市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ裁判・・・被告第7準備書面「求釈明」に対する回答として原告準備書面(10)を提出

2016-09-05 22:55:00 | スラグ不法投棄問題
■きたる9月16日(金)に前橋地裁21号法廷で、大同スラグの農道不法投棄にかかる住民訴訟の第6回口頭弁論が予定されています。これに先立ち被告群馬県の訴訟代理人の弁護士から8月30日付で被告第7準備書面として「求釈明」が送られてきました。そこで、原告らは次の内容の回答を、原告準備書面(10)として9月5日付で前橋地裁と被告群馬県に提出しました。内容は次のとおりです。

**********PDF ⇒ h.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                            平成28年9月5日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中

              原告準備書面(10)

                         原告  小 川  賢  ㊞
                         原告  鈴 木  庸  ㊞

 平成28年8月30日付の被告第7準備書面の「求釈明」について、原告として次のとおり回答する。

1 被告「求釈明」に対する回答

(1)原告らが甲42号証として提出した試験報告書は、有害スラグ不法投棄問題に取り組む原告らの応援者のひとりを通じて入手したものである。よって、採取者が応援者のひとりであることは想定できるものの、「○○様」については不知である。
(2)平成28年1月13日付証拠説明書において述べた通り、甲42号証はあくまで現場に投棄されていたスラグの性状を確認した結果を示すことにより、「本件舗装工事施工前に、支道27号の敷砂利として使われていた鉄鋼スラグを混合した砕石を現場で採取し試験機関で分析した結果、含有試験及び溶出試験ともに環境基準値を超えるフッ素が検出されたことを示す証拠。本件舗装前に有害物が存在していたことがわかる。」ことを立証しようとしたものである。
すなわち、原告らや被告を含め、誰が行っても大同の有害スラグの分析をすればこうした結果が得られるという蓋然性を示すことが、甲42号証の立証趣旨である。
(3)被告は、自ら有害スラグという産業廃棄物を農業地帯に撒き散らしておきながら、原因者に撤去を求めるなどのしかるべき対応をしようとしない「不作為」を棚に上げて、本事件の裁判の先延ばしを狙ってか、採取者の特定について異常なまでに執着し続けていることは、およそ公僕たる公務員としての自覚をわきまえない不遜な態度であり、極めて遺憾であるとともに、到底許されるものではない。
(4)被告はどうやら、道路管理者でもある被告の了解を得ず、現場で道路管理者でもない市民が勝手にサンプリングした分析結果は証拠として認めない、という主張を維持し続けたいらしい。
(5)被告として、それほど当会の応援者である市民が勝手にサンプリングをして当会の応援団体を通じて分析試験を認定分析機関に依頼して得られた試験報告書の結果に疑問があるのであれば、原告らと被告の双方立会いのもとで、支道27号の場所で調査し、あらためてルールに則って試料を採取し、現場に存在するスラグの成分分析を行うべきである。
(6)このことは、原告らが再三被告に対して提案しているが、よほど都合が悪いのか、被告からの応諾が未だにないことは、まことに不可思議なことである。
(7)一方、原告らとしても現在、プロファ設計㈱に対する調査嘱託申立をかけており、「スラグと天然砕石を混合した状況でサンプルをとり、それらを分析にかけている状況であるかどうか」、プロファ設計に対して写真等詳しい情報の提供を求めている。
(8)よって原告らとしては、その結果を待ってから、被告に対する求釈明として、こうした測定方法が正当な測定分析方法として有効なのかどうかについて正式な見解を示してもらい、その回答内容を踏まえてから、あらためて群馬県廃棄物・リサイクル課に、意見を求める調査嘱託を申し立てること等を検討することとしたい。

                          以 上
**********

■被告群馬県側がしつこく採取者(複数の読みかたの同じ表記の名字をもつ多数の市民の間に無用な混乱が起きるのを防止するため伏字にしてあります)にこだわっていますが、当会は甲42号証を応援団体のひとつを通じて入手したものであり、採取者や採取方法に疑問があるのであれば、当会の立ち合いで、自ら現場で大同スラグを採取して試験すればよいのに、一向にそのような動きを見せません。

 このまま裁判を引き延ばし、現在刑事事件として2016年4月に群馬県警から前橋地検に送検されたこの事案に関する地検の判断結果を待っているかのようです。県の思惑は定かではありませんが、民事事件は刑事事件とは異なるため、前橋地裁では県の引き延ばし作戦に惑わされず、早期に正しい判断を下していただけるものと期待するところです。

