の知事の挨拶のかけらもありません。
貴殿の公式ウェブサイトには、「第3回議会の開会を前に」と題し、9月7日付でコラムが掲載されています。9月4日に9月補正予算案の発表に関して、木質バイオマス発電燃料製造施設の整備が明記され、現在では、知事の査定通り、前橋バイオマス燃料に対する4億8,000万円の補助金の支給が決定されております。しかし、昨年6月に県に提出された事前補助金申請書類を見ますと、5月19日の宮城支所長との打ち合わせで、「住民説明は戸別訪問のみで、不在時は再訪問は必要ない」との助言を受けたとか、5月25日~27日に行われた戸別訪問では、『住民は反対者なし』などと、事実とは全くかけ離れた文章になっており、知事は、その虚偽の書類で査定されたことになります。
虚偽についてもう一つ。関電工及びトーセンは、「木を乾燥させるのに9ヶ月を要す」という一般論を持ち出し、貴殿を騙し、知事査定を急がした疑いがあります。初めから、殆ど乾燥の要らない全国初であろうチップのプレス式脱水方式を採用していたからです。このことを、正式な申請が出された平成28年6月まで県には黙っていました。更に、その資料には、プレスによる年間約2万トンも排液が出ることは一切隠されています。
『群馬の未来を創生』するために3期目の意欲を公式ウェブサイトで表明されました貴殿ですが、知事の過去に選挙ポスターを見ましても、『ふるさと群馬に新しい力を(2007)』、『群馬を元気に、実行力(2011)』、『実行力で未来を拓く(2015)』とスローガンが書かれており、その他にも『創りあげたい郷土がある』、『創る、群馬の未来』というポスターも有ります。貴殿には、9年前の群馬県はどのように見え、そして、未来の群馬県はどのように見えているのでしょうか。
私たちは、このバイオマス発電計画が、未成熟であり、県と県民との議論もされていないなか、強引に推し進めていることに関して、赤城山や自然環境、群馬県民の健康等にマイナスであると考え、要望書を提出した次第であります。この1年間で、建設反対の署名も12,000筆を越えようとしています。
こうした事実も鑑み、指定の期日までに、要望に対して、真摯に応えていただきたいのです。
敬具
別紙:要望(=公開質問)項目
*****別紙*****
要望(=公開質問)項目
【要望(=公開質問)その1】群馬県バイオマス活用推進計画(H24~H33)との整合性担保について
(1-1)原子力発電所の事故に伴う課題(P17)として、「バイオマスを活用する際、原子力発電所の事故に伴う放射性物質を含む物の取り扱いは、安全・安心に関わる新たな課題となっています。」と記載されています。このことに照らして、貴殿は、現在建設中の、前橋バイオマス燃料及び発電施設に対し、汚染チップを脱水し地下への垂れ流す等の当該計画内容に関して、どのように考えておりますか?
(1-2)バイオマス活用に関する理解の促進(P18)として、「バイオマスの活用を推進するためには、多くの人々のバイオマスへの理解と協力が不可欠ですが、その必要性や意義等については、まだ十分に認識されていないのが現状です。(中略)このため、今後、関係者が連携して、バイオマス活用に対する理解や意識の向上を図るための取組を推進します。」と記載されていますが、今回の前橋バイオマス燃料・発電に関し、県民の理解と協力が得られたとお考えですか?
