市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ裁判・・・裁判長の訴訟指揮が冴えわたった第4回口頭弁論の様子

2016-04-22 23:55:00 | スラグ不法投棄問題
■群馬県吾妻農業事務所による東吾妻町萩生川西地区における圃場整備事業に伴う農道整備工事で、あろうことか有毒物質をふくむ大同スラグが敷砂利として不法投棄されたにも関わらず、それを撤去しないまま上に舗装で蓋をしてしまった問題で、当会は、2015年4月30日に訴状を前橋地裁に提出しました。あれから、ほぼ1年が経過する2016年4月22日に、第4回目の口頭弁論が前橋地裁で開かれました。

裁判書類を袋に入れて県庁からゾロゾロと前橋地裁に歩いて向かう被告群馬県職員ら。




まもなく第4回口頭弁論が10時30分から21号法廷で開かれる前橋地裁の正面風景。

 当会では、当日朝10時過ぎに前橋駅からタクシーで県庁に到着したあと、徒歩で前橋地裁に向かいました。地裁1階ロビーには、次の内容の張り紙がしてありました。

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第21号法廷(本館2階)開廷表
平成28年4月22日金曜日
開始/終了/予定:10:30/10:40/弁論
事件番号/事件名:平成27年(行ウ)第7号/住民訴訟事件
当事者:原告:小川賢 外/群馬県知事大澤正明
被告代理人:関夕三郎
担当:民事第2部合議係
   裁判長 原道子
    裁判官 佐藤薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸

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 2階に上がると、エレベーター前で県職員数名の面々が立ち話をしていました。挨拶をして、奥の第21号法廷にいくと、当会会員が早くも待機していました。ちょうど第21号法廷の傍聴席のドアが開けられたので、中に入りました。既に被告訴訟代理人の弁護士がおり、出頭カードの被告欄の笹本と書かれた名前に○が付けられていました。

 まもなく当会の事務局長も駆けつけて、原告席に座って開廷を今や遅しと待っていました。すると、珍しく裁判長は陪席の裁判官2名を引き連れて、開廷の3分ほど前に入廷してきました。その際、なぜか被告の県職員らは、まだ廊下で立ち話をしていたらしく、法廷に姿を見せませんでした。訴訟代理人の弁護士が慌てて呼びにいきました。

 裁判長は被告がゾロゾロと入ってくるまで静かに待っていました。そして定刻の10時30分になり、書記官が事件番号を読み上げて、開廷を告げました。

■第4回口頭弁論が開始されました。

 裁判長は、さっそく「本日は第4回目の口論弁論期日であり、原告側から準備書面(6)が提出されているので、原告はそれをそのとおり陳述したいということだね」と問いかけてきました。原告は「はい、陳述します」と答えました。

 裁判長は続いて「昨日準備書面(7)をもらったけど、まだ読めていない。基本的には準備書面等は期日の1週間前までに出してもらわないと読めない。準備書面を読んでから法廷に入れるようにすること」と原告に対して注意喚起をしました。原告は「すいません」と答えました。

 次に裁判長は「被告は第3準備書面を陳述することでよろしいか?」と確認を求めました。被告の訴訟代理人は「はい、陳述します」と答えました。

 裁判長は書類の提出について、原告に対して「甲43号証は原本なのか?」と質問しました。原告は、裁判官が、証拠写真を見て事実を把握しやすいようにカラーコピーで甲43号証を提出したため、裁判長は原本提出と感じたようです。原告は、「それはカラーコピーであって、原本ではありません。原本を持ってきましたので、ご確認下さい」と述べて、原本を書記官に渡しました。

 書記官はそれを裁判長に見せると、裁判長は「甲43号証は原本ということでよいね」と確認しました。書記官はそのあと、被告にも原本を見せて、間違いなく原本であることの確認を求めました。被告からは異議は出ませんでした。

 裁判長は続けて、「甲44、45、46、47は写しで提出ということだね」と確認してきたので、原告は「そうです」と答えました。裁判長は「では、甲47まで提出」と確認の言葉を発しました。昨日、原告が裁判所に提出した準備書面(7)と甲号証について、裁判長は、まだ原告準備書面(7)に目を通す時間がなく、「次回陳述ということにする」と言いましたが、甲号証は受理されたことになりました。