 その意味でも、次回9月16日(金)午前10時30分からの第6回口頭弁論での裁判長の訴訟指揮が注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【ルポ】日本人移住80周年を迎えた南米パラグアイの知られざる現況(2)・・・内陸国ならではの様子

2016-09-05 03:12:00 | 国内外からのトピックス
■はやくも南米のパラグアイで取材を始めて1週間が経過します。とりあえず途中経過として、いくつか当地ならではの状況をお伝えします。

アスンシオン中心街(セントロ)にある公園脇の大聖堂。改修中。


アスンシオン市内各所で見かける国旗。

同じ国旗を逆光で撮影したもの。国章のところが透けて反対側に映らないようになっている。

 アスンシオン市内あちこちではためいている国旗を見ていたら、現地のかたから、「国旗の表と裏のデザインが違うのが分かるかい?」と言われてびっくりしました。

 早速調べてみました。すると、パラグアイの国旗は、赤白青の横三色旗で、色の配列から言うと、ロシアの国旗が白青赤なので、ロシアの国旗の一番下にある赤色を一番上に移すと同じ色の配列になることがわかりました。


パラグアイ国旗(表)

パラグアイ国旗(裏)

 そして、表面の中央部には国章が描いてありますが、なぜか裏面の中央部はライオンと自由の帽子、「平和と正義」(PAZ Y JUSTICIA)と記したリボンを配置した国庫証印が描いてあります。


表の国章。

裏の国庫証印。

■バラグアイの地図を見ると中央を北南に流れるパラグアイ川を中心線に、東部と西部(またはチャコと呼ばれる)地域に分かれていることが分かります。



 東部地域は国土の40%、人口約700万人の97%近くを有し、丘陵と平原が混じる地形で、森林と肥沃な赤いテラ・ロッサの土壌を有し、ブラジルとの国境にはアマンバイ山脈があります。一方西部地域は国土の6割を占めますが、人口は3%に過ぎず、乾燥した疎林地帯と、アルゼンチン国境沿い流れるピルコマヨ川流域の湿地帯から構成される荒涼とした地形です。いわば、関東地方の利根川を境に東西に分かれている感じですが、全体的に平坦な地形です。


このように極端に東部地域のほうに人口が偏在している。

 この川がちょうど木の幹のような形で、東西に支流が枝のように分かれています。したがって、この川が唯一、大西洋につながる水上輸送の要となっています。

 首都アスンシオンはこのパラグアイ川沿いにある丘陵地にあり、その周辺地域を含めて「アスンシオン首都圏」を形成しており、人口220万人とパラグアイの総人口の34%が集まっています。

■対岸との間にはレマンソ橋というコンクリート製の長さ1,400mの橋が掛かっていますが、市内中心部(セントロ)から北に離れているため、対岸にはフェリーで渡るルートがあります。

 その一つがセントロにあるドクトル・マッセイ通りの埠頭から対岸のチャコ地域に渡るルートで最近運用を始めました。また、アスンシオンの少し南側にあるイタ・エンラマーダ港からは対岸のアルゼンチンのクロリンダにあるピルコマヨ港を往復するフェリーがあります。

 先日、そこに行ってみたら、折からフェリーが対岸に向けて出港するところでした。



 波止場の脇の川岸にはボートが数隻係留されていました。ふと見ると、大きな魚を手にぶら下げて、こっちに合図を送っています。



 よくみると鮮やかな金色をした見事な魚です。すぐにこれがあの有名なドラド(スペイン語で「金」の意味)であることがわかりました。近くまで持ってきてもらい写真に収めたのがこれです。


↑トラックの運転手らに獲物を見せる漁師。↑

↑金色に輝くドラド(右)と巨大ナマズ(左)。↑

リヤカーに積んで持ち帰る。

 現地のかたによるとパラグアイ川にはこのほかにピラニアが20種類以上生息しているそうで、とくに小型のピラニアが獰猛だそうです。普通に川で泳いでも襲ってきませんが、サメと同じように、血の匂いを嗅ぐと狂暴性を発揮するそうです。しかし、フライにして食べるとおいしいそうですが、取材班はまだ食してはいません。