(1-3)林地残材の需要の拡大(P22)として、「小規模な木質バイオマス発電施設、熱利用施設等の設置を検討します」と記載されております。このことについて、計画にもない今回の大規模な木質バイオマス発電を知事は『緊急性と必要性がある』と査定しておられますが、「群馬県バイオマス推進計画」にもない巨大な木質バイオマス発電を委員会や議会、県民の理解なしに、知事決済で承認したのかその根拠、理由をお聞かせください。また、そのことによる県民のメリットを全てお教えください。
(1-4)計画(P9)として、「H33年での林地残材の賦存量は67,000トンで、利用量20,000トン」と記載されております。一方、今回の前橋バイオマス発電では、計画の4倍である年間8万トンの木質燃料を確保するとあります。この食い違いについてなぜだろうかと疑問に思っていたところ、平成28年3月に改定された『群馬県森林林業基本計画』の中で、突然、東京ドーム64個分の森林を丸裸にする計画が貴殿より発表されました。このため、貴殿の真意をお聞きしなければなりません。現時点において、8万トンの間伐材等を確保するための設備やマンパワー、また、貯木場所は確保されておりますでしょうか?現状の整備状況を具体的に、且つ詳細に全てお教えください。また、本来の林地残材を利用した木質バイオマス発電ではなく、今回のような燃やすための皆伐・間伐では、本末転倒であると考えられますが、100年後の森林に問題は起きないのでしょうか?起きないと判断されておられるのであれば、その裏付けや根拠を詳細にお教えください。
【要望(=公開質問)その2】知事査定(平成27年度9月補正予算検討案)の妥当性について
(2-1)貴殿は、この事業の緊急性・必要性について、「原木の調達・乾燥に9ヶ月を要するので、平成27年10月に工事を着工しないと計画通りに発電のための燃料の製造が出来ない」として、事業者の計画をそのまま査定されています。貴殿のいう「9ヶ月」と言うのは一般的な自然乾燥の話だと考えます。ところが、関電工とトーセンは、補助金の査定者である貴殿に対して、許可、承認を早めるために嘘をついています。なぜなら、実際の燃料の製造工程では、燃料の脱水を促進するための巨大なプレス機を導入することで計画されており、ほとんど乾燥期間は要さなくても良いはずだからです。このことに関して、貴殿はどのようにお考えですか?
(2-2)しかも、この方式はおそらく全国初ではないでしょうか?
(2-3)そうなると、放射能に汚染されたチップ等をプレスで絞ることによって、年間2万トン程度の廃液が生じることになります。ところが、関電工とトーセンの計画では、この膨大な廃液について何の処理もせず、地下浸透させてしまう設計となっております。関電工らは住民との話し合いも行っていない時点での状況で、貴殿は、知事査定を早々に行った訳ですが、未来永劫、土壌汚染や地下水汚染はおきないとお考えですか?またその根拠を詳細にお教えください。
(2-4)関電工らの事業の狙いに関して、貴殿は「前橋木質バイオマス発電の燃料チップ約8万トンは、県内素材生産量の3割を占め、森林・林業計画を1年前倒しして達成できる」と評価しています。一方で、本来、木質バイオマス発電は、群馬県バイオマス活用推進計画(前出)にも貴殿により書かれているように、未利用のまま林地に残置されている間伐材である『林地残材』を活用するのがそもそもの目的のはずです。どうみても、発電のための間伐・皆伐を伴う木質バイオマス発電事業は森林・林業との共生とは真逆でありますが、貴殿はこのことについて、どうお考えですか?
(2-5)現在、群馬県が県民から徴収しているいわゆる緑の県民税と称する税金のピンハネ分は、奥山の切捨て間伐にも充当できるとなっています。そうなると、林地に放置することを前提とした切捨て間伐に、この緑の県民税を使うことは、その間伐材を集めて燃料にするための費用を助成していることになり、さらにその燃料を製造する施設に我々の血税を補助金として投入することは、税の無駄遣いそのものではありませんか?
(2-6)知事査定時において、木質チップを巨大なプレス機で圧縮・脱水し、そのままその排液を地下に垂れ流すことの説明を受け、認識されていましたか?