 次に裁判長は、乙号証について「5から9までだね」と、被告に確認をした後、「被告にお伺いしたい」として、本件の工事名の読み方について、「萩生川西地区とあるが、これは萩生川・西地区なのか、萩生・川西地区なのか。どっちなのか?」と被告に問いました。

 被告として出廷した職員のひとりが「萩生川・西地区です」と答えると、裁判長は「川で、切るのだね?」と念を押しました。すると、別の被告職員が、「おい、違うぞ」と耳打ちをしました。最初に応えた職員が慌てて「あ、すいません。萩生で切って、川西地区です」と訂正しました。

 裁判長はこの事件に重大な関心を寄せていらっしゃる様子で、「調べてみたが、萩生川というのはあの辺には見当たらない。川はないのか?工事名は萩生の西地区なのか?」と、現場の工事名さえ、あやふやな被告の回答に不満の様子で、あらためて被告に確認を求めました。

 被告はようやく「萩生・川西地区です」と答えるのが精いっぱいでした。いくら4月に異動で被告の指定代理人として初めて出廷したとはいえ、きちんと前任者から、現場の地名くらい教えてもらわなかったのか、と呆れてしまう対応には、公僕としての自覚が足りないと思いました。

 裁判長もおそらく同じ思いだったことでしょう。「それを知りたかった」と述べた背景には、部外者の裁判長でさえも、現場の地名を調べたのに、当事者の群馬県職員が、地名の確認さえしていないことに、驚きとともに、失望を感じたかもしれません。

 そのためか、裁判長は被告に対してさらに訴訟指揮を行いました。「原告準備書面(5)の3ページのところだが、準備書面(5)のなかに、萩生地区の支道27号から基準値を超えるフッ素が検出されたという主張があるね?」と裁判長から問われた被告は、「はい」と答えました。

 更に裁判長は「(原告が証拠として提出した)甲40号と41号について、これはマニュアルのようなものだと思うが、これに反論の主張があるか?」と被告に問いました。

 原告はこれを聞いていて、甲40と41のことを聞かれたと思って、つい「はい」と言ってしまいました。すると裁判長は「原告に聞いているのではない」と言いました。そして、あらためて被告に向かって、「被告が特にこの点に着目して、原告準備書面(5)に対して反論してもらいたい。それと、そこではフッ素が検出されたという原告の主張と、40号証、41号証に関する原告の主張があるので、そこに着目した論点に基づいて反論をお願いしたい。そして、その際には、裏付けとなる書証もお願いしたい。それが1点だ」と述べました。

 裁判長は続けて、「それから原告準備書面(6)。これはきょう陳述になったということだが、この原告準備書面(6)についても反論をお願いしたい。とりわけ、原告準備書面(6)の2ページ目に、『混合スラグ再生砕石は、廃棄物処理法に定める資格を有する者が製造したものではない』という原告の主張がある。それから『混合スラグ再生砕石が、敷砂利として使用された』という原告の主張について、それらに対する反論、そこにポイントを置いて、なおかつ、裏付けとなる書証があれば出してほしい」と2つ目の訴訟指揮をしました。

 裁判長はさらに続けて「それから、被告の第3準備書面を先ほど陳述していただいたが、『本件舗装工事契約の必要性について』と7ページ目に述べてあるけれども、この裏付けの書証というのが書かれていない。したがって、被告には主張だけではなく、その主張の裏付けとなる書証をお願いしたい。それが3点目だ」と被告に対して3つ目の指揮をしました。

 これにとどまらず、裁判長は「これは説明してもらいたいということになるのだが、被告の第3準備書面の8ページ目に、ステージコンストラクションというのがある。そこで、ステージコンストラクションと敷砂利との違いを説明すること。ステージコンストラクションの一つの段階として敷砂利と全く同じ状態ということがあるのかないのかもよくわからない。おそらく敷砂利について、『これは、段階的にやっていくんですよ』ということだと思うが、段階的にやっていくなかで、その段階の一つとして敷砂利というのと、同じことなのか、それとも敷砂利と違うのか、この点がよくわからない。以上、4点目についても、説明をお願いしたいと思う」と、4つ目の訴訟指揮をしました。