■パラグアイ川は、いわばパラグアイ国の中央を貫く大動脈なので、内陸国のパラグアイにとって、海につながる貴重な河川であり、しかも船を使えば大量輸送が可能なため、経済の発展とともに、近年劇的に河川の輸送量が増えました。

 したがって、パラグアイ川流域沿岸のところどころには、貨物を積み下ろしするための港があり、とくにアスンシオン近郊にはたくさんの河川港が集中しています。


アスンシオンの南35kmほどのところにあるヴィリェタ港。数少ない公共港のひとつ。一方民間港は同国内に全部で45もある。

 アスンシオンからパラグアイ川を通って河口にあたるアルゼンチンのブエノス・アイレスまで約1,600kmもありますが、アスンシオンの海抜は僅か標高53mしかありません。高崎市が海岸から100kmそこそこですが、標高が100m強有るのに比べると、パラグアイ川の勾配は利根川の30分の1以下ということができます。

 また、隣国のボリビアやブラジルの内陸地方でも、パラグアイ川を通じて貨物の輸出入をするのに便利なことから、こうした他国向けの荷動き量も増えつつあります。

 アスンシオンを流れるパラグアイ川を見ていると、いろいろな船がひっきりなしに行き来しており、内陸国のパラグアイにとってパラグアイ川は経済の生命線であることを痛感させられました。


アスンシオン市の前を流れるパラグアイ川。

■当地の環境省担当者の話では、川を汚染する行為は一切ご法度だそうです。河川を運行する船舶は全て汚水をタンクにためて、港に着岸時に全て陸揚げして、陸上施設できちんと処理しなけれならないことになっています。近年、河川沿岸の住民の生活ごみなどが近代化によりプラスチック類など生分解性のない物質の者が増えたため、船のエンジンの冷却水取入れ口に詰まったりする事故が増えており、川の生態系にも影響を及ぼしてきているのが悩みとなっているそうです。


確かに生活ごみの漂着が多いことがわかる。

 そのためごみを川に捨てないように常にキャンペーンをしているとのことです。同様にパラグアイ川に面したボリビア、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイとの5か国の協定で川の環境保全については厳しい規則を課しています。また、パラグアイの西部地域の湿地帯や東部地域全体は降雨量も多く、表流水も地下水も豊富なので、水不足という心配は全くありません。ホテルの蛇口から出て来る水道水は飲んでも問題ないそうですが、いちおうミネラルウオーターも出回っております。

■こうしてみると、内陸国パラグアイと内陸県群馬県の共通性とそれに伴う相違性を感じます。

 河川交通の要であるパラグアイ川には一つもダムはありませんが、パラグアイの東南部の国境沿いを流れるパラナ川では、ブラジルとの国境に有名なイグアスの滝の下流に1984年に完成したイタイプダム(中空重力式コンクリートダム、ロックフィルダム、アースダムなどの複合ダム。堤体の高さ196m、長さ1,400m。貯水量290億トン。発電出力1万4000MW)があり、その下流にはアルゼンチンとの国境に1994年完成のヤシレタダム(重力式コンクリート/アースダム。堤体の高さ42m、長さ64.7km、貯水量210億トン、発電出力2100MW)があります。

 イタイプダムには船が通れる閘門はありませんが、ヤシレタダムには小型のはしけが3隻程度同時に通れる閘門が設置してあります。そのため、ダムの放流水量の変化によって下流の河川の水位差が最大20mも変動するため、安定した大規模な河川交通の実現は困難となっています。

 パラグアイにとっては、国内の電力はイタイプダムにある10基の発電機のうち2基で80%が賄え、残りの20%はヤシレタダムでカバーし、余剰電力は売電して国庫の収入になると共に、パラグアイ川にはダムが無いので、大規模で安定的な河川交通が確保できるというきわめて合理的なかたちとなっています。

■ひるがえって内陸県である我が群馬県を見てみましょう。

 県内の川という川は全部ダムによって流量が極端に減らされ、ダムで発電した電力は全て首都圏の他都県に取られてしまい、福島原発由来の放射性物質の飛来により山間部にある森林や湖沼が放射能で汚染され、さらに放射能汚染された森林の木材をバイオマスで燃焼させて放射能二次汚染のリスクまで負担させられるという、極めて不条理な状況に置かれています。

 群馬県の政治家や役人のかたがたには、内陸国パラグアイのツメのアカでも煎じて呑んでいただきたいと痛感する次第です。

【ひらく会情報部・海外取材班・この項続く】

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