(2-7)また、その危険性について、また、放射能対策の必要性等について、知事査定に際し、どのような議論がありましたか?その全てをお教えください。
【要望(=公開質問)その3】環境影響評価条例の適用除外について
(3-1)第四条(技術指針)において、「(1) 知事は、既に得られている科学的知見に基づき、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法の選定その他の環境影響評価を行うために必要な技術的事項に関する指針(以下「技術指針」という。)を定めるものとする。(2)知事は、技術指針について常に必要な科学的判断を加え、変更を行わなければならない。(3)知事は、技術指針を定めるに当たっては、あらかじめ群馬県環境影響評価技術審査会の意見を聴かなければならない。(4)知事は、技術指針を定めたときは、遅滞なく、その内容を公表しなければならない。」などと貴殿の知事としての責務が記載されています。また、群馬県バイオマス活用推進計画(前出)に「バイオマスを活用する際、原子力発電所の事故に伴う放射性物質を含む物の取り扱いは、安全・安心に関わる新たな課題である」と記載されています。これらの方針や安全管理の観点を踏まえて、貴殿は、3.11東日本大震災以来、上記の環境影響評価対象案件に対してどのような姿勢で指示をされたり取り組まれてきたのでしょうか?その全てをお教えください。
(3-2)また、貴殿は、上記の責務を完全に責任を果たしているとお考えですか?それともまだ責任を果たしていないとお思いですか?どちらにせよ、その理由をご説明ください。
(3-3)第四十六条(勧告及び公表)において、「知事は、事業者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該事業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。(1)この条例の規定に違反して環境影響評価その他の手続を実施しなかったとき。(2)虚偽の記載をした第一種事業方法書、第一種事業準備書若しくは第一種事業評価書又は第二種事業方法書、第二種事業準備書若しくは第二種事業評価書を送付したとき。(3)第三十九条第一項又は第三項の規定に違反して対象事業を実施したとき。(4)第四十一条第一項の規定により求められた環境影響評価その他の手続を実施しなかったとき。(5)第四十三条第一項に規定する環境の保全のための措置を実施しなかったとき。」と記載されております。これによりますと、前橋バイオマス発電の排ガス量は42,000㎥/h(県環境政策課情報)であり、排ガス量が40,000㎥/h以上の場合、第一種事業となり環境影響評価を実施しなければならないことになっていますが、担当部局の単独の判断で、木質燃料については2割を差し引いても良いことを決め、環境アセスメントの実施をしないような処置が取られています。このことについて、貴殿は、その行為の事実をご存じですか?
(3-4)また、「知事の責務である科学的根拠、群馬県環境影響評価技術審査会での承認の必要性、技術指針変更の公表等」に関して、貴殿の知事としての見解をお聞かせください。
以上
なお、貴殿のご回答を得た上で、当会のブログ等においても明らかにし広く群馬県民等に広報してまいる所存です。つきましては、平成28年9月15日(木)必着で、文書で回答し投函くださるようお願い申し上げます。
【ご回答送付先】
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川忠重
〒371-0244 群馬県前橋市鼻毛石町1991
電話027-284-1688
**********
■これに対する回答として、9月14日付で群馬県環境森林部環境政策課長、環境エネルギー課長、林業振興課長の連名で赤城山の自然と環境を守る会の横川会長あてに文書が郵送されてきました。文書の内容は次の通りです。
*****回答*****PDF ⇒ m.pdf
(公印省略)
林振第30260-10号
平成28年9月14日
赤城山の自然と環境を守る会
会長 横川 忠重 様
赤城南麓の環境と子供を守る会
会長 井上 博 様
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
群馬県環境森林部
環境政策課長 須藤 雅紀
環境エネルギー課長 中田 富久
林業振興課長 山崎信明
要望書(公開質問状)について(回答)
平素、群馬県の発展のために、ご活動いただき、誠にありがとうございます。
担当しております環境政策課、環境エネルギー課、林業振興課から回答いたします。
平成28年8月31日付でご要望(ご質問)のありました「前橋バイオマス燃料・発電施設に係る疑問・矛盾等の解消について」は、前橋バイオマス燃料製造施設への補助金支出に関して住民訴訟を提起され、前橋地方裁判所で審理中の案件となりますので、回答は差し控えさせていただきます。
今後とも、県政の推進に対し、ご理解、ご協力いただきますよう、お願い申し上げます。
担当:群馬県環境森林部林業振興課
TEL:027-226-3241
FAX:027-223-0154
**********
■何というハレンチな返事なのでしょうか。生活環境面での不安を訴える住民らに対して、このように平然と説明責任を放棄した役人らは税金に基づく報酬を受け取る資格があるとは到底おもえません。
群馬県の職員として県民の声に答えるのは当然の義務のはずですが、裁判を理由に口をつぐむのでは、公僕失格と言わざるを得ません。
そこで今後は直接、群馬県知事に対して要望書(公開質問状)を届けようと、総務部気付けて再チャレンジすることにしました。果たして、総務部経由で知事の回答は得られるのでしょうか? 注目してみたいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】