 ステージコンストラクションという、横文字の専門用語は確かに専門家以外にとっては、馴染みのない言葉です。いっそ、「後追い工事」というような訳語を使えばよいかもしれませんが、裁判長もよほどこの言葉は言いにくそうで、慎重に発音したにもかかわらず、すこし言いよどんでいました。無理もありません。被告が、こんな言いにくい専門用語まで引っ張り出してきて、自らの違反行為を必死にカモフラージュしているのですから。

 そして、裁判長はようやく原告の方に向かって「原告の関係では、原告準備書面(7)を読ませてもらっていないので、それ読ませていただいたうえで、なにか話しすることがあれば話しをするが、今回は、被告のほうの反論と、反論するにはこれだけの証拠を出してほしい、という要請を行った。とくによくわからないところについて、指摘させていただいたということだ」と今回の口頭弁論の意義を説明してくれました。

 原告は「ええ、的確なご指摘だと思っております」と答えました。

 裁判長は重ねて「それでいいか?」と声をかけてきたので、原告として「はい。全く異存ありません」ときっぱりと答えました。

 「では被告の準備にどれくらいかかるか。日数的にどれくらいかかるのか、というところで、次回の弁論期日を決めたいと思う」と裁判長は被告のほうを向いて、質問しました。

 すると被告らは顔を見合わせながら何やら少し相談しながら、「2カ月くらい・・・」という声が聞こえてきました。これを聞いた原告は「えっ、2カ月!」と声を出してしまいました。せめて1カ月あれば十分だと考えたからです。しかも、我々の税金から給与を得ている被告らですから、今回の事件でも原告が主張しているように、地方自治法第2条14項に定めた最小の経費で最大の効果を発揮することが、訴訟文書の作成でも求められているはずです。

 しかし、被告訴訟代理には裁判長に向かって「2カ月くらいでお願いしたいと思います」と答えてしまったのです。

 すると裁判長は、さすがに、これではあまりにも先送りになってしまうと考えられた様子で、急遽、被告に次のように訴訟指揮をしました。「それでは、原告準備書面(7)についてまだよく読んでいないけれど、被告が対応するというなら、それなりにこの準備書面(7)に対応するということでよろしいか」と、原告が昨日提出したばかりの準備書面(7)についても、反論があればするように被告を促したかたちとなりました。被告はかぼそい声で「はい」と言いました。

 それを聞いた裁判長は、凛とした声で、「ではお願いします。2か月後となるとは6月20日になるが、その次の週となると、6月24日の午後で受けることは可能か?」と被告に問いました。被告訴訟代理人の笹本弁護士は「差支えます」と答えました。

 裁判長は「それではその次は7月8日でどうか?」と更に2週間後の日にちを提案しました。被告はようやく「はい、結構です」と答えました。

 裁判長は「7月8日の冒頭の10時半とか、10時10分、あるいは9時半、そのあたりではどうか?」と原告に聞いてきました。原告は「こちらは金曜日、いつでも大丈夫です」と答えました。「早くてもか?」と聞く裁判長に対して、原告は「問題ありません」と答えました。

 その結果、次回の第5回口頭弁路期日について裁判長は「それでは7月8日午前10時30分に、この法廷で行う」と宣言しました。

 そして、「それで、被告に出していただくのは、2か月ほどかかるということから、6月22日まででよいか?」と裁判長に言われた被告は「はい」と答えました。

最後に裁判長は「今日は、ここまででよろしいか?」とこちらを向いて述べたので、おもわず原告として、「はい。的確な訴訟指揮だと思います。ありがとうございます」と答えてしまいました。

 こうして第4回口頭弁論が終わりました。時間的には約9分間でしたが、密度の非常に濃い内容でした。

■以上が、4月22日の第4回口頭弁論のあらましです。2カ月も時間をかけて被告の群馬県がどんな反論の準備書面を提出してくるのか、その反論の内容について注目したいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※当会注:上記の法廷内の口頭でのやりとりは、出席・傍聴した当会会員のメモと記憶、そして独自の解釈により構成したものであり、概ね間違っていないとは思いますが、発言内容を正確に表してはありませんので、あらかじめ認識ください。ただし、もし事実と著しく異なっている箇所が有ると判断される場合には、FAXやメールで書面でご指摘、ご連絡いただけると幸いです。

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